« 執事日記。4 | トップページ | 若きU君の悩み。その1。 »

2016年7月26日 (火)

劇的添削のススメ。

どうもこんにちは、黒羊男爵です。
ええもう、夏風邪にやられまくって、寝込んでました。
どうにもこうにも、身体が弱くて駄目ですね。
日曜日にブログを見に来てくださった方には、
ご迷惑をかけて申し訳ないです。

実は今朝、家に回覧板が回ってきました。
今日はそのお話をしたいと思います。

回覧板自体はまあ、普通の回覧板なのですが、
「ボランティアを募集しているそうでございますよ」
執事が言いました。
わたしは紅茶を飲みながら、うわの空で訊き返しました。
「ボランティア? なんの?」
「近所の子供の夏休みの宿題の面倒を見る家庭教師です」
「だるい。俺はパス」
「どの家庭も、必ず一人は面倒を見るように、だそうです」
「うちは温かな家庭ではないから、パス」
「もう担当する子供を割り当てられています」
「選択権すらないのかよ?! 最近の町内会はどうなってるんだ?」
「我が家は町内会に参加してしていなかったので、
拒否権などもないようですね」
「拒否権なし? マジか」

わたしと執事がやいのやいの会話していると、
メイドさんがやってきました。
「あのう、ご主人様」
「なにかな? 今ちょっと取り込み中なんだけど」
「町内会からの紹介だと言って、
小学生が玄関に来ているんですけれど」
「はあ?! もう来たの?! どんだけ暇な小学生なの?」
「なんでも、どうしても見てもらいたい宿題があるということで」
「夏休みの宿題なんか、八月二十九日くらいに始めればいいんだよ。
なんで七月から宿題やってんの?」
「ヒマワリが咲いたから、だそうです」
「ヒマワリ?」
わたしと執事は顔を見合わせました。
なにがどうなってるんだか、まったく把握できない。
仕方がないから、
「……じゃあ、その暇なガキ、もとい、勉学に熱心な小学生に会ってみようか」
ということになりました。

「そんで、ぼく、お名前は?」
小学三年生だと言う少年を前に、
わたしは尋ねました。
すると、
「他人の名前を聞く前に自分が自己紹介しなさいって
お母さんが言ってた」
と、答えやがりました。
わたしの額に青筋が浮かびます。
「わたしは黒羊男爵だ。で、君の名前は?」
「あだ名は、キーボターボです」
「え、あだ名?
最近の小学生は自己紹介でいきなりあだ名を言うの?」
「本名を言いたくないから。
個人情報が漏れたら大変だって、お母さんが言ってた」
「――キミのお母さんはなかなか大した人物のようだね」
なんなんだ、このガキ、全然可愛くない。

「じゃあもういいや、キーボで。これからキーボって君のこと呼ぶからね」
「キーボターボです」
「で、キーボ君、きみが俺に見てもらいたい宿題は何なの?」
「絵日記ポスター」
「絵日記ポスター?」
絵日記はわかります。夏休みの宿題の鉄板です。
ポスターもわかります。小学生の頃はよく描かされました。
でも絵日記ポスターって、一体なんなの?
疑問顔で見つめていたら、キーボ君が説明しました。
「絵日記は毎日つけてるけど、
その夏の中で特別な日はポスターにして、展示するんだって、先生が言ってた」
「ああー、そういうこと」
イベント的な日は絵日記からポスターに格上げされるってことね。
まあ、なかなか楽しそうじゃないの。
「で、それがなんなの? なんか問題なの?」
家庭教師なんかやりたくないわたしは露骨に興味なさげに言いました。
キーボ君は持ってきた画用紙をがさがさと漁り、
「なんだかうまく描けない」
と言って、一枚のポスターを差し出してきました。

それは中央に巨大なヒマワリが描かれたポスターでした。
ヒマワリの絵の下に
「今日 大きなヒマワリが咲いて、嬉しいです」と書いてありました。
うん、なんつーか、フツー。
見たまんまである。
キーボ君は言います。
「絵日記ポスターは校長先生に選ばれると
学校で飾ってもらえるけど、
なんだか選ばれる気がしない」
「うんまあ、選ばれないだろうね」
わたしは頷きました。
だってキーボ君のポスター、面白くもなんともないもん、
七秒くらいで描いたようなやつなんだもん、
選ばれないでしょ。
「お母さんが喜ぶから、選ばれたい。
どうしたらいいの?」
問われて、わたしは初めて、
「ああー、そうか、俺が家庭教師として、これをなんとかせにゃならんのか!」と
気づきました。

「まず何というか、絵はいいと思うんだよね」
批評家の視線で、絵日記ポスターを眺めます。
ヒマワリの絵は、勢いがあって、デカくて、まあまあインパクトある。
「下の文章が駄目なんだろうな」
「どうしたらいいの?」
「うーん、なんかこう、ひっかかるものが欲しいよね。
エッジのきいたやつが。
たとえば、夏休みの自由研究っぽく科学的な掘り下げ方をしてみるとか」
「え、どういうの?」
「一例としてあげると、
今日、ヒマワリが咲きました。ヒマワリウムがキレイに発色して、
とても黄色く咲きました。
とか」
「ヒマワリウムってなに?」
「知らないの? ヒマワリウムはヒマワリの黄色の元になってる色素だよ。
なんというか、こう、知らない単語とかが入ってると、
お! なんだろ? って思うでしょ。
そういうのを入れてみたら?」
「知らない言葉を入れてみる……」
キーボ君はのたくる文字で、ヒマワリウム、とメモしました。

「あとはやっぱり、聴衆が求めているものを提供できるかだよね」
わたしはとくとくとキーボ君に意見を言います。
「聴衆ってなに?」
「見る人のことだよ。この絵日記ポスターを見る人が、
どんなのを見たいと思ってるかが大事じゃない?」
「見たいもの……」
「やっぱり、スリル・ショック・サスペ●ス は外せないよね。
名探偵コ●ンの歌にもあったでしょ」
「ヒマワリでどうやってショックをあげるの?」
そんなの無理じゃない、とキーボ君が言うので、
わたしは卓上にあった太い油性のマジックで、
ヒマワリの絵日記ポスターの文字の部分に、
「今日、ヒマワリが咲いた。キレイに咲いた。
この下になにが埋まっているか、まだあなたは知らない」
と書きました。
「みんなが求めてるサスペン●ってのは、こういうもんだよ!」
得意げに、言いました。

そのとき、
「子供に何を教えているのですか!」
わたしの後頭部を、様子を見に来た執事が思いきり張り倒しました。
「小学生の絵日記ポスターにサ●ペンスはいりません!
ぼく、ご主人様の言うことを信じちゃいけませんよ。
このひとはホラ吹きなんですから。
ホラしか言わないんですから」
「ホラってなに?」
「簡単に言えば、嘘つきということです」
「嘘なの?」
キーボ君がわたしを見つめました。
う、嘘と言われるとなんだか心が痛いな……。
「いや、わたしが話したことは本当だと思うよ?
ただ、小学生にはちょっとハードルが高かったかな……」
「ご主人様、このヒマワリウムというのは
なんでございますか」
「え、ええと、それは黄色の色素の一種で」
「いたいけな子供を相手に、いい加減にしなさい!」
執事の雷がサス●ンスに満ちたヒマワリに落ちました。




以上、ホラ九割程度で。まだまだホラはリハビリ中ですね。
この後、わたしは小学生に土下座し、
絵日記ポスターを台無しにしたことを謝罪しました。
が、キーボ君は
「なんか不思議な感じがするから」と言って、
わたしが書いた不穏なキャッチコピー入りの絵日記ポスターを
大切に持って帰りました。
お母さんに怒られないといいけど。
かなり厳しいお母さんみたいだったし。
それだけが心配です。
ブログランキング参加中にて、
「小学生までだます男爵はひどいよ!」と怒りにかられた方、
「ちょっとその絵日記ポスターを見てみたい」と興味をそそられた方、
「執事がまともなことを言ってるわ」と納得した方は下記をクリック。
にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村
まあ、わたしは人間のクズですよ。
それは認めます。
だから、町内会はわたしに家庭教師なんてやらせちゃ駄目だったんですよ、
そもそも。
キーボ君には本当に悪いことをしたと思って土下座しました。
キーボ君は「お母さんに見せる」と言って、
わたしの土下座をスマホで撮っていました。
顔にはモザイクを入れてくれるといいんですけど。
キーボ君のヒマワリの絵は生命力に満ちて素晴らしかったですよ。
あとは文章だけの問題です。
きっと厳しいお母さんがなんとかしてくれるでしょう。

« 執事日記。4 | トップページ | 若きU君の悩み。その1。 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568051/63970198

この記事へのトラックバック一覧です: 劇的添削のススメ。:

« 執事日記。4 | トップページ | 若きU君の悩み。その1。 »