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2016年6月19日 (日)

たくのメリーちゃん。

どうもこんばんは、黒羊男爵です。
今日は、とある人と犬の話をしたいと思います。
これは恋の物語です。
恋であると思われる物語です。
恋じゃなかろうかと推測される物語です。

先日、わたしはいつものように日課の散歩に出かけました。
うむ、散歩できる程度には体調が良くなっているな。
いいことだ。
などと考えながら、目的地の公園に着きました。
ドッグランが併設された公園で、
大型犬も走ってたりします。
日ごろから散歩しているので、
公園には顔見知りの人の姿もありました。
「ああ、こんにちは、黒羊さん」
「こんにちは、近藤さん(仮名)、
あ、ゴン君もこんにちは」
わたしはおとなし気なおじいちゃんと、
おじいちゃんの足元で
フルフルと尻尾を振っているワンコに挨拶しました。
近藤さんは元教師でしたが、定年退職して、
その後、奥様を亡くして、
いまはゴン君と二人暮らしを送っているのでした。
本当に人畜無害を絵に描いたような人で、
怒ってるところ見たことない。
ゴン君も雑種犬らしい雑種犬で、
片方の耳だけ垂れているブチ犬でしたが、
とても性格の良いワンコでした。
近藤さんが保健所から引き取って、
名前をあげて、息子として育ててきたのでした。

「今日はいいお天気ですね、
散歩日和でなによりです」
ベンチで光合成を始めた近藤さんに、
わたしは話を続けました。
「そうですね、いい日和で。
ただ、ちょっと……」
近藤さんの顔が曇りました。
「ちょっと?」
なにがひっかかるんだろう。
疑問顔のわたしに、近藤さんは繰り返します。
「ただ、ちょっと、時間帯が……」
「時間帯?」
午前中の暑くもなく寒くもない、
いい時間帯だと思うけど。
何が問題なんだ?

「あ!」
突然、近藤さんが立ち上がって叫びました。
「ど、どうしました?!」
条件反射的に一緒に立ち上がったわたしが尋ねると同時に、
「わん、わわん、わわん」
ゴン君が今まで聞いたことない大声で吠え始めました。
「ゴン君? どうした?」
今度はゴン君に向かって問いかけると、
「わわん、わわん」
ゴン君はたった今 公園に入ってきた影に向かって
懸命に吠え続けます。
「ゴン、ゴン、やめなさい」
近藤さんが制止しますが、珍しくゴン君が言うことを聞きません。
「わわん、わわん、わわん」

すると、
「きゃうん」
ゴン君の声に応える声が上がりました。
「きゃん、きゃうん、きゃうん」
可愛らしい黒白のパピヨンが、ゴン君に向かって
一生懸命 吠えています。
「あ、もしかして」
わたしは近藤さんに訊きました。
「ゴン君、彼女に恋をしてるんですか?」
「そうなんです……」
近藤さんは力なく言いました。
なんで?
なにが問題なの?
健全な犬同士の恋愛問題じゃない?
ゴン君は去勢済みだし、
精神的な恋愛くらい、近藤さんが反対する理由がないと思うけど……。

そのとき、
「んまあ、なんて図々しい犬ざましょ」
デカい日よけ帽子とブランド物のサングラスを身に着けた、
「メリーちゃん、ほら、メリーちゃん、
行くざますよ」
パピヨンのリードを引っ張るおばさんが現れました。
「また、あの雑種ざますか。
メリーちゃん、あんな犬未満の犬、
相手にする必要はないざます。
メリーちゃんのおじいちゃんはチャンピオン犬ざますよ。
たくのメリーちゃんは、雑種犬とは身分が違うざます。
ほら、そこのあなた、その犬らしき生物を遠ざけるざます」
おばちゃんの言葉に、近藤さんが小さくなります。
「す、すみません」
ゴン君のリードを短く持ち直します。
その間も、ゴン君とメリーちゃんは熱く見つめ合ってました。

「で、なんなんスか、この失礼な女性未満のおばちゃんは?」
わたしは容赦なく切り込みました。
「いまどき、ざます、なんて死語もいいところです。
あ、そうか、死んでるんですね、人として。
そう思えば、ゴン君への暴言も納得できますね」
「んまあああ、なんざますか、あなた!
あなた、その雑種の関係者ざますか」
「友達です」
わたしは胸を張りました。
「ゴン君は未来有望な立派な雑種犬です。
健康で、勇気があって誠実で、
どこに出しても恥ずかしくない犬です。
ざますなんて言うおばちゃんに
けなされていい犬じゃありません」
「雑種は雑種ざます!」
「そういうあなたはどうなんですか。
メリーちゃんはチャンピオン犬の孫かもしれませんけど、
飼い主のあなたは誰の孫なんですか。
普通の人間の孫なんじゃないですか。
むしろ雑種と言う出自がわかってるゴン君の方が、
身元が確かなんじゃないですか」
無礼な人間に対して礼儀を持つ必要はありません。
もうわたしは容赦なく、弾劾しました。

「んまああああ」
おばちゃんは絶叫します。
「なんて、なんて失礼な人なんざましょ!
メリーちゃん、あっちへ行くざますよ、
こんな人たちを相手にしちゃいけないざます」
「あなたが行くのは勝手ですが、
メリーちゃんにはメリーちゃんの意志があります。
メリーちゃんはどうしたいんですか」
人間三人に見つめられたパピヨンは潤んだ目でゴン君を凝視します。
(一緒にいたい……)
疑いなく、心の声が聞えました。
これはとてつもないロミオとジュリエットです。
自信が全くなさそうな近藤さんと、ゴン君。
死語おばさんと、美貌のメリーちゃん。
男爵の遠慮ない介入によって、
果たしてこの恋の行方はどうなってしまうのでしょうか。
というところで、来週へ続く。


以上、ホラ九割五分程度で。事実がどこかがむしろ怖い。
ああ、わたしは年齢を重ねた女性に偏見があるわけじゃありません。
ただ、ゴン君の友人として、憤っているだけです。
素敵に年齢を重ねた女性はむしろ好きです。
ていうか、女性には基本的に好意と尊敬を抱きますね。
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どうやら近藤さんはゴン君が雑種であることに
とても引け目を感じているらしいですが、
メリーちゃん本人がゴン君に魅力を感じている以上、
雑種かどうかなんて、メリーちゃんにはどうでもいいことなんでしょうね。
メリーちゃんは見る目がある犬ですよ。
ゴン君は、素直で人懐こい、本当にいいワンコなんです。
メリーちゃんとお似合いだと思うんだけどなあ。

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