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2016年5月29日 (日)

海辺のトレジャータイム。

前回までのあらすじ:
 黒羊男爵は貧乏時代に仲間と結成した「貧乏・友の会」という
 お楽しみ会を主宰している。
 この会のメンバーには、
 このブログに何度か登場しては男爵を苦悩させる「画家」、
 三児の母、大工、パンの配達車の運転手、作家志望、歌手志望などがおり、
 バラエティに富んでいる。
 従って、多くのメンバーが集まる会合ほど、かなりな頻度で「なにか」が発生してしまう。
 まあ、つまり、事件が起きるのである。

「でもさ、今日は何も起きようがないよね」
俺は隣で地面をひっかいている三児の母に話しかけました。
「海辺の、単なる潮干狩りだもんね。
せいぜい、なんか起きるとしたら、
誰かが転んでパンツを濡らしてしまうくらいじゃない?」
「そうね、でももう、そうなることを見越して、
女性用、男性用、子供用の新品の下着を用意してるから
問題ないと思うわ」
「さすが、三児の母が幹事だと安心感ある」
かつて大工が幹事で行われた「天高く馬肥える・秋の会」や、
俺主宰の「闇鍋の会」のような大惨事は起きないな。
「ねえ、ママぁ、何も出てこないよ」
息子さんが三児の母の袖を引きました。
「もうちょっとだけここで頑張って掘ってみようか?
それでも駄目だったら、
場所を変えてみようね」
お母さんの言葉に、息子さんはこっくりとうなずき、
「頑張る」と言いました。
ええ子や。ホンマに素直なええ子やで。

俺もまた掘り始めながら、
「アサリが採れたら、パスタに入れようかな。
ハマグリが採れたら、パエリアなんかいいいかもな」
とのんびりと考えました。
「貧乏・友の会」メンバーはあちこちに散らばって、
みんな一心に砂地を掘っています。
気持ちいい涼風が頬を撫でていきました。
天候は晴れ、気温は心地よいくらいの温度、
いいね、いかにも行楽してるって感じだよ。
俺は満ち足りた気分で、海辺のサマータイムを満喫していました。

「ママ、やっぱり何も出てこないの」
息子さんが悲しげに言いました。
三児の母は首をかしげて、
「じゃあ、場所を変えてみようか」と答えました。
その時、でっかい麦わら帽子をかぶった画家が手招きしました。
「こっち、なんか出そうだよ」
「行ってごらん」
母に背中を押されて、息子さんは画家に走り寄ります。
「出てくる?」
「うん、きっと出てくるよ」
「頑張る……あ!」
息子さんが声をあげました。
「なんか出てきた!」
「へえ、アサリかな? ハマグリかな?」
俺は興味津々で近寄ると、
「海賊の宝の地図だー!」
紙が入ったこぶりの瓶を、息子さんが高々と掲げました。

「え? 宝の地図? 千●県で? そんな馬鹿な、て、ちょっ」
俺は息子さんの向こうで「てへぺろ」顔の画家を
発見しました。
画家、おまえの仕込みかーっ!
「なんか描いてあるー!」
息子さんはもうアサリもハマグリも放置して、
紙を取り出すと広げて、叫びました。
「待って、待って、ちょっと待って」
俺はストップをかけて、地図を取り上げました。
周知の事実ですが、画家は貧乏です。
そんな画家がお宝なんて用意できるはずありません。
責任が取れない仕込みをするんじゃねえ!
いたいけな幼児をもてあそぶな!
「見せて、ねえ、見せて」
息子さんはぴょんぴょん跳ねます。
「いやでもほら、勘違いってこともあるからね、
宝の地図とは限らないというか、ね」
「でもどくろが描いてあったよ、ばってんもあったよ!」
そうなのです、画家は腐っても画家ですから、
地図は見事な出来栄えでした。
ふちが茶色く変色しているところなんて、
「うまい」を通り越して「やりすぎ」です。
地図にはなにかの暗号らしき言葉と
どくろマーク、ばってん、そして王冠が描かれていました。
どうすんの、息子さん、もう超盛り上がってるよ、
散歩前の大型犬みたいに興奮してるよ、
おまえ、どうやって収拾をつけるわけ?
俺は水をさします。
「いやいや、これはたぶん、外国の人が書いたお手紙じゃないかな。
残念だけど、宝の地図とは」
「きっと宝の地図だよ、ワンピ●スの場所だよ!」
「いやいや、まだワンピー●とは決まってないよ。
ワ●ピースは千葉●にはないと思うよ」
「……そうなの……?」
息子さんは俺の言葉に しょぼん、と下を向きました。
ああ、可哀想だよ、画家がいらねえ仕込みをしたから、
いたいけな幼児が傷ついてるよ。

そのとき、
「大丈夫、きっと宝物はあるよ!」
画家がにっこり笑いました。
「ちゃんと王冠マークが描いてあるもん、
宝はきっとあるよ」
画家ぁああ! せっかく俺があきらめさせかけてたのに、
どうすんだよ?!
「本当?」
「ホント、ホント!」
じゃあ、一緒に探そうね、と画家は息子さんの手を取りました。
「おまえ、責任とれるんだろうな?」
俺が目で問うと、画家は「ダイジョーブ、ダイジョーブ」とうなずき、
「もっと掘ってごらん、
きっとお宝が出てくるよ!」
と言いました。
「掘ってみる!」
息子さんは喜々として掘り始めます。
画家も手伝って、砂をかき分け、
「王冠印のお宝だ―!」
と、なにか小さな金属がたくさん入ったネット袋を持ち上げました。

「え、お宝? ホントに?」
俺はぽかんと口を開けます。
そもそも、お宝は何なんだ?
驚いている俺の目の前でネット袋が開かれ、
「きらきらのお宝だー!」
と言って、息子さんが日にかざしたのは、
ビール瓶などの金属製の蓋、
つまり、王冠 でした。


以上、ホラ九割程度で。
いや、大人から見たら、瓶の王冠なんて全然お宝じゃないけど、
子供にとってはキラキラしてて珍しい金属ってだけで、
宝物になるんだね。
画家は事前に酒屋をめぐって、王冠を、
「200個くらい」集めてネット袋に詰めておいたのでした。
結局、アサリもハマグリもとれず、
息子さんは喜んで、燃えないごみを、潮干狩りバケツに入れました。
「ね? 本当にお宝あったでしょ」と得意げな画家の背中に
俺は回し蹴りを一発入れました。
「もうちょっと大きな子供だったら、だまされてくれねーぞ!」
子供の心をもてあそぶような、危ない橋を渡るんじゃねえ。
「ねえねえ、ルフ●より先にワ●ピースを見つけちゃったよ!」
帰り際、三児の母に幼児が報告すると、
三児の母は微笑んで、
「大丈夫、ワンピー●はたくさんあるから」と言いました。
「たくさんあるの?!」
「そうよ、みんなで分けられるくらい、たくさんあるから大丈夫」
みんなの分、ちゃんとあるのよ、と母は言いました。
やっぱり、今日のファインプレイは画家の仕込みではなく、
しっかり者の三児の母の言葉だな、と俺は思ったのでした。
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その場で掘って出てきたんなら、
そもそも、地図に描いてあった暗号はいらないんじゃない?
ていうか、地図もいらなかったんじゃ?
ツッコミをいれる俺に画家はニヤリと笑って、
「ホラには事実が混ざってる方が強いんでしょ?」
と言いました。
――いいホラには、仕上げに一滴の真実を。
こいつ、俺のモットーを盗みやがった。
海賊かよ?!
俺はもう一度、回し蹴りを決めて、
海辺の冒険を終わらせたのでした。

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