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2016年1月11日 (月)

かの国からの連絡。

日曜日に更新できなくて申し訳ありません。
現在 今年 二個目の風邪をひいています。
そうなんです、すでに二個目なんです。
初詣で買ってきた厄除けお守りの真価が問われている今日この頃です。

前回までのあらすじ:
 黒羊男爵は貧乏時代に創設した
 「貧乏・友の会」というお楽しみ会を主宰している。
 これは「金はないけど、人生楽しんでいこうぜ!」という趣旨の会で、
 メンバーは、大工、パンの配達車の運転手、画家、三児の母、小説家志望など
 バラエティーに富んでいる。

「あけおめ、ことよろ~」
「……なんなんだ、おまえ。年が明けてからもうだいぶ経ってるのに。
ていうか、おまえが金のかかる電話をしてくるということは、
もう悪いニュースしかありえないのに、
ことよろ とか言われても嫌なんだけど」
貧乏・友の会のメンバーの一人、画家からの入電に、
わたしは心底 嫌そうに答えました。
いや、嫌そう、じゃなくて、嫌なんです。
こいつに関わるとろくなことにならない。
「そんなこと言わないでよー、わたし、実は男爵にお願いがあって」
「断る」
なんていうか、俺の知人からの依頼は、
基本、全部即答でまず断ることにしています。
ろくなことないんで。
「話くらい聞いてよー。人生がかかってるんだからさー」
「!」
ヤバイ、これはとてつもない厄介ごとの予感。
「断る!」
私は声を大にして主張しましたが、画家は続けます。
「わたし、実は新年早々インフルエンザ的な風邪にかかっちゃって」
「断る!」
「バイトにも行けないし、お金もなくて」
「断る!」
「病院に行きたいけど、家から出る気力も体力もなくて」
「断る!」
「だから、いろんな面でヘルプミー」
「断るっつってんのが聞えないのか、この石頭」
「なにもお金を貸してって話じゃないじゃないよー。
ちょっとは心配とかしてくれたっていいじゃないよー」
ちなみに、貧乏・友の会では金銭の貸借は絶対の禁止事項です。
友情が壊れる可能性があるので。
俺は言います。
「心配はしてる。おまえ一人暮らしだし、金もないだろうし、
彼氏もいないし、親には勘当されているし、
このままおまえが死んじゃうんじゃないかなと心配はしている。
葬式の場では泣いてやるから、安心しろ」
「とにかくヘルプミー」
「断る!」
「ありがとう、男爵! 恩に着るよ!」
「断るっつってんのが、聞えてねえのか、てめえの耳は頭部の飾りか」
「待ってるから。鍵は開けておくね」
「ちょ、おい、待て、開けっ放しはダメだろ!
閉めておけ、ええと、俺はなんとかして入るから、
施錠は絶対にしておけよ!」
「……ありがとー」
画家は沈没しました。

てなわけで、俺は心底 魂の底から嫌な気分で、
マスク完備、手袋完備、消毒薬常備 で
画家のおんぼろアパートを訪問する羽目になりました。
ええと、持ってくのはリンゴ、卵、ご飯、ネギ、
あとポカリス●ェットと冷却シートと、
それからあいつ、体温計なんて持ってないだろうから、
新しい体温計と……。
いろいろ数え上げると、もうホント、嫌な気分が盛り上がります。
なんでこんな面倒くさいことになってるの?
日曜日 更新できなかったことからもわかるように、
俺自身も風邪をひいていて体調が悪いのに、
なんで画家みたいな危険物に接近しなきゃならないの?
ああもう、ホントに嫌だよ。
俺たち、なんで友達なんだろ。

ビニール袋をがさがさせながら、画家のおんぼろアパートを訪ねると、
「……施錠はされているな……」
とりあえず安心しました。一人暮らしは物騒だからな。
まあ、こんなこともあるかと思って、
「合鍵 作っといてよかったな」
うん、実は合鍵を持ってます。
で、画家は俺が昔住んでいたアパートの合鍵を持ってます。
お互い、お互いに内緒にしていますが、
「いつか野垂れ死にしそうになったら、
死体を拾わせるためにあいつを呼ぼう」と思い、
こっそりと合鍵を作っていたのでした。
まあ、俺の場合、お屋敷に戻ったし、執事がいるから孤独死はないけど。

「入るぞー」
俺はしっかりとマスクをして手袋をして画家の部屋に入りました。
「あー、男爵来たー」
ベッドからすっごい鼻声でせき込みながら画家が言いました。
「まだ死んでないみたいんだな。
じゃ、三日後に出直してくるから」
「待ってー、やめて―、
本当にあの世からのお話になっちゃうからそれはやめてー」
「……どうやらマジらしいな」
俺はため息をつくと、
「ホラ」と画家の家に存在するはずもない科学兵器・体温計を差し出しました。
「まず検温しろ」
「はーい……ううう、だるい……」
「当たり前だっつの」
俺はもう勝手に画家の家の冷蔵庫を開けます。
「うわああ!」
俺は絶叫しました。
「ええええ!」
画家も絶叫しました。

「なんなんだ、この冷蔵庫は?!
オマケの保冷材パックしかねえじゃねえか?! 広々としてるぞ」
「すっごい、マジ 生まれて初めて見た、39度7分だって!」
「はあ?! 39度7分?! おまえ、インフルじゃねえだろうな?!」
「え、あれ、冷蔵庫に牛肉入ってない?
おっかしいなー、
上カルビとマグロの大トロ、それにハンバーグが入ってるはずなんだけど」
「それ、単なるおまえの願望だからな?! そんなエデンはかつてないからな?
てか、39度7分ってなんだよ?
おまえいつから体調おかしいの?」
「えーっと、新年になってからすぐ、かな……」
「今日は11日だから、インフルってことはないか。
ただの致命的な一歩間違えば死に至る風邪だな」
俺は判定を下して、持ち込んだ食材を冷蔵庫に詰め込みます。
「どうせ飲まず食わずだったんだろ。
ほらよ」
まずは水分補給。ポカリを渡し、飲ませます。
「おまえ、風邪薬は?」
「ない……病院、行ってないから」
「馬鹿じゃないのか? 保険証は?」
「親に取り上げられている」
画家は画家になりたいと言い出した時から、両親に勘当されているので、
保険証は実質、ないも同然なのでした。
「とりま、こんなことだろうと思って、風邪薬は持ってきた。
保険証の件は、いずれなんとかするとして、
おかゆ作るから薬を飲め」
「食欲ないよー」
「と言うと思って、アイスも買ってきた」
「やったー、アイス食べる」
「その前に冷却シートを頭と首の後ろに貼れ。
汗をかいてるだろうから、タオルとパジャマの下に着る白Tシャツ買ってきた。
俺がおかゆ作ってる間に着替えろ」
「すっごい、男爵、手際がいい……」
「伊達に何年も病人やってねえよ」
俺が狭いキッチンで卵粥を作ってる間に、
画家に着替えと冷却シート貼りを済ませます。

「お粥はあと二食分、お茶碗にラップかけて冷蔵庫に入れておいた。
それから米は炊いたやつを冷凍庫に入れておく。
食べられるようになったら解凍しろ。
サンマの缶詰を置いておくので、それをおかずにな」
「うん」
「洗濯は俺にはどうしようもないから、
とりあえず俺が買ってきた着替えでしのげ。
ポカリは三日分、6本用意して枕元に置いておく。
定期的に検温、食事、投薬をして安静にしていれば、まあ、大丈夫だろ」
念のため、画家の携帯を充電器に刺した状態で枕元に置きました。

「男爵、ホントに頼りになるー」
えへら、と画家が笑ったので、
「で、こっちが今回の領収書だ。分割は三回までな。サービス料は15%」
俺はふっとい釘を刺しておきました。
「この鬼! ひとでなし!」
画家が か細くわめきますが、俺はもう手を消毒して帰り支度をします。
「じゃ、次は明日の夜、三児の母が来ることになってる。
そんときに洗濯も頼むんだな」
「男爵、もし本当にわたしが死んでたら、どうするつもりだったの?!」
「泣いてやったよ」
わたしは真顔で返しました。
「泣いて、それから、領収書をおまえに握らせたさ」
「泣きたいのはこっちだよ!」
「じゃあ、ことよろ~」
俺は画家の家のドアを閉めました。


以上、ホラ八割程度で。
いや、一人暮らしの高熱って不安になりますよね。
このまま人知れず死ぬんじゃないかって、思っちゃいますよね。
俺も独り暮らしの時、インフルになって、緑色の鼻水出た時に、
「あ、俺、死ぬかも」って思ったもんな。
画家もだいぶ不安だったのでしょう、
いつもなら引きちぎる領収書を、ぎゅうっと握りしめていました。
まあ、快気祝いに、ラーメンくらいなら、おごってやってもいいですよ。
けどもう、オレを呼ぶんじゃない。
孤独死の死体の第一発見者になるのは嫌じゃ。
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ちなみに俺が画家と男女の関係になることはあり得ません。
俺はキアヌ・リーブスとアンジェリーナ・ジョリーを待ってるんで。
あいつは悪友ですかね。
まあ、いつも迷惑かけられてばっかりですけど、
画家になりたい一心で生きてるあいつは、芯が通ってるとは思ってます。
俺も芯は通したいですね。ホラ吹きとして。
つまりはまあ、俺たちは芯が通った「ダメ人間」ってことですけどね。

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