« 三度目の正直 VS 七転八倒。 | トップページ | 娘の初めての彼氏。 »

2015年10月 4日 (日)

『普通』の重み。

どうもこんにちは、黒羊男爵です。
今日は「ごく当たり前・普通」とはどういうことか、
考えてみたいと思います。

そもそも、なんでこんなことを
考え始めたかというと、
「そりゃ、おまえ、
わしは『普通』の重さを教える妖怪だからじゃ」
と、今朝 また飯をたかりにやってきた
妖怪友達の ぬらりひょん が言ったからです。

俺は今朝、熱を出して腹を下して、
もう鬼のような状況になってました。
厳戒態勢の戦時下にありました。
「え、なんだって?」
トイレの扉越しに外に立ってるぬらりひょんに訊きます。
「どういう意味?
それはこの状況の俺に言わなきゃならないこと?」
「おまえさんがわしに訊いたんじゃろが。
なんで飯をたかりに来るのか、と」
「そりゃ訊くでしょ。聞きたくなるでしょ。
この猛烈な下痢ラ戦時に、ふらっとやって来て
『今朝は鮭のハラミ焼きが食べたいのう』とか言われたら、
『白米三杯と大根と油揚げのお味噌汁付きで』とか言われたら、
おまえはなにをしにウチにきたんだと、
そりゃもう訊きたくなるのが当然でしょう。
仮にも友達という立場にある存在が、
そんなことをこんな俺に言ったら、
問いただしたくなるのが、人の心ってやつだろが!」
「だから、わしはそれに答えたんじゃ」
ぬらりひょんが言います。
俺は苛立たしい気持ちを勢いよく水で流して、
ようやくぬらりひょんと対面しました。
「手は洗ったかの?」
「洗ったよ、殺菌ソープで洗ったよ!
失礼だな!」
いっそおまえの脳ミソを殺菌したいわ。
ていうか、妖怪に脳ミソはあるのか?
こいつの耳と耳の間は空洞なんじゃないのか?

「だから、それがわしがいる意味、存在意義というやつじゃ」
ぬらりひょんはあっさりと言います。
「だから、なにが?
飯をたかりに来ることがか?」
「それはわしの存在意義の象徴的な行為なんじゃ。
表出なんじゃ。
わしが飯を食う、それは単純に飯を食うという行為ではなく、
もっと深く深く考えられることじゃよ」
「は? 言ってる意味がわからない。
いてて、あ、まだ腹が痛いな」
「じゃから、おまえさんはいま現在 痛感しているじゃろが」
「なにを?」
「普通の、普段の生活のありがたさを、じゃよ。
普通に健康(まあおまえさんの場合は健康というより平穏かの)な状況の
ありがたさが、よくわかるじゃろ、
こうやってそれが崩れてみると」
「そりゃわかるが。
それとおまえの飯たかりと何の関係か?」
「ご飯を食べるという行為は、食べられるという行為は、
恵まれた日常生活の象徴なんじゃ。
世界ではご飯を食べられない状況下にあるひとたちがたくさんおる。
この国でも、白米など食べられない時代もあった。
わしがやってきて、飯を要求できるということは、
おまえさんにはご飯をちゃんと食べられる生活・
『普通』があるという証明なんじゃ。
わしゃ、飯がないところには行かないからの」
「……飯があるところに来るってことか?」
「そうじゃ。わしが来るということは、
その家には『普通』があるということなんじゃ。
じゃが、『普通』の価値に自ら気づく人間は少ない。
恵まれた生活を送っていると、
それが当然で、感謝などしやせんのだ。
そういうところへ、わしは行く。
行って、飯を要求して、
おまえさんが今いる場所はありきたりじゃない、
貴重な『普通』がある場所なんじゃと教えるんじゃよ。
それが、わしという妖怪の存在意義じゃ」

俺は長々と語ったぬらりひょんをマジマジと見つめました。
着流し姿の貧相な小柄の老人って感じの、
何の力もない、
ウチに来ては飯を要求するだけのこの妖怪の存在意義が、
そんなにも高尚で意義深いものだったとは。
ただ単に、飯をたかる、その裏に、
こんな意味があったとは。
今まで思いもしませんでした。
言われるまで、まったく気づきませんでした。
それくらい、ぬらりひょんはウチに来ては、
自然体で飯を要求していたのです。
『普通』があると認めた我が家で。
もう長年、ぬらりひょんと付き合ってましたが、
こいつの性格はよく知っていましたが、
こんなことを言われるとは思いもしていませんでした。
俺はしばし瞑目し、そして言いました。


「――……今の台詞、全部、適当に言っただけだろ?」


「……なんのことじゃ?」

「てめえ、俺をなめるんじゃねえ!
何年の付き合いだと思ってるんだよ、
おまえがそんな殊勝な妖怪じゃないってことくらい、
わかってるわ!
おまえはただ単にただ飯を要求するだけの、
人の家の飯が食いたいだけの妖怪だろうが!
そんな高尚な理屈をつけて、
結論としては、
『鮭のハラミ焼き+白米+味噌汁』を食べたいだけだろうが。
だいたい、ウチの冷蔵庫に鮭のハラミが入ってるって、
知っているから、ウチに来たんだろうが。
おまえが来るタイミングなんてなあ、
ウチに贈答品か、ちょっと奮発した食料品が入荷された時なんだよ!
なにが『普通』の価値だ。
だったら、晩飯におかずがなくておにぎりで済ませる時にも来てみろ。
ウチの『普通』=鮭のハラミレベルだと思うなよ。
何にもない時には、絶対に来ない・来たことねえじゃねえか!」
「……チッ」
ぬらりひょんは思いきり舌打ちしました。
「おかしいのう、無敵の呪文じゃったのだが。
今までの家はだいたいこれで落ちたのじゃが」
「おあいにく様だな!
こっちは言葉を操ることにかけてはそこそこ実力があるホラ吹きだ!
そうそう簡単に、他人の舌先で踊ったりしねえわ!」
「まあ、バレておるなら、もういいわ。
さ、鮭のハラミと白米と味噌汁を出せ」
「あ、本音を言いやがった!
もう容赦なく面と向かって本音を言いやがった。
嫌だね、鮭のハラミは俺のおかゆに入れてもらう。
おまえに食わせる飯はねえ!」
「かゆに入れるじゃと?
北海道産の銀鮭のハラミを?!
ありがたく焼いて白米で食べるほうが供養になるわ」
「なんの供養だよ?!
俺がおまえを供養したいわ!
見送りたいわ!
だいたいなあ、おまえのろくでもない考えなんて」



以上、ホラ九割程度で。
この後、俺とぬらりひょんは鮭のハラミをめぐって、口汚く罵り合い、
最終的には俺が再びトイレに籠城するまで、口論は続きました。
お互い、いい歳した大人がね。
(ぬらりひょんに至っては千年単位で生きてるけど)
もうホントね、あいつもあいつだけど、俺も俺だわ。

え、『普通』の重みですか?
あるかもしれないけど、ないかもしれないですね。
だってそれが普通ってことでしょ。
ぬらりひょんや俺の話す言葉を真に受けちゃいけないよ!
まあ、そんなことは、このブログを読んでくださってるみなさまは、
すでによおくご存知の通りですね。
ブログランキング参加中にて、
「ああ……、途中まではいい話だったのに」と残念な方、
「ハラミか……。焼いて食うのがベスト」とぬらりひょんに賛成の方、
「病気の時には通常時が尊く感じるよね」と俺に賛成の方は、
下記をクリック。
にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村
最終的に、ハラミは執事がメイドさんと食べました。
俺の胃腸はもうハラミの脂分すら受け付けられる状況じゃなくなってました。
早くお腹が治るといいな。
そしたらもう少し、いいものを食べて、
ぬらりひょんにも優しくなれるかもしれません。

« 三度目の正直 VS 七転八倒。 | トップページ | 娘の初めての彼氏。 »

妖怪話」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568051/62409558

この記事へのトラックバック一覧です: 『普通』の重み。:

« 三度目の正直 VS 七転八倒。 | トップページ | 娘の初めての彼氏。 »