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2015年10月

2015年10月25日 (日)

家なき子と赤いソーセージ。

どうもこんばんは、黒羊男爵です。
いやー、秋も深まってきましたね!
そろそろあったかいキャラメルミルクティーが飲みたいです。
キャラメルミルクティーに、
アップルパイ&アイスクリームを添えていただくと格別です。
面白い本を読みつつ、ティータイム。
おウチがいい感じに居心地がいい季節ですね。

と思ってました。
最近 寒くなってきて、家が居心地よくて、
家があるっていいなあ、居心地がよくていいなあ、と思ってました。
うん、家がある幸せをかみしめていたわけですよ。
……この寒空の下、家なき子に出会うとは、思ってもみなかったので。

先週の月曜日のことです。
夕方でした。
俺は外出先からの帰り道、帰宅を急いでいました。
最寄駅から大通りを歩いて、スクランブル交差点にさしかかったところで。
「――……ん?」
なんか、声がする。
声がした気がする。
うん、気のせいじゃない。
気のせいじゃなく、気のせいじゃないボリュームで、
「ギャオン、ギャオン」
と、鳴き声がする。
この声……知ってる。
これは猫が非常事態に出す声である。
特に子猫が。

え? こんな人通りの多い場所で?
横を車がビュンビュン通ってる場所で?
子猫が親猫なしの状態でいるわけあるの?

と思って、声の方角を判断し、
停めてある自転車の下をのぞきこんだら、

「いたよ……」

片目が腫れあがった、みずぼらしい、サバトラの子猫が。

さて、ここで問題です。
この子猫、付近に兄妹も親もいません。
放っておいたら、誰かに保健所に突き出されるか、
もしくは一番ありそうなのは、
「大通りの車に はねられそうだよな……」
明日の朝、悲しい光景を見ることになりそうです。
どうしたもんですかね。
俺は自分の持ち物をチェックしました。

 武器:両手(素手)
 装備:外出用の鞄(幅十五センチほどの長方形・合皮)
 種族:人類

以上でした。
野良猫捕獲用の捕獲機なんてないし、
猫用のおもちゃも持ってないし、
ましてや母猫でもない俺に
「ギャオンギャオン」に呼応する安心させるような鳴き声なんて出せません。
つまり、
「合意の上の保護は難しい、てか、不可能」
です。

そしたら、もうやるべきことは一つしかありません。
相手は野良の子猫です。
安心するように声をかけましたが、近寄ってなんか来ません。
だったら、
俺の十個の特技(特殊スキル)の内の一つ、
「生き物素手で生け捕り、を発動!」

かつて黄金の両手と言われたのは伊達ではないのだよ……!
小学校の頃はセミ、
中学校の頃はトンボ、チョウチョを素手でよく捕まえていました。
猫も、何度か捕まえています。
俺はゆっくりと鞄を道路に置きます。
重要なのは相手の呼吸を読むこと。
そして相手が油断したその一瞬に、
「――獲った●ーっ!」
見事に、俺は素手で野良子猫をキャッチしました。
進●の巨人に捕まった家なき子は、
「殺されるー!」と叫びながら、「ギャオンギャオン」言いながら、
猛烈に暴れます。
しかし、ここで大事なのは、絶対に放してはいけない、ということ。
ここで放したら、二度と捕まりません。
俺は両手で子猫をつかみなおし、
その最中、子猫に右手の小指をビーフジャーキーのように何度も噛みしめられ、
鞄と洋服を血で汚しながらも子猫を確保、
左胸に子猫の耳を当てて、心音を聞かせました。
少しだけおとなしくなったところで、
「本当にごめん、悪い、けど、ちょっとだけだから我慢して―!」
鞄のファスナーを開き、空いてたスペースに子猫を突っ込みました。
そしてそのまま、動物病院へ速足でGO!

「はい、こんにちはー、って、大丈夫ですか?!」
動物病院の受付のおねえさんは血まみれの俺にビックリ。
「いいえ、大丈夫でありません。
が、大丈夫です」
俺はそう答えると、
「診察お願いします。初診です、子猫です」と言いました。
おねえさんは「カルテ作りますね。お名前は?」
「知りません。てか、ありません。
十数分前に知り合ったばかりです」
「野良ですか。キャリーをもってらっしゃいませんけど、どこにいますか」
「野良です。この鞄に入ってます」
「ええっ」
おねえさんは二重にビックリ。
俺は鞄の中を見せて、
「今のところ、とても元気な子猫です」
と説明、家なき子の健康診断を依頼しました。
さっそく病院でノミ取りと駆虫を実行。
幸い、大きな病気にはかかっておらず、
病院に預けて検査してる間に家にキャリーを取りに戻って
家なき子は無事にキャリーにイン。
先生は俺の素手のファインプレイを
「グッジョブ!」と判定、「イイ人に拾われてよかったね」と
巨人に誘拐された家なき子に語りかけました。

こうして家なき子は保護されたわけですが、
病院を出る時、俺は先生に最後に訊きました。
「ところで、ここでは人間の怪我は手当できませんか?」
「できませんが、どうしました?」
「はい、これがこのように」
俺は血まみれの小指を出します。
「うおお」
先生はのけぞり、
「腫れてますよ。ばい菌が入ったかもしれませんよ。
人間の病院に行ってください」と言いました。

結論から言うと、
家なき子にビーフジャーキーのように噛まれた小指は
その日の夜にはパンパンに腫れあがり、
赤いソーセージみたいになりました。
俺は病院送りになりました。
ですが、俺は家なき子と出会ったことを後悔していません。
ろくでもない人生を驀進中の俺ですが、
ちょっとはいいこともできたかなと思います。
本当にささやかな、ちょっとのことですけど。
今は俺は、ソーセージと化した小指を、
少しだけ誇りに思います。


以上、ホラ三割程度で。
念を押しておきますが、
これは「猫は鞄に詰めろ」という話ではありません。
そんなことしちゃ駄目です。虐待です。
今回は移動手段として他に方法がなかったので、
十分間ほど、緊急措置を取っただけです。
恐怖の十分間のの代わりに、
ちゃんと家なき子の猫生には責任をとるつもりですので、
猫はいじめないで、大切にしてあげてください。
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「野良子猫を素手で捕獲ってどんな捕獲レベル?」と驚嘆した方、
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ちなみに、俺は鳩も素手で二回ほど捕まえたことあります。
基本的に、普通の人には素手で捕まえるのは、無理だと思います。
だから、みんな、それぞれ自分のできる範囲で、
できることをやればいいんじゃね? と思います。
捨て猫募金への協力だって、ビラ配りだって立派です。
誰だってみんな非力だけど、自ら動く限りは、無力じゃない、と思います。

2015年10月18日 (日)

けっこう頻繁に。

前回までのあらすじ:
 11月に簿記二級を受験する黒羊男爵。
 全77コマあるWEB講義を視聴しているが、現在 34コマ目である。
 間に合うんかい……?!
 ていうかあれだからね、俺は本当に視聴しているだけだからね。
 授業の内容が全部 身に付いているわけじゃないからね。
 特に本支店会計のところなんて、わけがわかんなくて、
 「はあ……?」ってな感じで、先生の行動を眺めているだけである。
 ほぼ、平日の水族館に行って、ペンギンを眺めている老人と同じである。
 そんな男爵は今日この頃、どうしているのだろうか……?!

折れてます。
え、なにがって?
骨が?
いや、俺、骨折はまだ一回しかしたことないです。
電話帳に左足の小指をぶつけて骨折したことしかないです。
これ、電話帳で骨折って、すげえお約束的な出来事なんですけど、
ノンフィクションです。マジです。
で、接骨院に行ったら、「骨は折れてない」と言われて、
思いきり引っ張られて、もだえました。
でも、絶対に、折れてました。
だって小指がホルスタイン柄みたいなぶちぶちになったもの。
内出血凄くて、腫れだってすごくて、ものすごい痛かったもの……!

ま、過去のことはもういいです。
(ならなぜこんなにも長く語ったのか? というツッコミは、
 脳内でしたので、もういいです)
だから、現在進行形で折れてるんですよ、
俺の心が……!

やべえ、簿記、ホンットウに向いてないよ……!
先生がすごくうれしそうに語る場面で全然 共感できない。
「ここ、おもしろいですね!」
――いいえ。おもしろくないです。つらいです。
「ちょっとわかりにくいところなんですけど、
難しい論点なんですけど、頑張りましょうね!」
――ええと、もう頑張りどころがわからないくらい、ついていけてません。

こんなにも勉強がわけわかんないのは、
久しぶりですね。
なにかに手を染めて、こんなにも、
「やべえ、なにもかもわかってない……!」と感じるのは久しぶりです。
ええと、思い返してみると、
中学一年の初めての英語の授業くらい意味がわかんないですね。
俺は英語と日本語の違いをまったく説明されなかったので、
「CAT」の発音が「シーエーティー」ではないことが
全く理解できませんでした。
なんで「キャット」になるの?
「キャット」ってどこに書いてあるの?
つまり、表音語である日本語と、
そうじゃない英語の違いがわからなかったんです。
英語には発音記号があって、
文字そのものの読みとスペルにした時の発音は異なる。
そう悟るまでに、かなり時間がかかりました。
この話を執事にしたら、
「そこでつまづきますか。
頭がすごく悪いのか、いいのか、微妙ですね」と言われました。
どうやら普通は流されるようにして、
「これはキャットである」と考えるようになるようですね。
ある意味、俺は理屈屋なのかもしれません。

理屈屋と簿記はけっして相性が悪くないです。
むしろいいはずなんです。
なぜなら、簿記はほぼ完全に論理の世界で構築されていて、
厳密なルールがあり、
計算によって、原因と結果が結びつけられるからです。
だから、俺みたいな小理屈こねまくりのひとは、
ある意味、向いているのかもしれないんだけど、

「残された時間に対して、理解すべきことが多すぎる……!」

これに尽きる。
残り時間が三か月とか言われたら、
俺も「あ、じゃあしっかり余裕をもって、確実に理解して進もう」とか思うけど、
試験日までの残り時間はあと 28日 である。
ええええ、どうやったら全部 頭に入るの……?!
問題集もあるし、
工業簿記もあるし、
ひょええええ、絵に描いたよーなチキンレース!

で、心が折れます。
けっこう頻繁に心が折れます。
こういうふうに書くと、
「男爵って実はメンタル弱いんじゃない~?」と(笑)されるかもしれないけど、
はっきり言うと、
「俺は打たれ弱い」です(きっぱり)
自慢じゃないけど、かなりな確率で心が折れます。
ただ、立ち直りもするので、折れたまんまってことはあんまりない。
頻繁に落ちるけど、リブートも早いPCみたいなもんです。
けどね、毎日一回は心が折れているので、
いい加減、リブートも疲れてきたよ。
そろそろカスタマーセンターに電話して、
「おたくのPC、ちょっとおかしいんじゃないの?!」とクレームをつけ、
「それは仕様です」とそっけなく答えられるくらいには、
どうしようもない感じです。
まあ、つまりは
 八方塞がり だよね☆ ってことですかね……。


以上、ホラ一割程度で。
ああ、骨折のくだりはホラはほぼないですね。
マジでいるんですよ、電話帳で骨折する人間が。この世には。
いやだって、あれもう、鈍器じゃない?
あれの角で誰かの頭を殴打したら、死ぬじゃない?
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「死にはしないでしょう。怪我はするけど」と予想した方、
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さて、あと簿記の本試験まで、残り28日。
長いととるか短いと思うかはその人次第ですね。
俺は、そうですね、
「時間が足りないに決まってんだろ、バッキャロー!」と思います。
誰のせいだよ?! 俺のせいだよ! って感じです。
責任者出て来い、って、俺だよ! って感じです。
どうですか、かなり頭がこげついている感じじゃないですか。
うん、また心が折れそうですね。
今日一日で四回目ですけどね。

2015年10月12日 (月)

娘の初めての彼氏。

前回までのあらすじ:
 11月に簿記二級を受ける黒羊男爵。
 このブログ、資格ブログじゃないのに、資格の話、多いな!
 というツッコミはすでに脳内でしています。
 でも吉報が少ないな……。
 というツッコミもすでに脳内でしています。
 10月も半ばを過ぎた今日この頃、男爵は何をしてるでしょうか……?!

寝込んでます。
はい、やっぱり日曜日に更新できなかった日は、
寝込んでます。
どうやら自律神経がいかれたらしく、
ここ一か月くらい微熱が下がらず、
フラフラの状態に。
(人生で二回目なので、慣れてはいる)

そんな中ででも簿記のWEB講義は聞かねばならず。
なんつっても、全部で70コマくらいあるんですよ、簿記の講義が!
この週末だけで7コマ聞きました。
今日もこれから5コマは聞く予定です。
じゃないと試験日までに消化できない……!
そんでですね、
何がつらいかって、体調もまあ、しんどいですけど、
それ以上に講義の先生が!
すっごくわかりやすく言ってくれて、
聞きやすい先生なんですけど、
性格的には「好きなタイプ」の先生なんですけど、
先生は簿記が好きで好きでたまらないらしく、
「ここ、おもしろいですね」「もっと詳しく言いますと」
「一級でやる範囲ですけど、簡単に触れると」
などど、おっしゃいます。
せんせーい! 余計なことは言わないでくださーい!
もう脳が拒絶反応を起こしてます。
簿記、ぜんぜん楽しくありません。
数字を考えるの、めんどくさいから、嫌いなんです。
もうホント、チキンレースまっさかりで
ボッキボキです。おもしろくないです、つらいです(涙目)
先生とのこの温度感の差、つらいもんがあります。
微熱の原因の診断を出した医者にも
「精神的に追いつめられてますねえ、あはは」と言われました。

先日、会った友人には、
「なんで男爵って、会うときいつもチキンレースやってんの?」と
「マゾなの?」とマジで訊かれました。
――俺のほうが訊きたいです。
なんで俺の人生って、常にチキンレースなの?
アリとキリギリスのキリギリスだからなの?
でもキリギリスにだって、夏はあったはずじゃない?
なんでいつも冬のキリギリスなの?
え、夏はもう終わって秋になってるって?
そんなん、知らないよー!


以上、ホラ二割程度で。
ホント、WEB講義の先生はいい先生です。
今まで簿記関連で聞いた中では一番わかりやすい先生です。
でもすんません、
俺、簿記そのものが嫌いなんです……!
おもしろいところが見つけられないんです。
そうなんです、
愛娘が初めて連れてきた彼氏を眺める父親のように、
「こいつ、いいところなんてあんのか?」という疑問に苦しめられています。
簿記嫌いでも合格できるんでしょうか?
でも資格予備校のチューター・M氏には
「百点目指してください、ははは」と言われております。
簿記嫌いでも、百点取れるんでしょうか……?
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うん、俺は娘の男を見る目を信じてはいる。
だが、こいつ、好きになれない……!
そんな父親の男心がわかってしまった今日も、
男爵はWEB講義を泣きながら聞いています。

2015年10月 4日 (日)

『普通』の重み。

どうもこんにちは、黒羊男爵です。
今日は「ごく当たり前・普通」とはどういうことか、
考えてみたいと思います。

そもそも、なんでこんなことを
考え始めたかというと、
「そりゃ、おまえ、
わしは『普通』の重さを教える妖怪だからじゃ」
と、今朝 また飯をたかりにやってきた
妖怪友達の ぬらりひょん が言ったからです。

俺は今朝、熱を出して腹を下して、
もう鬼のような状況になってました。
厳戒態勢の戦時下にありました。
「え、なんだって?」
トイレの扉越しに外に立ってるぬらりひょんに訊きます。
「どういう意味?
それはこの状況の俺に言わなきゃならないこと?」
「おまえさんがわしに訊いたんじゃろが。
なんで飯をたかりに来るのか、と」
「そりゃ訊くでしょ。聞きたくなるでしょ。
この猛烈な下痢ラ戦時に、ふらっとやって来て
『今朝は鮭のハラミ焼きが食べたいのう』とか言われたら、
『白米三杯と大根と油揚げのお味噌汁付きで』とか言われたら、
おまえはなにをしにウチにきたんだと、
そりゃもう訊きたくなるのが当然でしょう。
仮にも友達という立場にある存在が、
そんなことをこんな俺に言ったら、
問いただしたくなるのが、人の心ってやつだろが!」
「だから、わしはそれに答えたんじゃ」
ぬらりひょんが言います。
俺は苛立たしい気持ちを勢いよく水で流して、
ようやくぬらりひょんと対面しました。
「手は洗ったかの?」
「洗ったよ、殺菌ソープで洗ったよ!
失礼だな!」
いっそおまえの脳ミソを殺菌したいわ。
ていうか、妖怪に脳ミソはあるのか?
こいつの耳と耳の間は空洞なんじゃないのか?

「だから、それがわしがいる意味、存在意義というやつじゃ」
ぬらりひょんはあっさりと言います。
「だから、なにが?
飯をたかりに来ることがか?」
「それはわしの存在意義の象徴的な行為なんじゃ。
表出なんじゃ。
わしが飯を食う、それは単純に飯を食うという行為ではなく、
もっと深く深く考えられることじゃよ」
「は? 言ってる意味がわからない。
いてて、あ、まだ腹が痛いな」
「じゃから、おまえさんはいま現在 痛感しているじゃろが」
「なにを?」
「普通の、普段の生活のありがたさを、じゃよ。
普通に健康(まあおまえさんの場合は健康というより平穏かの)な状況の
ありがたさが、よくわかるじゃろ、
こうやってそれが崩れてみると」
「そりゃわかるが。
それとおまえの飯たかりと何の関係か?」
「ご飯を食べるという行為は、食べられるという行為は、
恵まれた日常生活の象徴なんじゃ。
世界ではご飯を食べられない状況下にあるひとたちがたくさんおる。
この国でも、白米など食べられない時代もあった。
わしがやってきて、飯を要求できるということは、
おまえさんにはご飯をちゃんと食べられる生活・
『普通』があるという証明なんじゃ。
わしゃ、飯がないところには行かないからの」
「……飯があるところに来るってことか?」
「そうじゃ。わしが来るということは、
その家には『普通』があるということなんじゃ。
じゃが、『普通』の価値に自ら気づく人間は少ない。
恵まれた生活を送っていると、
それが当然で、感謝などしやせんのだ。
そういうところへ、わしは行く。
行って、飯を要求して、
おまえさんが今いる場所はありきたりじゃない、
貴重な『普通』がある場所なんじゃと教えるんじゃよ。
それが、わしという妖怪の存在意義じゃ」

俺は長々と語ったぬらりひょんをマジマジと見つめました。
着流し姿の貧相な小柄の老人って感じの、
何の力もない、
ウチに来ては飯を要求するだけのこの妖怪の存在意義が、
そんなにも高尚で意義深いものだったとは。
ただ単に、飯をたかる、その裏に、
こんな意味があったとは。
今まで思いもしませんでした。
言われるまで、まったく気づきませんでした。
それくらい、ぬらりひょんはウチに来ては、
自然体で飯を要求していたのです。
『普通』があると認めた我が家で。
もう長年、ぬらりひょんと付き合ってましたが、
こいつの性格はよく知っていましたが、
こんなことを言われるとは思いもしていませんでした。
俺はしばし瞑目し、そして言いました。


「――……今の台詞、全部、適当に言っただけだろ?」


「……なんのことじゃ?」

「てめえ、俺をなめるんじゃねえ!
何年の付き合いだと思ってるんだよ、
おまえがそんな殊勝な妖怪じゃないってことくらい、
わかってるわ!
おまえはただ単にただ飯を要求するだけの、
人の家の飯が食いたいだけの妖怪だろうが!
そんな高尚な理屈をつけて、
結論としては、
『鮭のハラミ焼き+白米+味噌汁』を食べたいだけだろうが。
だいたい、ウチの冷蔵庫に鮭のハラミが入ってるって、
知っているから、ウチに来たんだろうが。
おまえが来るタイミングなんてなあ、
ウチに贈答品か、ちょっと奮発した食料品が入荷された時なんだよ!
なにが『普通』の価値だ。
だったら、晩飯におかずがなくておにぎりで済ませる時にも来てみろ。
ウチの『普通』=鮭のハラミレベルだと思うなよ。
何にもない時には、絶対に来ない・来たことねえじゃねえか!」
「……チッ」
ぬらりひょんは思いきり舌打ちしました。
「おかしいのう、無敵の呪文じゃったのだが。
今までの家はだいたいこれで落ちたのじゃが」
「おあいにく様だな!
こっちは言葉を操ることにかけてはそこそこ実力があるホラ吹きだ!
そうそう簡単に、他人の舌先で踊ったりしねえわ!」
「まあ、バレておるなら、もういいわ。
さ、鮭のハラミと白米と味噌汁を出せ」
「あ、本音を言いやがった!
もう容赦なく面と向かって本音を言いやがった。
嫌だね、鮭のハラミは俺のおかゆに入れてもらう。
おまえに食わせる飯はねえ!」
「かゆに入れるじゃと?
北海道産の銀鮭のハラミを?!
ありがたく焼いて白米で食べるほうが供養になるわ」
「なんの供養だよ?!
俺がおまえを供養したいわ!
見送りたいわ!
だいたいなあ、おまえのろくでもない考えなんて」



以上、ホラ九割程度で。
この後、俺とぬらりひょんは鮭のハラミをめぐって、口汚く罵り合い、
最終的には俺が再びトイレに籠城するまで、口論は続きました。
お互い、いい歳した大人がね。
(ぬらりひょんに至っては千年単位で生きてるけど)
もうホントね、あいつもあいつだけど、俺も俺だわ。

え、『普通』の重みですか?
あるかもしれないけど、ないかもしれないですね。
だってそれが普通ってことでしょ。
ぬらりひょんや俺の話す言葉を真に受けちゃいけないよ!
まあ、そんなことは、このブログを読んでくださってるみなさまは、
すでによおくご存知の通りですね。
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「ああ……、途中まではいい話だったのに」と残念な方、
「ハラミか……。焼いて食うのがベスト」とぬらりひょんに賛成の方、
「病気の時には通常時が尊く感じるよね」と俺に賛成の方は、
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最終的に、ハラミは執事がメイドさんと食べました。
俺の胃腸はもうハラミの脂分すら受け付けられる状況じゃなくなってました。
早くお腹が治るといいな。
そしたらもう少し、いいものを食べて、
ぬらりひょんにも優しくなれるかもしれません。

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