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2014年12月14日 (日)

『楽しく帽子を作る』のはなぜか。

前回までのあらすじ:
 知人・画家とともに『楽しく帽子を作る会』の構成員になった男爵。
 さっそく第一回目の『楽しく帽子を作る会』が開催されたのだが、
 三人目の会員・奈落鬱子さん(仮名)と男爵の相性は最悪で……?!

はっきり言っちゃいますけど、
俺的に奈落さん(仮名)は人としてあり得ないと思ったんですよ。
だっていきなり年収を訊いてきた挙句、
「わたしは女神予備軍だから磨かなくていいの」
「リッチな男性だけを狙っていて、
リッチな男性はわたしが女神になるのを喜ぶの」と
ぶちかましてきたんですよ?
まず他人へのファーストクエスチョンが年収って。
いや、お見合いとかだったら、ありだと思いますよ?
でも『楽しく帽子を作る会』ですよ?
オレはアンジェリーナ・ジョリーでもない奈落さん(仮名)には
人間としても、女性としても、まったく興味をそそられないし、
ましてや女神予備軍だから、自分磨きを全くしない彼女
(他家を訪問するのにメイクすらしない)
には、もうご立腹なわけですよ。

で、先週のくだりのあと、
奈落さん(仮名)とオレはにらみ合い、
互いに一歩も譲りません。いや、オレが譲る意味がないし。
画家はそんなオレたちを眺めてニコニコしてます。
「さっそく仲良しになって、よかった!」
「……ちょっと待て」
オレは画家のほうへ向きなおります。
「オレと奈落さん(仮名)がいつ仲良くなったって?」
「そうよ、こんな低収入な人間と仲良くなる必要はないわ」
「オレだって、女神予備軍どころか人間失格予備軍の
あなたと仲良くする必要はありません」
「人間失格は女性を大事にしないあんたのほうじゃないの」
「オレは人間失格ですが、それは認めますけど、
オレは女性には優しいですよ、
女性だと思った相手には優しいですよ」
「あんたの優しさってずいぶんぞんざいなのね」
「いやこれは優しさじゃないからね、
こんなんがオレの優しさだと思われたら嫌だから、
言っておくけど、
これは優しさじゃなくて、カラさだからね」
「あれ? 男爵、男爵、どうしたの」
画家がオレと奈落さん(仮名)の間に入ってきました。
「なんか語調がきつくない?
奈落さん(仮名)は男爵が大好きな女性だよ?
アンジェリーナ・ジョリーと同じ、女性だよ?」
「アンジェリーナ・ジョリーと奈落さん(仮名)は同じくくりの生物ではない」
「なに言ってんの、そっくりじゃん。
同じ哺乳類だし、眼が二つあるところなんて、
もうまるっきり同じだよ」
耳だって、鼻だって、眉毛だって、
アンジェリーナ・ジョリーと同じだよ? と画家は続けます。
オレは全力で首を振りました。
「数が同じならいいってもんじゃない!」
「そうよ、決め手は質よ! 人間の質の問題よ!」
「はあ?! 質が年収訊くのと何の関係が?」
「年収によって、質が決まるんじゃない、決まってるでしょ」
「それ言い出したら、あなたの年収はいくらなんですか。
ご自分の決めた高いボーダーに届いてないんじゃないですか」
「わたしは女神だからいいのよ。
女神以外は、年収がクオリティの基準ってことよ」
「あんたが女神なら、オレは便器でいいですよ」
「あら、自分のレベルがよくわかってるじゃない」
「こんなん皮肉に決まってるでしょうが、
どんだけ自分に都合のいい思考回路してんだ、あなたは」
オレは怒鳴り、奈落さん(仮名)は怒鳴り返し、
もう『楽しく帽子を作る会』はしっちゃかめっちゃかです。

「もうさー、男爵さー」
途中でオレたちの戦いにあきたらしい画家が
オレの洋服をちょいちょいとひっぱりました。
「奈落さん(仮名)と仲がいいのはわかったから、
早く帽子を作ろうよー」
「帽子を作る?! 何のために?」
「だって、これは『楽しく帽子を作る会』でしょ」
「そうだけど、そうじゃねえよ、もうこれは生存競争だよ、
あっちが折れるか、オレが折れるかって問題だよ」
「なんかよくわかんないけど、
とにかく帽子がないと話が進まないからさー」
「話? 話ってなんの話だよ?」
「だから、奈落さん(仮名)ための帽子が必要ってことでしょ。
彼女の頭のために」
「頭? このおかしい頭に帽子をかぶせても何にも隠れないけど?」
「そうじゃないよ」
画家はため息をついて、奈落さん(仮名)を指さしました。
「彼女、ストレスから円形脱●症になっちゃったからさ、
それをオシャレにフォローするために
帽子が必要なんじゃない」
と言いました。

「……病気……?」
オレは唖然として対面の女性を眺めます。
なぜかとたんに奈落さん(仮名)の背中から邪悪なオーラが抜けました。
へたへたと座り込み、
「ううう、なぜなの、なぜ王子様はまだ来ないの……?」
などとつぶやき始めます。
「わたしのなにがいけないって言うの?
どうして三十年以上待っているのに、
王子様はまだ来ないの?」
「……ああ、そういうこと」
オレは納得しました。
つまり、奈落さん(仮名)の高い高い理想はもろ刃の刃で。
理想が高くなればなるほど、
「なぜ理想の王子様が来ないのか」という壁にぶち当たってしまうわけです。
「病人なら、仕方ないけど……」
オレはしぶしぶ譲りました。
オレ自身、病人だから、強く出づらい。
「じゃあなんなの、おまえが『楽しく帽子を作る会』を始めたのって、
奈落さん(仮名)のためだったの?」
「うん。だって、夢をずっと追い続けるのって、
大変じゃない?
私自身、画家になってるけど、画家でいつづけるの、大変だし。
だから、ずっと夢を追っている彼女を応援したいなって、思って」
「……おまえ、オレ以外の人間にはなんか優しくない?」
「だって彼女、かわいいじゃない」
「はあ?!」
オレは耳を疑います。
「かわいい? いまかわいいって言ったか、この自称女神予備軍を?」
「かわいいじゃない、いまだにシンデレラを信じてるなんて。
サンタを信じてる小学生と同じでしょ」
「……おまえの性格は辛口なのか、甘口なのかわからないな」
「とにかく、帽子を作ってあげてよ。
そんで、奈落さん(仮名)を笑顔にしてあげてよ」
「……はあ」
オレは頭をがりがりとかきます。
たしかに、病気なら、いろいろつらい。
虚勢を張ってしまったり、わがままになってしまったり、
ということもあるかもしれない。
いや、まあ、それでも許される範囲ってあるけど、
オレがそこまで奈落さん(仮名)に踏み込むべきかって話にもなる。
なにより、奈落さん(仮名)と友人なのは、
オレじゃなくて画家だし。
で、その画家が奈落さん(仮名)を応援しているらしいのは、
まあ、いい話といえばいい話なのかもしれない。

「じゃあ、わかったよ……」
オレはしぶしぶ教本を取り出しました。
「王子様が寄ってくるような素敵な帽子を作ればいいんだろ」
「そう、それ」
画家は力強くうなずき、奈落さん(仮名)の背中をなでました。
「大丈夫、きっといいことあるよ!」
「……その自信がどこからくるのか、
ホントわかんないな」
オレはため息を漏らし、教本を開きました。

こうして、いろいろありましたが、
『楽しく帽子を作る会』がやっと始まりました。
そんで男爵はどうすんのか、
奈落さん(仮名)や画家はどんな帽子を作るのか、
また来週へ続く。


以上、ホラ八割程度で。
病気ってホントにつらいときはつらいよね。
奈落さん(仮名)もやっぱ、つらいときがあるのかもしれない。
それはオレも認めます。
ずっとずっと王子様を待ち続ける生活ってのも、
つらいかもね。
そりゃもう、シンデレラっていうより、
ラプンツェルって感じだよね。
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幸せになりたいというのは、
まあ、誰しも夢見ることだよね。
それは責めることはできないな。
難しいね。

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