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2014年9月21日 (日)

たいせつなひと。

ココログにていいね! してくださってる常連様。
ホント いいね!返しができないチキンで
申し訳ありません。
あのボタンが自爆ボタンに見えてですね……。
お名前は覚えております!
世界の中心で叫びたいくらい、
勝手に常連様のことが好きです。
いつもありがとうございます。



どうもこんばんは、黒羊男爵です。
先日、近所の公園をふらふらと散歩し、
ブランコのところで一休みしてたら、
目を真っ赤に泣きはらした男の子がやってきました。

「ん」
それだけ言って、わたしは隣のブランコを示しました。
「……ん」
そう答えて、男の子はブランコに乗りました。
わたしちょっと考えてからブランコを下り、
すぐそばの自販機で冷たい緑茶を二本買うと、
「ん」
一本 男の子に差し出しました。
こちらを見上げて男の子はためらいます。
「ん」
もう一度、わたしは言いました。
これはいま自販機で買ったんだよ。
見ていたでしょう。
毒や薬は入っていないよ。
わたしは危ない人じゃないよ。
証拠に、もう一本の緑茶を開けて、
飲んで見せました。
「……ん」
男の子はおずおずと緑茶を手にして、
少し口に含みました。
そして安心したように、半分ほど一気に飲みました。
たぶん、いっぱい泣いて、喉が渇いてたのでしょう。

「ん?」
わたしはブランコをゆらゆら揺らしながら、
男の子の目元を指さします。
「ん」
男の子は首を振りました。
言いたくないのでしょう。
わたしは勝手に推測します。

「嫌いな人?」
「ん」
「好きな人?」
「……ん」
「友達?」
「ん」
「兄弟?」
「ん」
「親?」
「……ん」
そっか。
親に泣かされたのか。
それで、そう言いたくはないんだね。
親を悪者にされたくないんだね。
だから、ひとりで公園で泣いていたんだね。
そりゃもちろん、この子が悪いことをして、
親に叱られたのだという説が一番ありそうな感じですが、
あくまでも初対面の印象ですけど、
この子、そんなに悪い子な感じしない。
おとなしそうな、草食動物的な感じがする。
それに、はいてる靴、あきらかにサイズが小さい。
着てる服もなんだか汚れてる。
この子の親っていったい。
そこまで考えて、わたしは首を振りました。
いや、何の証拠もないのに、
ご両親を告発するのは間違っている。
なにか事情がおありなのかもしれない。
だから、この子が泣いていたのかもしれない。
わたしはしばらく考えて、
それから話し始めました。

「実は、今日はツイてない日でね。
ちょっと誰かと話したい気分なんだ。
聞いてくれる?
いてくれるだけでいいんだ」
「……ん?」
「君に出会うまで、そりゃもう、大変だったんだよ」
「ん?」
「まず起きたらもう、ベッドじゃなくて床でね。
なぜか黄色のキリンのでっかいクッションを抱きしめて寝ていた。
キリンがどこから来たのかわからないけど、
とにかく床に寝ていたせいで身体が痛くて」
「ん」
「それから、キリンの出どころを探した。
うちには子供はいないから、ウチのキリンじゃない。
近所の家を片っ端からピンポンしてね、
『すみません、おたく、キリン飼ってませんか』って
訊きまくった。
もちろん、近所じゃ、変な噂がたっちゃうよ。
オレがキリンマニア、もしくはキリンを誘拐したっていう」
「ん」
「でもキリンのでどころは近所じゃなくてね。
困り果てて、路上でキリンを抱いていたら、
通りかかった人が教えてくれた。
そのキリン、粗大ゴミの日に
あっちのゴミ捨て場にありましたよって」
「ん」
「そっから、オレはゴミ捨て場の前で
キリンを抱えて通行人に聞き込みした。
当然、そこでも噂が立つわけだ、
オレがキリンマニア、もしくはキリンを誘拐したという」
「ん」
「しばらくしたら、
ちっちゃな女の子がやってきてね。
オレが持ってたキリンにすがりついてワンワン泣き出した。
誰がどう見ても、
女の子からキリンをオレが奪おうとしている図にしか見えない。
道行く人はひそひそ話しながら、オレを見ていく」
「ん」
「オレは困って、このキリンは君のキリンなのかいって、
女の子に訊いたんだ。
返してあげようと思ってね。
そしたら、その子は泣きながら、
『もうウチの子じゃないの』って言った。
女の子に兄弟ができて、でっかいキリンの居場所がなくなったんだ。
キリンは知らないうちに捨てられてしまった。
女の子の兄弟だったのに」
「……ん」
「でも、もう居場所がないから、
キリンを返してあげたくても返せない。
親御さんに見つかったら、また捨てられてしまう。
女の子は、けど、もちろん、
キリンとサヨナラなんかしたくない。
どうしたらいいと思う?」
「……ん?」
「この問題はイエスかノーかじゃないんだよ」
わたしはヒントを出しました。
「キリンを捨てるか、捨てないかって問題じゃないんだ。
もっとマシな、いい解決法があるんだよ」
「……ん、……ん?」
「それはね、キリンをオレが引き取るっていう方法だ。
なんといっても、一緒に寝た仲だからね。
オレは女の子にウチの住所を教えて、
キリンに会いたくなったら、いつでもおいで、って言ったんだ。
ひとりでは危ないと言われるかもしれないから、まずはご両親と一緒にね。
キリンはずっと君を待ってるからって、言った。
そしたら、女の子は笑ってくれたよ」
「ん」
男の子はうつむいて、それから少しだけ笑ってくれました。

「で、キリンが解決したから、お昼を食べようと思って、
キッチンへ行って、お皿を取り出したら、
隣の棚に肘がぶつかって、
隣の棚に積んであったトマト缶が左足の上に落ちて。
オレは「おー、おー、おー」って叫びながら、
キッチンを転がったよ」
思い出しても、まだ痛いよ。
付け加えて、オレは遠い目をします。

「さらに、午後の散歩に出かけようとしたら、
近所の知り合いのでっかいゴールデンレトリバーが
とびかかってきてね。
いや、むこうに悪気はないんだよ、気立てのいい子なんだよ。
ただ、デカいんだ。
オレは押し倒されて、道路に後頭部を激しくぶつけた」
ここがはれてるの、わかる?
オレは男の子に後頭部を見せます。
男の子は口を半開きにして、後頭部を見つめ、
「……ん、ん」
と言いました。

「そんなこんなで、オレはびっこひきながら、頭を押さえながら、
公園に向かったんだ。
で、定位置の砂場前のベンチに座ろうとしたら、
おじいさんとおばあさんがすでに座ってるじゃないか。
しかもすげえ仲よさそうに話してる。
あああ、オレの憩いのスペースなのに……。
オレは砂場のベンチをあきらめて、
それで、ようやくたどりついたブランコに座ったわけだ。
これでひとりで静かにしていられると思ってね」
「……ん」
「そしたらさ、ある男の子が泣きはらした顔でやってきたわけだよ」
オレはくっくっくっと笑いました。
「ああ、オレの静かな午後は木端微塵になったって思ったよ」
「ん!」
男の子は慌ててブランコを下りようとしますが、
わたしは制止しました。
「大丈夫だから、オレの話を最後まで聞いてよ」
「……ん……」
男の子はブランコに座りなおします。
その手がかすかに震えていました。
ああ、この子は本当に優しい、いい子なんだな。

オレは話します。
「てなわけで、今日、オレは
キリン、
女の子、
ゴールデンレトリバー、
おじいさんとおばあさん、
男の子 に出会ったわけだけど、
みんなに共通していることがわかるかな?」
「ん?」
男の子が首をかしげます。
オレはゆっくり、静かに、心に届くように話しました。
「それはね、
互いを大切に思っているひとたち だってことだよ」
まあ、キリンとゴールデンレトリバーはひとじゃないけど。
「今日、オレはツイてない日だと思ったけど、
でも、よくよく考えてみると、
みんな誰かの大切な存在なんだよね。
誰かのたいせつなひとなんだ。
そういうひとたちに会えたってことは、
アンラッキーってだけじゃないかもしれない。
よくよく考えてみるとね」
「ん」
「今日であったのは、そういうつながりばかりだと思うとさ、
だったら、君もさ、誰かのたいせつなひと なんじゃないかなって
オレは思うんだよ」
「……」
「もしくは、君が誰かをたいせつに思っているのかもしれない」
「………………ん」
「絶望するなよ」
わたしはブランコを下りて、男の子の手から
空き缶を取り上げました。
「世の中は理不尽で残酷で、
嫌になることが、悲しいことがたくさんある。
けど、絶望するな。あきらめるな。しがみつけ。
他人が信じられないなら、自分を信じろ。
自分を信じられないなら、自分を信じる人を信じろ。
あきらめなければ、
捨てられたキリンとだって、再会できるし、
年を取っても大切な人と会話できるかもしれない」
「……」
男の子が目を潤ませました。
「もしいま、たいせつなひととうまくいかなくても、
大丈夫、本当に君を大事にしてくれるたいせつなひとと、
必ず出会うことができる。
オレはホラ吹きだけどね、それは保証するよ。
じゃあ、ツイてない日の長い話を聞いてくれてありがとう」
オレは缶を捨てると、
最後にVサインをしました。
泣きそうな男の子の手がおずおずとあがり、振られました。
それからゆっくりと指が二本伸びてVサインになりました。
オレは安心して公園を出ました。


以上、ホラ七割程度で。
ツイてない日はあるし、
この世が嫌になることだってある。
自分だけが大事にしていてもダメなこともある。
片思いだってあるしね。
けど、それでも不幸になっちゃダメです。
血反吐はいても、笑え。
自尊心と夢と希望を、ユーモアを捨てるな。
今日は説教っぽかったですかね、
すみません。
まあ、こんな日もある。
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幼くても絶望することはあります。
それでも、オレは言いたいです。
「君を待っている、たいせつなひとは絶対いる」。
どうかあの男の子が歩く道が暗いものになりませんよう、
オーナーに祈ります。

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