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2014年8月17日 (日)

花火のような人生。

前回までのあらすじ:
 今年の夏、中小企業診断士(経営コンサルの資格)を
 無謀にも(お小遣いに目がくらんで)受験した男爵。
 ちなみに、合格のめどがたたないと、
 罰ゲームとして、男爵の秘蔵の蔵書が売られてしまいます。
 さていよいよ、受験した六教科の正解と配点が発表されたが、
 果たして、男爵の合否は……?!

「首の皮一枚、というところだな」
S先生がいいました。
わたしは床に正座して自分の答案の採点結果を
死刑の判決を待つ罪人のような気分で待ちます。
「皮一枚、ということは、
わたしはかろうじて一次試験は合格できたってことですか?」
はかない希望に顔を上げると、
S先生のピンヒールが正座の膝に突き刺さりました。
S先生はそのまま私の膝を踏みにじります。
「ずうずうしい。この点数で、よくも、そんなことが言えたな!」
S先生の手から採点結果がひらひらと落ちます。
わたしは四つんばいで紙をかきあつめ、
採点結果を確認しました。

 経済学・経済政策:32点
 財務・会計:24点
 運営管理:49点
 経営法務:42点
 中小企業経営・中小企業政策:59点

そして。

 企業経営理論:63点。

「やった! 1科目合格してるうううう!」
科目合格は基本60点以上です。
あくまでも上記は自己採点なので、
正確な合否は通知を待つしかないのですが、
それでも、
「よかったあああ! やっぱ、オレってついてるうう!」
「この愚か者!」
S先生が勢いよく私の顔をビンタしました。
片道のビンタでは足りず、往復ビンタされます。
「こんな悲惨な状況でよく合格などというセリフが出てくるな。
一次試験合格にはまったく、ぜんぜん足りていない!
おまえは何年がかりで中小企業診断士をとるつもりだ?!」
「え、でも、ゼロじゃなかったんですよ、
こんだけアウェイな環境で、
体調最悪で、熱があるフラフラな状態で受けたんですよ、
台風だって来てたんですよ。
1科目合格できるだけでもラッキーじゃないですか」
「楽観主義にもほどがある」
S先生はスーツのポケットから1枚の紙を取り出します。
わたしによく見えるように突きつけてきました。

「なんですか、この紙……って、これ、オレの蔵書の買取見積書?!」
古書店の名前入りの見積書でした。
全568冊、オレの全蔵書の買取金額が明示されています。
「えええええ! やっぱ、売られちゃうんですかああ?!」
オレは絶望のあまり、頭を抱えてゴロゴロ転がります。
「一生懸命、頑張ったのに! 寿命だって縮んだと思うのに」
「頑張っても成果がなければ、意味がない」
S先生は今日もS絶好調です。
石の下のダンゴムシを見るような目で
苦しむわたしを眺めます。
「というわけで、売却決定だ」
「いやあああああああ!!」
わたしはもうマジ泣きです。
プライドも捨ててS先生にすがりつきます。
「どうかお情けを、お情けを」
「鬱陶しい。すでに買取主も決まっている。
言いたいことがあれば、買取主に言うんだな」
「なんで、どうして!
いったい誰ですか、オレをこんなに苦しめるのは!」
S先生がふふふと笑いました。
不吉な感じで、唇を三日月の形に吊り上げて笑いました。

「え、ホントに、誰なんですか……買取主は……」
オレはもう、嫌な予感しかしない、
嫌な予感しかしない!
「まさか、オレの知ってる人ですか?」

「そうだ、おまえもよく知っている人物だ」
「え……まさか」
わたしは背後で一部始終を目の当たりにしながら、
いっこうに助けてくれない執事を振り返ります。
「まさか、おまえ、とか?」
「さようでございますね」
「ウソォオオオ?!」
絶叫するわたし。再度頭を抱えて転げまわるわたし。
そのさまを眺めて、執事はふっと笑い、
「はい、嘘でございます、わたくしではありません」
と言いました。
「なーっ?!」
オレは安堵と恐怖をいったりきたりして、
ボロ布のように疲れ切って、床に転がります。
その様子を見てS心が満足したのか、
S先生が衝撃の正解を発表しました。

「お前の蔵書は本日付でおまえの祖母、
つまりわたしのクライアントに売却された」
「はいいいいぃ?!」
オレは茫然とS先生を見つめます。
「お、おばあさまが?!
なんでそんなことを?!」
「おもしろいから、だそうだ」
「……なんという鬼畜……」
オレの全蔵書、オレの生命線がいま、
おばあさまの手にがっちりと握られてしまいました。
S先生はなおも言います。
「伝言をことづかっているが、聞くか?」
「いいです、けっこうです!
どうせろくでもないことなんでしょ!」
「では発表する。
来年こそ、合格のめどがたたないと、
おまえの蔵書、もとい、クライアントの蔵書になった本は
燃えるゴミの日に全部出されるそうだ」
「ええええ! ぜんぜん状況がよくなってないじゃないですか!」
「あ、いや、間違った、廃品回収の日だったかな」
「どっちも同じでしょ!」
つっこんで、わたしは床にぺったりと座り込みます。
ああああ、なんということだ。
つまり、もう1年、勉強しないといけないということだ。
まだ頑張らないといけないらしい。

「花火みてえな人生だな……」
思わず、ため息が漏れました。
ドンと打ち上げられて、パッと咲いて、そして、
「散ってるし……」
今年は散りました。見事に散り終わってしまいました。
S先生とのご縁もまだ切れないようです。
また1年、初心に帰って、勉強勉強ということですね。


以上、ホラ9割程度で。山盛りで。
え、9割ってことは、男爵、本当は合格したの?
それは秘密です。
とりあえず蔵書はゴミに出されていないとだけ
お伝えいたしましょう。
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「本当は合格したのかよ?
それとも落ちたのかよ?」と気になった方は下記をクリック。
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真実は、オレの胸の中にだけあります。
って、格好つけて言っても、
散ってしまった花火は、煙となって流れるだけだわ。
え、てことはやっぱり、落ちたの?
それは聞かぬが花というやつです――花火だけに。

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