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2014年6月 1日 (日)

忘れちまった悲しみに。

2014/06/09 改行が化けててビビりました。
修正したので、もう大丈夫かと。
ご迷惑をおかけしました!

ココログにていいね! してくださってる方へ。
 ありがとうございます。
 いいね!返しができないチキンですが、
 お名前は覚えております!

前回までのあらすじ:
 持病が悪化して入院した黒羊男爵。
 だが、病人とは名ばかり、(いやホントに病人だけれども)
 病人仲間の斎藤君とやりたい放題、
 婦長さんの眉間に縦ジワを増やす毎日。
 さて、今週は何をしているのかな……?

「あー、それは、忘れちゃったなあ」
わたしは首の後ろをポリポリかきながら言いました。
「え、本当に?」
確認されて、わたしはうなずきます。
「うん、ちょっと出てこないかなー。
わたしの前世がアトランティス大陸の戦士だったって頃のことでしょ?
あれから何回か、転生してるからな―、
申し訳ないけど、覚えてないよ。
あ、でも、君の顔には見覚えがあるな。
うん、それはあるよ」
「じゃ、じゃあ、もしかしていつか思い出してくれることも」
「あるかもねー」
返答して、わたしは首をかしげます。
さて、どうしたもんだろうか。
この目の前の少年、
深夜の病院の男子トイレ前の椅子で出会った少年を
どうしたもんだろうか。
少年はキラキラした瞳でわたしを見上げます。
「オレのこと、きっと思い出すよ! レアティウス!」
どうやら、わたしの前世は「レアティウス」というらしいです。

いきなりトップギアで始まっちまってすみません。
前後の説明がぶっ飛んでました。
つまりですね、
ある夜、深夜にトイレに行こうとしたわたしは
トイレの前の椅子で泣いている少年を発見したのです。
小児病棟もある病院なので、
子供がいても不思議はありません。
また、夜のトイレが怖くて、
子供が泣いていても不思議はありません。
(この少年が幽霊とかそういうファンタスティックな
 ことは思いつきませんでした。
 だってグシャグシャな顔で泣いてるから、
 ぜんぜん怖くないもん)
大人として、わたしはトイレを済ましたのち、
少年に声をかけました。
「君、どうしたの。
わたしでよかったら、病室までついていったげようか?」
すると少年の顔が輝き、
「オレのこと、覚えていたんだね!」
と叫んだのです。
そして話は冒頭に戻ります。

少年の言うには、
「オレたち(=男爵と少年)はアトランティスの戦士で」
「少年の仲間で」
「目覚める刻を待っている」ということらしいです。
なんでも、少年は、
「アトランティス時代の仲間に再び会える」というお告げを受けて、
病院の夜中のトイレで人待ちしていた。
そこへわたしがやってきて、声をかけた、ということですね。
うーん、盛りすぎだなあ。
電波てんこ盛りだなあ。
しかも設定が陳腐でおもしろくないなあ。
アトランティスの戦士て。
ありきたりすぎる。
わたしは前世なんかいっさい信じていませんが、
ホラは信じてます。
だから、わたしは言いました。
「ところで、君のほうはどれくらい前世を覚えているの?
つまり、アトランティス時代の話。
君がリーダーだったんだよね?」
「うん、そうだよ。
オレがリーダーで、神殿で神官に仕えていたんだ。
オレたちはアトランティスの神様に選ばれた戦士だから」
「ほうほう、それで、その頃の君の名前は?」
「……リルクティス」
「リルクティス、リルクティスねえ。
うーん、なんか聞いたことはあるような、ないような。
話を続けて。
もっとアトランティス時代のことを教えてよ。
他の仲間のこととか」
「うん! 仲間はいっぱいいたよ」
「え、神に選ばれし戦士じゃないの?
少数の、貴重な戦士じゃないの?」
「もちろん、そうだよ、オレと君は選ばれた戦士だけど、
普通の一般の戦士もいたよってこと」
「ああなるほどね。
ところでさっき、神官って言っていたけど、
治癒の魔法や防御を生業とする仲間はいなかったの?
攻撃専門の戦士だけだとバランスが悪いパーティだよね」
「もちろん、治療の神官がいたよ!
サイージャとか、ビリアヌとか、
何度も怪我を治してくれたじゃないか。
覚えてないの」
「うーん、あとちょっとで思い出せそうなんだけどねー。
で、なんでわたしたちは怪我をしたの?
なにかと戦っていたの?」
「それは、大きな声では言えないよ」

少年はちょっと視線を床に落としました。
「すっごく強い敵だし、今もオレたちを狙ってるし」
「でもさ、
『大きな声では言えないけど、
小さな声だと聞こえない』って言うじゃない?
大事なことはちゃんと相手に伝えないと。
さあさあ、敵の名前を言ってみて。
思い出せるかも」
「……じゃ、じゃあ言うよ。
ジャリンガムヌって覚えてない?」
「え、ジャリとガム?」
わたしは聞き返して、少年の叱責を浴びます。
「違うよ! ジャリンガムヌだよ。
世界の敵だ。 
アトランティスの王家の滅亡を企む悪い奴だよ」
「え、でも、アトランティスの王家はもうないでしょ。
アトランティスがもうないのだからして」
「王女が転生してるんだよ!
オレたちは王女を守るために戦う戦士じゃないか」
「さっきは神官に仕えてたって言わなかった?」
「王女直属の神官に仕えていたんだよ」
「あれ、神様に仕えていたんじゃなかったっけ?」
「王女が神様の化身だったんだよ。
アトランティスの王家は代々、神様だったんだよ」
そんなことも忘れたの、と少年はわたしをなじりました。
わたしは頭を下げて謝ります。
面目ない、まったくぜんぜん覚えてないわ。

「ホントにぜんぜん覚えてないの?」
少年の度重なる確認に、ついにわたしは反撃に出ました。
「じゃあさ、わたしが覚えてることを言うよ。
オッケーだったら、そうだねって言ってね」
「うん」
「わたし、つまりレアルティクスは、
君曰く、アトランティスの王家に仕える戦士だったわけだけれども」
「うん、そう」
「その前の人生の記憶がいま蘇ってきたよ」
「え? その前?」
「つまり、アトランティス以前ってこと。
オレたちは、ムー大陸にその戦士ありと知られた、
剣豪と英雄だった。
ムー大陸沈没をもくろむ敵・ユエーマと激しく戦った。
戦いの最後の日、死ぬ前に君は言ったんだ。
『転生した先でまた必ず会おう。
今度こそは平和で幸せな人生を送ろう』って。
あの誓いを、覚えている?」
「え、えーと」
「君はあの日、わたしの妹で君の恋人の
ミノティアからもらった赤い布を肩に巻き、
腰には双刀をさげていた。
思い出すなあ、君のあのディアメルア流剣術。
二刀流の流派最強と言われた君は、
最後の戦いでもユエーマの部下と激しく切り結んだ。
わたしも隣で戦ったけど、
ユエーマの卑劣な魔力によって思考を支配され、
最後、君と戦うことになってしまった。
君はユエーマを見事に打ち取ったけど、
そのとき、わたしの槍が君の胸を貫き、
君は死んでしまった。
君の死によって、ムー大陸を維持していた世界力の均衡が崩れ、
ムー大陸は海に沈んでしまった……。
覚えていない?」
「……えーと、え?」
少年は硬直しました。
わたしは続けます。
「君が息をひきとるとき、言ったんだよ。
『転生した先でまた必ず会おう。
今度こそは平和で幸せな人生を送ろう』って。
だから、こうしてまた会えた。
日本で、この時代に出会えたんだ」
わたしは目を潤ませます。
「君が無事でよかったよ。
いや、入院してるってことはなにか病気を背負ってるんだろうけど、
でもユエーマのような卑劣な思考支配や
生命へのあきらめ、生命の尊厳への絶望なんかとは、君は無縁だ。
それがわかっただけで、わたしはもう、いいよ」
「え、ア、アトランティスは」
「何を言ってるんだ」
わたしは少年の手を取ります。固く握りました。
「あの日の誓い、果たさないわけにはいかない。
ミノティアだって、君の幸せを願ってるだろう。
君はこの人生で幸せになるんだ。
いま、この人生で、幸せになるんだ。
前世の君が、来世の君に託した願いはそれだけだったよ。
だから、君は幸せにならなければならない。
なにせ、アトランティス以前の、
わたしたちの一番古い記憶の人生の誓いだからね。
すべてに優先して果たされるべき誓いだよ」
「ご、ごめんなさい、
なんかちょっと間違ったみたい」
少年は調子っぱずれの声で叫びました。
「えと、ええと、人間違いっていうか、
勘違いしてたっていうか。
すみません、もういいです、
オレ、もう病室に戻ります」
焦りを隠せない少年に、わたしはどこまでも優しく微笑みます。
「君の未来にムー神の祝福があるように。
ミノティアの分も、願っているよ」
「ごめんなさい!!!」
少年はわめいて、
それから強引に手を離して、廊下を走り去っていきました。

ちょっと薬が効きすぎたかな。
まあもう、これで、当分の間、彼は
「前世の戦士の話」は誰にもしないでしょうね。
おそらくそのうちに、そんな話をする必要もなくなって、
自然に忘れていくでしょう。
つまりはそーゆーことですよ。
遠ざかる少年の後姿を眺めながら、
わたしはしばらく遠い目をしました。
ええそうです、もちろん、
わたしも自分がアトランティスの戦士だって
思ってた時期がありますよ……。


以上、ホラ九割程度で。
今となってはイタイ話ってのは誰にでもあるよね。
当時はすげえマジに語っていたことが、
今となっては笑い話にしかならないってことは、
まあ、誰しもあります。(だよね?)
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ムーとアトランティスはもう古典だよね。
そろそろ第三の大陸の話をしてもいい頃かもしれない。
第三の大陸、そう、黄金の国、ジパングの話を。
って、つまり、「今の人生の話」ってことだけどね。

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