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2014年5月11日 (日)

君にサプライズを。その2。

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チキンなので、いいね!返しができませんが、
心の支えになっております。

前回までのあらすじ:
 いつものように病気をこじらせて入院した黒羊男爵。
 しかし入院先の病院では
 ツーカーのコンビ・斎藤君とともに
 やりたい放題、伝説を作る日々。
 そんなある日、斎藤君が難題を持ち込んできた。
 「長期入院で生きる気力をなくした岸和田さん(女性・仮名)を
  オレたちでどうにか笑かして、生きる気力を取り戻すんだ」
 はたして、男爵&斎藤君コンビは
 岸和田さんを笑顔にすることができるだろうか……?!

「まあ、でも、最初に挨拶くらいはしておいたほうがいいよね」
廊下を進みながら、オレは斎藤君に話しかけます。
「あと、好きなものとか嫌いなものとかわかると、
作戦を立てやすいしね。
敵を知れば、おのずと戦略ができるってもんだよ」
「彼女の好きなものと嫌いなものかぁ。
オレが知る限り、
嫌いなもの=生きること
好きなもの=死ぬこと だなあ」
斎藤君の台詞にオレはコケます。
「そんなん、死亡フラグまっしぐらじゃないか!
病人は生をあがいてこその病人だろ」
「彼女、いまはちょっとナーバスになってるから、
しょうがないんだよ」
「まあ、うら若い女性が長期入院したら、
ちょっとばかりナーバスになっても仕方ないかもね」
オレは自分に言い聞かせ、
岸和田さん(仮名)の病室を訪ねました。
病室の前でオレは斎藤君の服の裾をひっぱります。
「おい、個室じゃないか。
彼女、金持ちなの?
それとも重病なの?」
「両方」
答えて、斎藤君はノックしました。
「こんにちは~、斎藤のおにいちゃんだよ~」
とろけそうな満面の笑みでこう言いました。
おい、斎藤君、君、キャラが崩壊してるじゃないか。
いくら相手が美女とはいえ、
そこまでデレる必要があるとは思えない。
いや、そこまでしなければならないほどの美女なのか。
そうなのか。
オレもやる気と気分が盛り上がってきました。
斎藤君をまねて言います。
「どうも~、斎藤のおにいちゃんのお友達の
黒羊男爵もいるよ~」
扉のロックが外されて開きました。
そして、中から、
「ふたりしてバッカじゃないの」
貧相な少女がひとり現れ、
オレと斎藤君を冷たい目で一刀両断しました。

オレのセンサーがピコンと反応します。
容貌……普通
バスト&ヒップ……貧相(てか、小学生か?)
性格……悪そう、ていうか、最悪っぽい
いかん、オレの「生意気なガキ大嫌い」センサーが
ビンビンに反応している。
つーか、
「おい、斎藤君! 美女は?!
オレたちの助けを求める悩める娘・岸和田さんはどこだ?!」
オレは声を大にして斎藤君に詰め寄ると、
斎藤君は笑み崩れたまま、
「何言ってるんだよ、男爵、
ほら、岸和田さんだよ、可愛いだろう」
と言ってそのクソ生意気そうなガキを指さしました。
その指を、ガキがぽきりと折ります。
「人を指さすな、バカ斎藤」
「ぎゃあああ! 指が、指が」
斎藤君は激痛に転げまわりますが、オレは茫然と少女を凝視します。
マジか、マジでこいつが岸和田さんなのか。
「……これはオレの守備範囲外じゃないか……」
年齢といい、容姿といい、性格といい、
全部「アウト」判定です。
オレはきびすを返しました。
その足に斎藤君がすがりつきます。
「待って、男爵、待って、ちょっと話を聞いて」
「いやもう、お腹いっぱいだから。
もう聞きたい話はないから」
「本当は可愛い子なんだよ、
いまちょっとヒネちゃってるだけで、シャイな子なんだよ。
緊張してるんだよ」
「何言ってんの、斎藤、気持ち悪い」
岸和田さん――ガキは、
芋虫状態の斎藤君を容赦なく足蹴にしました。
斎藤君は笑顔のまま もだえます。
うわ、こいつ、こういう趣味のヤツだったのか。
知らなかった。
友達だけど、今日はもう付き合えないな。
オレは廊下を戻ろうとしますが、
斎藤君が足を離してくれません。
「話、話だけ聞いて、お願い、男爵~」
「「だから、おまえ、気色悪いっての!」」
岸和田さんとオレは同時に斎藤君を蹴りました。
……なんだか、こういうところは気があうな、岸和田さん。

「で、なに、生きる気力がないんだって?」
わたしは鼻をほじりながら、岸和田さんに確認します。
ガキはあざ笑うかのように、オレの目の前に自分の左手をかざします。
手首に白い包帯が幾重にも巻かれていました。
「手首、切ってやった」
「リストカットかよ、うわ、おまえ頭悪いな」
オレはもう容赦なく指摘します。
「本当に死にたいなら、手首なんか切るな。
手首じゃ なかなか死ねないぞ」
「うるさいな! いいでしょ、どこを切っても!」
あたしは死にたいんだから、とガキは大声で言いました。
生きたくても生きられなくて死んでいく人がいる病院で、
なんつーことを言うんだ、このガキは。
「死にたがりかよ、ガキが」
オレは足元で丸まってる斎藤君に言います。
「斎藤君、オレもう帰っていい? ていうか、帰る」
「待って、男爵、待って、
ふたりで岸和田さんを笑顔にしようよ!」
「ふざけんな、こんなクソガキ笑顔にする意味なんかねーわ!」
「笑顔ってどういうことよ、あたしは死ぬのよ、
笑うわけないでしょ」
オレと岸和田さんは、また同時に斎藤君を足蹴にしました。
……本当に気が合うな、こういうところだけは。

「笑いたくなんかない。
もう見たいものもない、欲しいものもない」
岸和田さんは宣言します。
オレは
「あーそ-ですか。そーですか。
じゃあさっさと生きるのやめてください。
ていうか、もう生きていないようなもんだけどね。
そんだけ外を、世界を拒絶してたらね」
言いたい放題を言います。
こんなクソガキに遠慮なんかするか。
「いや、男爵、待てって。
彼女、本当は笑顔が可愛い子なんだよ、
いまはちょっとナーバスになってて」
斎藤君がオレに懇願します。
「二人でこの子を笑顔にしよう、な?」
「断る」
オレは断言しました。
「こんなやつ笑顔にするために、労力使うんなら、
灼熱の炎天下で一生懸命 募金活動している
捨て猫保護サークルでボランティアする。
あのひとたちのほうがはるかに尊敬できるし、
猫のほうがもっとずっとかわいい」
「あたしは猫に劣るっていうの?!」
「劣る。断然 劣る」
「ふざけんな、なら笑わしてみなさいよ!」
岸和田さんが叫びました。
「こんなつまらない、くだらない、価値のない世界に
意味なんかない」
「世界は美しい、どんなにつらい時でも!」
わたしは言い返します。
「だから世界は残酷なんだ。残酷だけど、美しいんだ。
世界から目をそらしたって、その真実は変わらない」
「そんな世界、なくなっちゃえばいい!」
岸和田さんは言います。
「どうせ、あたしは死ぬまでこの部屋から出られないんでしょ、
世界の美しさなんか、欠片も見ることがないまま、
死ぬんでしょ。
だったら、早く死にたい、終わらせたいと思ってなにがいけないの?!
みんな、みんな大嫌いよ!
一生見られない世界とか、一生出られない外とか、
なくなっちゃえばいい!」
わたしはちょっと息をのんで、わめいた少女を見つめました。
彼女の態度は、その深い絶望に根差していたのでした。
斎藤君と同じ、病院から自分が出ることがないと知っている、
その絶望から、彼女はすべてを拒絶していたのでした。
たぶん、斎藤君の中にも岸和田さんはいる。
こうなってくると、オレは岸和田さんを見捨てられない。
なぜなら、岸和田さん≒斎藤君 だからです。
斎藤君が岸和田んを見捨てられないのは
オレが斎藤君を見捨てられないのと同じ理由でしょう。
オレは決心しました。

「いま、世界なんか無意味だって、言ったな?」
わたしは岸和田さんにつめよります。
岸和田さんは挑戦的に言い返します。
「言ったよ、なくなっちゃえばいいって言った」
「なら、本当になくしてしまえばいい」
オレはずんずんと病室に入り、
窓のカーテンを全部 閉めます。
部屋は一気に暗くなりました。
「外の世界なんか、いらない、そういうんなら、
もう二度とカーテンを開けるな。
だって外なんか眺めても無意味なんだろ」
「……そうよ、別に、見たいもんなんかない」
岸和田さんは受けて立ちます。
「見たって、いつも同じ病院の塀と空しか見えない。
見たいもんなんかないわ」
「じゃあもう、二度と開けるなよ」
「開けないわよ、バーカ」
岸和田さんは嘲るように言って、
オレたちを病室から蹴りだしました。
「二度と来るな、バーカ」
もう一度、オレたちを罵ると、
ドアをロックしてしまいました。

「な、岸和田さん、可愛いだろ」
あざだらけになっても、笑顔で斎藤君は言いました。
オレは斎藤君の腰に後ろから蹴りを入れます。
「どこが可愛いんだよ、可愛いところなんか1ミリグラムもねーわ。
けどまあ、驚かせるのはいいね。
あんのクソガキがビックリするところはちょっと見てみたい」
「男爵、なんかアイデアあるの」
「ないこともない」
オレはさっき思いついたことを思い出します。
斎藤君の中にも、岸和田さんはいる。
なら、オレは岸和田さんを笑顔にしなくては。
脳内で戦略とプランを検討し、オレは結論づけます。
「さいわい、オレは絵が上手だから……まあ、うまくいくだろ」
「男爵、オレはなにをしたらいい?」
「毎日、岸和田さんに蹴られてこい」
「いや、別に今でも毎日 蹴られているけど」
「挑発して、彼女が外の世界に、興味を持たないようにするんだ」
「え、逆じゃなくて? 興味を持たせるんじゃなくて?」
「できるだけ持たないほうが望ましい。
そうだな、カーテンを二度と開けないようにしておくくらいがいいだろう」
「わかったけど……勝算は?」
「あるよ、だってオレたちは医療法人●●会●●病院の伝説のふたり、だろ」
「そうこなくっちゃ」
斎藤君とオレはハイタッチします。
「今日からさっそく行動開始だ」
オレは携帯電話で執事を呼び出します。
必要な物資を手配しなくては。
ええと、いるのは金づちと釘とベニヤ板と模造紙と絵具と……。
隣で斎藤君がご満悦でスキップしています。
早くも岸和田さんの笑顔を想像しているのでしょう。

さて、男爵は岸和田さんを笑顔にすることができるのでしょうか。
いったいなにをどうするつもりなんでしょうか。
仕込みに時間がかかるため、来週に続く。


以上、ホラ九割程度で。
生きるのが嫌になることくらい、
生きてりゃ何回もあるよ。
死んだほうが楽なんじゃないかって思うときもあるよ。
けど、だからって本当に死ぬのも違う気がする。
オレの座右の銘は「死ぬときはドブの中でも前のめり」だから。
生きてるとき、すっごくあがいて、自分のベストを尽くした人だけが、
死ぬとき、満足できるんじゃないかな。
往生できるんじゃないかな。
そういうひとだけが、ちゃんと死ねるんじゃないかな。
どうだろうか。
死んだことないから、本当のところはよくわからないけど、
オレは「とりあえず生きてる間はあがく派」です。
まあ、人それぞれ考えはあると思うので、
生き方は自由だと思います。
死に方も自由だと思います。
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