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2014年3月16日 (日)

生き字引。

どうも、こんにちは。
「大家様募集中」という看板を
「大家族募集中」と読んでしまった黒羊男爵です。
眼が悪いのか、頭が悪いのか、想像力が過剰なのか
わかりませんが、読んだ瞬間に、
今度はどんな番組を作るつもりなんだよ、と
つっこんでから、自分の間違いに気づきました。
そうだよね、普通の町の不動産屋さんは
テレビ番組は作らないよね……。

今日はそんな男爵が先日受けたご相談内容を
語ってみたいと思います。
それは、ずばり、進路相談でした。
ていうかもっと突っ込んで、
具体的なアドバイスを求められました。
で、答えたつもりなんだけど、
どうだろうか?
どうろうね?
みんなはこの話を聞いてどう思う?
男爵はちゃんと答えられたかどうか、ジャッジしてみてね!

事の発端は、俺が読書家だということです。
そして、知り合いの息子さん・T君は
西洋文化に興味がありました。
現在 高校生・今年受験生だったT君は
将来の専門分野を相談するために、
「お父さんの知り合いの中で一番頭がいい」
男爵のところへやってきたのでした。

「西洋文化にとても興味があるのです。
絵画とか芸術を鑑賞するのが大好きなんです」
こう切り出したT君。
わたしはふむふむ、とうなずき、
「ということは、西洋文化に詳しくなるような
専攻を選んだほうがいいね」とアドバイスしました。
T君は
「どこかよい専攻はありますか」と聞いてきたので、
わたしは
「歴史学科、中でも西洋美術史を専攻とするような
大学がいいんじゃないの」と返答。
T君は熱心にメモをとるので、
わたしは具体的にいくつかの大学をあげ、
受験を勧めました。

ただし、とわたしは最後に言いました。
「君の進む道はとっても楽しいけど、
日本人にとっては、とっても険しい。
君、大丈夫か」
「え、なにがですか」
「西洋文化を研究する心構えだよ」
「もちろんあります。
できれば、大学院まで進めればと思っています」
「そうか、覚悟があるのか。ならばわたしも遠慮なく話そう」
わたしは立ち上がり、
T君をダイニングルームから書斎へ招き入れました。

「すっごい量の本ですね」
書斎に入ったT君は感動します。
やばい、この反応はちょっとマズイぞ。
「君、やっぱり覚悟ができてないんじゃないか」
「え? できてますよ、研究しようという覚悟ですよね?」
「うーん、じゃあ、わたしも遠慮なく話していいかな?」
「はい? どうぞ」
「ではいくぞ」
わたしは書斎の中を走り回り始めました。

「西洋文化を知りたい場合、当然のことながら、
西洋の教養人が持っていた知識が必要になる。
わかるか?」
「はい」
「では、まずは手始めに、
西洋文化を知るうえで、絶対外せない資料から
あげていく」
わたしは書棚からピックアップした書籍を
机の上に積み上げます。
「まずはギリシア神話。これを知らないと話にならない」
「ギリシア神話なら、大好きですよ。
けっこうくわしいですよ、ぼく」
「言っておくが、星座の成り立ち程度の知識では無理だぞ。
ブルフィンチのギリシア神話は有名だが、
あれは入門書だ。
最低でも ヘシオドスの神統記 の内容レベルは
暗記しておけ。
もちろん、転身物語 や イリアス、オデュッセイア は基本だな。
もう読んでいて当然だ。
叙事詩の環や叙情詩の有名どころも押さえねばならない」
「え」

「それから、聖書だな」
わたしはひときわ分厚い本を山に載せます。
「一度は通読して内容を把握する必要がある。
旧約、新訳ともに、聖書の中の有名なエピソードは
シチュエーション、登場人物を完璧に把握しろ。
読むべき聖書はまあ、
一般的な新共同訳でいいだろうが、
外典にもトビト書のように外せないものがある。
外典も一通り読むべきだな」
「……は、はい」

「それからシェークスピアだ」
わたしはドカドカと本の山をもう一つ作ります。
「悲劇、喜劇は読んでいて当たり前。
聖書同様、劇中のシチュエーション、登場人物、
あと有名なセリフは完璧に頭に入れておくこと。
詩文までできれば読んでいてほしい。
まあ、いきなり戯曲を読んでもイメージがつかめないだろうから、
おススメはラム の シェイクスピア物語 や、
映画化もされた「から騒ぎ」などからの入門だな。
以上、ここまでが西洋文化の基本だ」
「………は、はい」
私の言葉をメモるT君のメモの字がもう乱れまくって、
のたくってます。

「次に、応用編。いくぞ」
わたしは次なる本をピックアップします。
「西洋の有名どころの伝説、逸話、キリスト教の聖人譚は必須だ。
伝説で言えば、アーサー王、ジークフリード関係、
北欧神話やオペラ、バレエなんかも必須の教養だ。
君がもし、西洋文化史の絵画を専攻するなら、
聖人譚は 黄金伝説 まで読んでおいたほうがいいだろう。
聖人の持物や特徴を知っていないと、
ヴァチカン見物に行っても、
本当にただ絵画や彫刻を見ただけになってしまうぞ。
ちゃんと解釈や鑑賞できるようにならねば研究者とは言えない」
「…………は、はい」
「花言葉も押さえないと絵画がわからない。
それから言わずもがな、歴史的な事柄も必須だ。
戴冠式や海難事故、王家の肖像画など、
歴史的な事柄を題材にした絵画は多い。
あとは名言や詩だな。
有名な名言は頭に入れておこう。
カエサルの「見た、来た、勝った」は知っているな?
あんな感じで、ことわざや名言は常識といえるだろう」
「……………………は、はい」
T君の目に涙が浮かびます。
あれ?
ちゃんとT君に親身なアドバイスをしたつもりなんだけど、
嬉しくないのかな?
これってうれし涙?
まあ、いいや、じゃあもう一つ、親切をしてあげよう。

「以上のように、君が身につけるべき知識は多い。
まあ、これは君が大学院・研究者を目指していて、
本気でアドバイスがほしいということだったので、
わたしの経験から必要だった事柄を話してみた。
さいわい、わたしは君の知り合いだ。
必要な書籍は無償で貸し出す。
遠慮はいらない、好きなだけ持っていきたまえ」
「は、はい」
T君はつばを飲み込み、
メモ帳を閉じました。
そして最後に言いました。
「で、ぼくはどれを読めばいいんでしょうか?」




以上、ホラ六割程度で。
どうでしょうか、
男爵はT君に適切なアドバイスができていましたか?
自分としては具体的で、わかりやすい話を
したつもりだったんだけど、
結局、T君は一冊も持っていきませんでした。
まあ、また遊びに来てよ、T君。
身近で将来の研究者が育っていくなんて、嬉しいよね。

ちなみに、俺の知り合いであるT君の親は知人の中で
「一番頭がいい人」って俺を息子に推薦したけど、
「一番頭が悪い人」ともかつて俺のことを言っていたよ。
T君は知らないけどね。
「大家様」と「大家族」の区別がつかなかった男爵は
はたして頭がいいのか、悪いのか、
どっちでしょうか?
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「頭がいいでしょう」と思われた方、
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「たぶん異常。いい意味でも悪い意味でも」と思われた方、
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まあ、好きこそものの上手なれ、だよ。
本当に西洋文化史やるなら、
資料の本なんて楽しくていくらでも読めると思うよ。

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