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2013年11月24日 (日)

初めてのあなた。

前回までのあらすじ:
 貧乏仲間の画家に「金がない」と言う理由で
 手作りワンピースを提供したわたし。
 布から洋服を作るその作業は通称「シャランラ♪」と呼ばれる、
 シンデレラの魔法使いのおばあさんの魔法である。
 本来、ホラ吹きであるオレにシャランラ♪ が使えるわけがないのだが、
 そこは人一倍手先が器用なオレ、
 なんとかワンピースを完成させ、画家を人生初デートに送り出すことに成功した。
 で、その後日談なんだが……。

そうなんですよ、
先々週の土曜日、ようやく完成したワンピースを持って、
画家は我が家を出て行きました。
翌日の日曜日が、
画家の生まれてはじめての異性とのデートの日 でした。
わたしは成り行き上、
「あいつ、大丈夫か」
「ワンピース、着用に耐えられるのか」
とかなり心配していました。
既製品の高価なブランド服着ていっても
場合によっては散るのが恋の道ですからね。

「でも、相手からデートに誘ってきたって言ってたからな」
そもそも向こうからのアクションなわけですから、
こちらの一方的な片思いよりも成就の可能性はあります。
「デート場所は動物公園だし、そんなに金もかからないだろうから、
そうそう極貧だってボロも出ないだろうし」
内面は、その、あの、アレですが、
外見が普通にワンピース着てデートにうきうきしている女子に見えれば、
望みはゼロではない。
「ただ、あいつ、しゃべるとなあ。大丈夫かなあ」
けど、一応、画家と公園で何度か話した上で、
相手はデートに誘ってるわけだから、
多少 画家が人の道を踏み外した発言をしてもなんとかなるかも。

わたしは、日曜日、終日 緊張して過ごしました。
携帯電話のそばに常にいました。

しかし、日曜日の夜、画家から電話はかかってきませんでした。

月曜日も、
火曜日も、
水曜日も、

何事もなく、携帯が鳴ることはなく、過ぎていきました。

ついに木曜日の夜、わたしは
「もう我慢できん!」と、
(本来、オレは迷惑かけられた側だから、
 向こうから結果を連絡してくるのがスジってもんだろ)
(でも待てなくなった)
画家に電話をかけました。

家電話は例の短い留守電でした。

うーむ、出ないか。
じゃあ、携帯に着信を残しておこう。
ワン切りして待つこと三十分。
木曜日の夜九時過ぎに、画家から着信がありました。
ひったくる勢いで携帯に出たオレ。
「もしもし!」
「……男爵、わたし画家だけど、さっき電話した?」
「おまえ、電話したもしないもないだろ!
デートはどうなったんだよ、
ちゃんと相手のハートをゲットできたのかよ?
オレも一応 関係者なんだからさ、
事後報告の連絡くらいあってもいいだろーが!」
「えー……ダルーい……」
「ダルいっておまえ……」
心配していたのに、なんて言い草だ。
こいつ、本当にオレの友人か。
いや、本音がダダ漏れてしまうところなんて、
まさにオレの鏡なのだが、
それにしたって、
「ずいぶんテンション低いじゃないか。
生まれてはじめてのデートだって、
あんなにうきうきしてたのに。
……あれか、やっぱワンピースがなんかマズかったか」
だとしたら、オレにも微妙に責任があるよーな……。

「ワンピースぅ? ああ、アレね。
別にどってことなかったけど」
「? どってことないってどういう意味だ?
ちゃんと相手に「おめかししてるぞ」って伝わったのか?
それとも、無理だったのか?」
「伝わったけど、意味がなかった」
「は?」
意味がないとはどういうことだ。
仮にもデートで女性がおしゃれしてきたら、
褒め言葉の一つくらいかけるのが、男の甲斐性ってもんだろ。
「褒めてもらえなかったのか?
そりゃまあ、手作りだけど」
「褒めてはもらったよ」
「! なんだ、デートはうまくいったんじゃないか」
わたしは安心しました。
よかったー、一応、気になってたんだよな。
オレのワンピースのせいで
デートが失敗したらどうしようって思ってた。
成功したんなら、よかった、よかった。
苦労した甲斐があった。

しかし、画家は次の言葉でオレにトドメを刺しました。
「褒められても、ぜんっぜん意味なかったけどね」
「へ? だって雰囲気よくなったんじゃないのか?
褒めてもらって、ちょっとテレた感じでお礼を言って、
それから、こう、なんていうか、盛り上がるって言うか」
「褒められても、ぜんぜん、まったく、意味がなかった」
「どういうことだよ?
褒められても意味がないって、わけがわかんねーぞ」
「だって」
画家はすこし湿った声で言いました。
「だって、褒めてくれたの、彼の奥さんだったから」
「……は?!」
奥さん?!
デートに奥さんってどういうことだよ。
てか、奥さんってそもそもどういうことだよ?!

「ちょっと待て、デートじゃなかったのかよ、
てか、既婚者だったのかよ?!
おまえ、そんなこと一言も」
「わたしも知らなかったんだもん、
仕方ないでしょ!
デート、デートだと思ってたのに」
「どういう風に誘われたんだよ」
「11月に、動物公園で一緒に食事でもどうですかって」
「……デートに誘っているように聞こえるな。
動物公園で食事が普通なのかどうかは別として」
「食事は出たよ、彼の奥さんの手作りのお弁当が」
「だから、奥さんってどういうことだよ」
「彼、その、「家族ぐるみで食事はどうですか」って意味で言ってたみたいだった。
なんか、わたしが貧乏画家で
あんまりいいもの食べられないの、知って、
それで、せめて栄養をって、で、誘ってくれたみたいだった。
わたし、勘違いして、ふたりっきりだと思って行ったら、
おっきなお弁当抱えた奥さんと、ふたりの子どもがいた」
「――……もしかして、だから動物公園……?」
「そう。子供づれだから。
最初から、最初からわたしの勘違いだったんだよっ!
ごめんね、迷惑かけて!」
画家はそう怒鳴ると、電話口で泣き始めました。

なんということでしょうか。(BeforeAfter風に発音してください)
わたしは久々に唖然として言葉をなくしました。
口が達者で、ホラが達者で、
「てめえの墓前にはクチナシの花を供えてやるよ」とまで
ののしられたことがあるこのわたしが、
二の句が継げずに絶句しました。

「……まあ、その、なんだ」
わたしはようやくどうにか言葉をひねり出します。
「これは『初めてのデート』は、また次にとっておけってことだろ。
もっといいひとが来てくれるよって、サインだろ。
今回は既婚者だったから、今回のデートはノーカウントだ。
人生の初めてのデートは、次こそ、いいやつとしろよ」
「わたし、は、初めてだったのに」
「うんうん、そうだな」
「い、一生懸命、おしゃ、おしゃれして」
「そうだな、頑張ったな」(オレが)
「行ったら、奥さんと子どもが」
「ありえないよな、大丈夫、こんなことは二度とねーよ。
それは保証する」
請合いながら、わたしは冷や汗を流していました。
ヤバイ、画家が一生 デートと縁がなかったらどうしよう。
今後、二度とデートの機会がなかったら、どうしよう。

それから、わたしは一時間以上かかって、
どうにか画家をなだめて、
泣き止ませて、
笑わせて、
電話を切りました。
最後のほう、かなり強引に笑わせたけど、
ちゃんと笑ってくれたから、いいだろ。
オレはベストを尽くしたよ。
でも、こんなことってあるんだなあ……。




以上、ホラ七割程度で。
ご飯に誘うときはさ、ちゃんと既婚者ですって言ってくれないとさあ、
巨大な勘違いするからさあ、
ホント頼みますよ。
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もしかしたら、画家は一生独身かもしれませんね。
でもそれでも、好きなことを好きなようにやれれば、
それで十分いい人生だとおもいます。

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