« 予想外。だが、想定内。 | トップページ | それだけの話。 »

2013年4月29日 (月)

ここだけの話。

現在のステータスが「入院中」のわたし。
病院の中で生活しているわけですが、
この病院には中庭がありまして。
中庭には喫煙所があり、
昨日、わたしはそこで、とあるおっさんに出会いました。

そのとき、おっさんは火山の噴火口みたいに
煙草の煙を吐きながら、口をぱっかりあけて
ぼんやりと空を見上げていました。
わたしはコーヒー牛乳を片手に、
喫煙所のすぐそばの木陰で
ぼんやりと空を見上げていました。
そして、ふたり同時に、空から目を落とし、
「はあ」とため息をつきました。
似たようなため息に思わず相手を見るわたしとおっさん。
「……どうも」
社交的なわたしはぺこりとお辞儀しました。
「どうも」
おっさんも頭を下げました。

なんだか妙な沈黙が落ちました。
わたしは沈黙に耐えかねて、
「いい天気ですね」と会話を始めてしまいました。
「まあ、天気はいいね」とおっさん。
「だが、あんた、オレの気分は最悪だよ」
誰かに話したかったらしいおっさんは
勢いよく話し始めました。
「最悪ですか、どうかしたんですか」
流れのままに尋ねるわたし。
おっさんは煙草を吸い、また煙を吐いてから、
「ここだけの話、オレは、末期なんだ」と語りました。
そうか、末期か。
だが、ここは病院だし、それを言うなら、
「奇遇ですね。わたしも末期なんです」
とわたしは返しました。
うん、そう、末期だねってよく言われてる。主に頭が。

おっさんはちょっとビックリしたようでした。
「え、そうなのかい、あんたもなのか。
オレはもう思い残すことなんてねえんだけどよ、
普通はいろいろ考えることがあるんじゃねえか」
「そうですね、考えると思いますね。
なにせ末期ですからね。終末ですから」
「まあ、オレはいいんだけどよ」
繰り返して、おっさんは空を見上げます。
つか、これって、
「なにを考えていたんですか」とわたしは尋ねました。
つまり、聞いて欲しいってことだよね。
いいよ、ヒマだし。
「たいしたことじゃねえんだけどよ」
「いいんじゃないですか、細かいことでも。
なにせ末期ですし」
「そうだよな、考えてもいいよな、末期だし」
おっさんはそう言い置いて、
「実はオレ、末期なんだよ」と告白しました。
うん、それはもう聞いた。
「それで?」
わたしがうながすと、おっさんは煙草をもみ消して
「オレはろくでなしだった。
こんな人生、後に残すもんなんてねえんだよ。
さっぱりしたもんだよ。
だけどな、いっこだけどうしてもどうしても
譲れねえことがあるんだよ」
「それはなんですか」
「……なんてえかな、流儀っつーか、
生き方っつーか、それを誰かに引き継ぎたかったんだ。
オレは職人だしな」
「人生観を誰かと共有したいってことですかね」
「シャレた言い方すりゃ、そうだな」
「いいんじゃないですか、残しても。
家族でも、職場仲間でも。
さっぱりした終わりでも、
お土産があってもいいんじゃないですか」
「そうか。そう思ってくれるか。
だがなあ、残せる相手がいなくてなあ」
「人手不足なんですね」
「ああ、人材不足だ。いねえんだよなあ。
で、この際、ここで話したのもなにかの縁だ。
あんた、オレの生き方を引き継いじゃくれねえか」
「え、わたしがですか」
人材不足にもほどがあるだろ。
第一、何を引き継ぐのか、さっぱりわからない。
「ちょっとわたしじゃ無理があるんじゃないかなあ。
ホラ、わたしも末期ですし」
「だが、あんた、オレよりはイキがよさそうだ。
つなぎでもいいんだよ、
とにかく誰かに残したいんだ」
おっさんは必死にわたしに頼み込んできます。
どうしようかな。

「じゃあ、こうしましょう」
わたしはある提案をおっさんにしました。
どーでもいーよーな「ここだけの」話が来週に続く。




以上、ホラ九割程度で。ちらりと真実もありで。
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

« 予想外。だが、想定内。 | トップページ | それだけの話。 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568051/57273705

この記事へのトラックバック一覧です: ここだけの話。:

« 予想外。だが、想定内。 | トップページ | それだけの話。 »