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2013年3月 3日 (日)

崩壊・ひな祭り。

3月3日、今日は桃の節句ですね。
もともと節句は中国の習慣で
秋には菊の節句もあるのですが、
あまり知られていない。
ちなみに、5月5日はこどもの日として祭日ですが、
3月3日は祭日ではないのは、
当時の大日本帝国憲法下では女性参政権がなかったからです。
いまから祭日にしてもいいと思うけどね、
日本人が休むのって本当に、祝祭日くらいだからね。
(土日も働いている場合あり☆)

我が家は5月5日中心に祝ってましたので、
3月3日には特に、ご馳走や雛人形などは出ませんでした。
第一、わたしは雛人形を持ってないしな。
でも、いとこに三姉妹がいて、3月3日に遊びにいくと、
ご馳走が出たものでした。
ちらし寿司とかお吸い物とか、ケーキとか、ひなあられとか。
幼いころ わたしはまあ、ご馳走目当てで
いとこの家へ遊びに行っていたわけです。
我が家はお菓子禁止の家だったので、
ケーキなんて滅多に食べられなかったしね。
(虫歯になるからダメという理由らしい)
(食べた後に、ちゃんと歯を磨けばいいんじゃないの、と今は思う)

ある年のこと、いつものように遊びに行った
わたしは、「子供は入っちゃダメ」という部屋の存在を知りました。
女の子っぽくて長い髪をポニーテールにしたいとこが
「ナイショだよ」と言って案内してくれたその部屋は
二十畳ほどもあったでしょうか、
大きな畳敷きの部屋で、部屋の奥に十三段飾りの雛人形が
飾られていました。
子どもはいたずらをするので、
雛人形を飾るのも親、しまうのも親で、
子どもは部屋の敷居から、その代々伝わる立派な雛人形を
あこがれの目で眺めているだけなのでした。
「大人になってお嫁に行ったら、触ってもいいんだって」
いとこが大事そうに言ったので、
「そんなん変だよ」
私は即答しました。
「別に眺めるくらいなら、そばで眺めようが、
遠くから眺めようが一緒だろ」
わたしはずんずん秘密の部屋に入っていって、
くだんの雛人形を段のふもとからしげしげと眺めました。
いとこはおっかなびっくり私についてきて、
「ダメだよ、怒られるよ」
と言いながらも、視線は雛人形に釘付けです。
「ほら、別になにも起きないじゃん」
わたしは勝ち誇って雛人形を指さします。
いとこはゆっくりうなずいて近づき、
「お雛様のお顔、こんな近くで見たの、初めて。
嬉しいなあ」
と言いました。
わたしは、そんなことが嬉しいのか、
いとこはよっぽどこのお雛様に思い入れがあるのだな、
憬れていたのだなと思い、
「もっと近くでみなよ。ほら、三人官女とお雛様は顔が違うよ。
牛車とか家具とかもあるよ」
と指さしました。
いとこは更に近づいて、ため息をつき、
「きれいなお雛様だね」とつぶやきました。

そんなにこのお雛様が好きなのか。
よくよく考えたら、いとこの両親は毎年、
このお雛様を手にとって飾ったり、しまったりしているわけである。
子どもだからといって、大人よりも馬鹿ということもあるまい。
いとこは多少、夢見がちだが、馬鹿ではない。
ということは、子どもだってお雛様を手にとってもよかろう。
むしろ思い入れがある分、大人よりも
大切に扱うのではないだろうか。

てなことを、わたしは三秒くらいで考えて、
「そんなに好きなら、取って持って見たらいいよ」と言いました。
いとこはビックリして、「できないよ、叱られちゃうよ!」と答えました。
「まあ、無理にとは勧めないけど」
わたしはいとこがビビッているので、あっさり意見を引っ込めました。
本人にやる気がないんなら、別にいいよな。
「触りたいけど、でも、怒られちゃうから……」
いとこはしょんぼりとうなだれました。
なんだ、触りたいのか。だったら触ればいい。
「じゃあ、最上段のお雛様は取るのが難しいから、
この牛車の牛とか、家具とか触ってみたら?
これはこれでよくできてると思うよ」
「お雛様じゃないから、大丈夫かな」
いとこはそっと牛車をつまみ、じっくりとながめて、
嬉しそうに「本当によくできてるね」と感想を言いました。
わたしはひな壇にできた空白を見て、
あるアイデアが閃きました。
「そうだ、いい考えがあるよ!
この飾りをちょっとずつずらしていけば、
ちょうど十三段の階段みたいになるよね。
大人は無理だけど、子どもなら登れるんじゃない。
そしたら、もっと近くてお雛様を見られるよ」
「大丈夫かな」
「大丈夫だよ。だって別にお雛様に触るわけじゃないから。
だからほら、牛車の隙間に左大臣を入れて、
左大臣の隙間に、この五人組をひとり入れて」
わたしは言いながら、足を置く隙間を作りました。
「早く、早く! 大人に見つかる前にお雛様の顔を
至近距離で見るチャンスだよ!」
いとこは決心してひな壇を登り始めました。
よつんばいであがり、三人官女の真ん中に手を置いて
「お雛様、とってもきれい!」
と興奮したようすで叫びました。
その瞬間、ひな壇が揺れました。
わたしはあわてて「降りて、やばい、崩れそう」と呼び返しました。

間一髪、ひな壇が崩れる前に、いとこは無事に戻ってきました。
危なかったー、と二人で顔を見合わせたとき、
「ご飯よー」といういとこのお母さんの声が聞こえました。
「今日のことは秘密だよ」
「今日のことは秘密ね」
二人で言い合って、部屋から駆け出そうとしたとき、
いとこの長い髪が三人官女と牛車にからんで
人形が転がり落ちてきました。
続いて、やっぱり揺れに弱くなっていた十三段から
人形がつぎつぎにダルマおとしのように、上から落ち、
てんでバラバラに床に転がりました。
雛壇・大崩壊。
「ヤバイ!」
わたしたちはあわてて人形を拾いますが、
中には首がもげた人形もあって、
とれた頭を身体に必死にねじこんで
とにかく不自然じゃないように段に戻しました。

どうにか全部の人形を元の位置に戻し終わったころ、
「こら! この部屋は入っちゃダメでしょ」
いとこのお母さんがやってきて、わたしたちを叱りました。
いとこはうなだれ、わたしも(いろんな意味で)「ごめんなさい」と
素直に謝りました。
「人形に触っていないでしょうね?」
「触ってません」
素早くわたしは返答しました。
パッと見た感じ、異常なしだし、大丈夫だろ。
「ならいいけど、さ、手を洗って、ご飯にしますよ」
お母さんに連れられて部屋から出ようとしたとき、
わたしはいとこが顔面蒼白なのに気づきました。
口をパクパクさせながら何かを指さしています。
雛壇の上のほう?
お雛様?
改めて見返して、わたしは叫びそうになりました。



……お雛様の身体に、牛車の牛の首が刺さってる!


この後のことはもう、語る必要はないでしょう。

この年以降、わたしはいとこの家に呼ばれなくなりました。
風の噂では、いとこは二度とお雛様を
見せてもらえなくなったとのことでした。
雛祭りと言うと、こんなことを思い出しますね。
でもさ、長い眼で見ればさ、
牛車の牛もお雛様もみんな同じセットの中の人形なんだしさ、
多少 首のすげ替えがあっても、たいしたことねえよな。
首が壇上を上下移動しただけじゃんね。
そんな怒ることないじゃんね。
子どもがしたことなんだしさ。
もっとも、わたしは、この事件以降、
貴重品は子どもの手が届く場所においてはいけません、と
思うようになりましたけどね。
やっぱ大人と子どもは違うわ。
そんなことをしみじみと思い出す、桃の節句なのでした。




以上、ホラ八割程度で。
ちなみに、いとこの家は元は大名家だった家で、
(貴族であるわたしのいとこなんだから、貴族だ)
雛飾りは代々伝わっている、すごいお宝みたいでした。
もちろん、もうその価値は半減しちゃったんだろーなー。
やっぱ子どもに貴重品を触らせちゃいけませんよ。
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