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2013年3月17日 (日)

男爵とバナナ売り。

だいぶ日差しが暖かくなってきましたね。
近所の梅の名所では梅祭り開催中です。
もう散り始めているのもあるけど、
まだまだ見て楽しむことができます。

ここんところ毎日 散歩中に
梅祭りを観にいってるわたし。
紅梅もいいけど、白梅の凛とした美しさが好きです。
溶けない雪のような凛冽さがお気に入り。
今日も眺めては美しさにため息を漏らして帰ろうとして、
「ほりょ?」
一軒の店に気づきました。

梅祭り会場には広場があって、
そこで焼きそばやたこ焼きなんかの出店が
ジャンクフードを売っているのですが、
その店だけ、ぽつんと離れて設置されていました。
何を売ってる店かな?
近づいていって、さらに「?」。
「バナナの叩き売り」って店のテントにでかでかと書いてある。
「バナナ」ってあのバナナ?
スーパーで売ってる?
いやまあ、たこ焼きとかお好み焼きもスーパーで
売ってるけど、
こういうお祭り会場のジャンクフードって
スーパーとは違う、盛り上がり感というか、楽しさ、
趣(おもむき)があって、いいじゃないですか。
でもさ、バナナはどこで売られていても
バナナだよね。趣とかないよね?
この店、商売としてなりたつの?

わたしがしげしげと店を凝視していると、
青いヒゲ顎の男性が店裏から登場し、
「おう、お客さんかい」と声をかけてきました。
客かといわれたら、Noだと思うけど、
でも、
「あの、このお店はなにか特別なバナナを
売っているんですか」
と一応 訊いてみました。
気なるからね。
そしたら男性は、「がっはっはっは」と豪快に笑って、
「あったりまえだろうよ、こちとら本家本元の
バナナの叩き売りよ。
そこらで売ってるのとは一味ちげえよ。
ま、一言でいや、バナナは普通だよ」
と言いました。
え、普通のバナナなの?
じゃあ、特別にココで買う意味ないじゃない?
スーパーでよくない?

わたしはもう不信感と猜疑心の塊になって、
「普通のバナナなんですか。
じゃあ特別じゃないんですね」と確認しました。
男性は眉間に皺を寄せて、
「なに言ってるんでえ、特別に決まってるじゃねえか。
こちとらバナナの叩き売りよ」
と意味不明なことを言います。
わたしはもう頭の中がこんがらがって、
「え、普通なの? 特別なの? どっちなんですか」
と最終確認しました。
男性は、「うるっせえ客だなあ。まあ客だからいいか」と
これまた意味不明なことを漏らし、
どこからか巨大なハリセンを用意し、
「そんじゃ始めっか」とバンバンと屋台をハリセンで叩きました。

腹から響く大声で男性は叫びます。
「さて、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい、
こちとら、バナナの叩き売りだよ!
世界一お得なバナナを今日は用意したよ!」
バンバンバン。ハリセンが動きます。
一房の小さめのバナナが台の上に置かれました。
男性は口上の後、物言いたげな顔でわたしを見つめます。
え、なんですか。
もしかして、わたしはリアクションを求められているんですか。
どうしたらいいの。
とりあえずわたしは「へー、お得なんだー」と
死んだ魚の目で言いました。
男性は得たり! と顔を輝かして、
「さてここに取り出したるバナナをご覧ください。
ほら、もうすっごくうまそう。
どんどん買いたくなってきた!」
また視線でリアクションを求められたので、
「あー、ホントにー」とわたしは「いつ帰ろうかな」と思いながら、
答えます。

「このバナナが今日はなんと、
特別価格の五千円、五千円で買えるよ、お客さん!」
「えええええっつっつ!」
わたしは本当に度肝を抜かれて驚愕しました。
どう見ても普通の、色・感じの小さめのバナナ。
たぶんスーパーで三百円くらいのバナナ。
それが五千円て。どういうことなんだよ。
「もちろん、この値段にはわけがある!」
バンバンバンバン。
「それはウチが由緒正しい叩き売りの店だってこと。
だからもう、持ってけ、泥棒!
今日、このバナナは七千円で売っちゃうよ!」
「はい?!」
バナナが値上がってる。
仰天しているわたしの反応をどう捉えたのか、
男性はどんどん話を進めます。
「え、七千円じゃ安いって?
仕方ない、もう出血大サービスだ、
お客さんには九千円で売ってやろうじゃないか!」
バンバンバン。

え、叩き売りってこういうことなの?
バンバンするたびに値段が上がっていくものなの?
オレは今まで叩き売りって
「安く売る」ことかと思ってたけど、間違ってたの?
驚愕と戸惑いを隠せないわたしの前で、
あのバナナの値段は
「九千円じゃ安い? なら一万でどうだ?!」
「一万じゃ駄目だ? もうお客さんには負けるね、
一万五千円でどうだ?」
誰かが操作してる株価みたいに上がっていきます。
最終的には、
「これが本当に最後の値段、五万五千五百円、これで決まりだ!」
バンバンバン。
とてつもない値段がバナナにつきました。

「さあ、お客さん!」
男性はハリセンを投げ捨てて右手を出します。
「ほら、早く早く」
「え、なにを?」
完璧に固まっているわたしがかろうじて問い返すと、
男性はにんまりと笑って、
「バナナの代金。五万五千五百円だ!」
と言いました。
ありえない。
わたしは「……そんなバナナいりません……」と
小さな声で返答しました。
「……だってそれ、普通のバナナでしょ」
「違う、違うだろおが、お客さん!
ウチはバナナの叩き売りだぜ、
普通のバナナを特別な方法で売る、
それを手にしたお客さんは特別な気分になる、
それがバナナの叩き売りだろおが、醍醐味だろうが」
えええええ?! 言っている日本語がわからない。
「十円のダイヤを誰が買うんだ? 誰が自慢できるんだ?
高いもの買って初めて自慢できるんだろうが。
このバナナを買うことで、お客さんは
誰も手に入れられない優越感をもてるんだ。
さ、ほら、早く早く。こんなチャンスは滅多にないぜ!」
「十円のダイヤは自慢にならないかもしれないけど、
五万のバナナは笑いものになるとおもいます」
わたしはボケ倒しているバナナ売りに、
かろうじてツッコミました。
バナナ売りは驚愕のあまり、
「じゃあ、じゃあ、あんたバナナを買わないっていうのか」と
言いました。
わたしはこっくりとうなずきました。
誰が買うか、そのバナナ。

男性は言います。
「五万が気に入らないなら、いったいいくらなら買うんだ」
わたしは答えます。
「まず、万はないです。千円の世界だと思います」
「千円? じゃあ九千九百九十九円か」
「いや、五千円はしないでしょう」
「待てよ、てことは四千九百九十九円か」
「三千円は高いなあ」
「なら二千――」
「やっぱ千円以上はありえないですね」
「なんてこった、つまり九百九十九円ってことか」
「それはないなー、五百円くらいじゃないですか」
「五百円? あんたオレを破産させるつもりか!
四百九十九円で売れっていうのか」
「二百円未満なら、検討してもいいですけどね」
「百九十九円でどうだ」
「お得感が出るにはもう一声だなー」
「じゃ、じゃあ百五十九円」
「買いましょう」
わたしは、結局、五万五千五百円のバナナを
百五十九円で買いました。
なんなの、この暴落ぶり。
バナナとお金を交換するとき、
男性は目の焦点が合っておらず、
呆然としていましたが、
「なんてこった、バナナを買い叩かれるなんて……」と漏らしたので、
わたしはすかさず、
「じゃあ、いりません。タダでもいりません」と言って、
百五十九円を財布にしまいました。
よくよく考えたら、別にバナナ必要じゃないしね。

こうして、わたしは梅祭り会場を後にしました。
最後に振り返ると、男性が店をたたみ始めていました。
うん、それがいいんじゃないかな。
たぶん、男性の脚本どおりにリアクションしてくれるお客さんは
いないと思うな。
男性のその後の人生に幸多かれ、と祈って、
わたしは百二十円の清涼飲料水を自販機で買って
乾いた喉を潤しました。
いやー、うまいね。これは百円以上の価値があるね。
やっぱ、物事には適正価格とお得感ってものがあるわ。
そんなことを学んだ、今日この頃でした。




以上、ホラ九割程度で。
もちろん、全国のバナナの叩き売り様は良心的な
商売をされていると思います。
今回 わたしが遭遇したのは特異な例に過ぎず、
これ以外のバナナの叩き売り様はとても素晴らしい
お仕事だと思います。
このブログはバナナの叩き売り様の品格やイメージを
損なうものではないことを、あくまでホラであることを、
みなさま、厳にご記憶いただければ幸いです。
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そういえば、このブログ、たわごとランキングで
二位とかになってて、わたしは仰天しました。
こんな僻地なブログが二位。
みなさまのおかげです。ありがとうございます。
さすがに一位にはならないと思いますが、
これからも精進を続けて、
元気いっぱい、病気いっぱい、ホラを吹いていきたいと思います。


さらに追伸:先週の「オレ予想」とはまったく違うブログ内容になりました。
人生ってこんなもん。

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