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2013年1月20日 (日)

男爵、不幸と面談する。(またか!)

今までの経緯:
 ある日、我が家にやってきた男・野口(仮)。
 中学・高校の同級生だと思っていた
 わたしは彼の名前が思い出せないまま、
 なにげなくやりすごそうとした。
 が、野口(仮)が放った
 「オレの人生談・不幸四連打」にノックアウトされそうになる。
 かろうじて持論である「血反吐吐いても笑え」で対応し、
 野口(仮)に飯を与えてなんとか無事に(?)帰しました。
 しかし、その夜、卒業アルバムを確認して絶叫。
 「あいつ、同級生じゃないよ!」
 謎の男・野口(仮)の正体とは。
 そしていま再び、チャレンジが始まる……!
 (前回の野口(仮)訪問時の記録は下記日記参照。
 男爵、不幸と人生相談する:
 http://blacksheep.txt-nifty.com/blog/2011/11/post-b1ad.html

「――また君か」
わたしは書斎に現れた貧相な男に顔をしかめました。
こいつ、卒アルにいなかったし、かなりな確率で見知らぬ人だ。
なんでオレの家に来るのかわからないけど、
はっきり言って、不審人物だし、
もういい、ざっくばらんにいこう。
「ごめん、君の名前、思い出せないんだけど、
なんだったっけ?
野口、じゃないよね?」
「……野口だよ」
「え、そうなの? どこで一緒だったっけ? 中学、高校じゃないよね?」
「覚えてないの?」
「そ、そうなんだ、ごめんね、思い出せなくて」
野口は悲しそうな顔をしました。……ちょっと悪かったかな。
野口は言いました。
「あんなに一緒だったのに、覚えてないのかい?」
See-Sewの『あんなに一緒だったのに』が脳裏で流れましたが、
不人情と言われようと、わからないものはわかりません。
思い出せないのは思い出せない。
「ごめん、わたしは年に一度くらい、意識が強制終了するんで、
飛んでる記憶があるのかもしれない。
どこで一緒だったか、教えてくれる?
そしたら、思い出せるかも」
野口は言いました。
「一緒だったのは、君が十五歳からだよ」
「へ?」
じゃあ、中学、高校の同級だよな?
でもアルバムにいない。転校していった友人もいないし、
もう、なにがなんだか、さっぱりわからない。
「でも、アルバムには野口君はいなかったよ」
「学校で一緒だったんじゃないよ。
プライベートで付き合っていたんだ」
野口の言葉にますます混乱するわたし。
当時の貧乏仲間は何人かいるけど、
野口は違う。
「なんのつながりかな? 囲碁サークルとか?」
「違うよ、君のプライベート――生活に密着してたんだ、オレは」
「生活に密着……?」
「もっと言うなら、オレたちは同居してた。
あのころはよかったなぁ……。
君はお金は持っていなくとも楽しい暮らしをしていて、
オレはソレを眺めているだけで幸せだった」
「?」
オーナーに誓って言いますが、
わたしは同棲経験はありません。異性も同性も。
「その話、本当にわたしかい?」
「もちろん。だって君、そのころ貧乏だっただろ」
「そりゃもう、一日三百円生活だったからね」
「素敵な暮らしだったよ。
君と別れてからはオレは不幸続きだ。
やっぱりまた君と暮らしたいなあ」
素敵な暮らし? 貧乏暮らしが?

まさか。
こいつ、まさか。
「おまえ、もしかして、貧乏神か?!」
わたしは絶叫しました。
そうでした、わたしには妖怪の友達がいるのでした。
つまり、それ系がごくごくあたりまえに見えるのです。
「いまごろわかったのかい」
野口は出された紅茶をおいしそうにすすりました。

「即刻、出て行ってくれないか。
そして二度とこないでくれ」
わたしは野口に懇願しました。
野口は「イヤだよ」と言って首を振りました。
「だってオレは君が好きなんだ。
大好きなんだよ。その貧乏に対する姿勢も、
人生に対する姿勢も」
「人生って、おまえ貧乏神だろ。
なんで貧乏神が人間のホラ吹きのところへ
人生相談に出てくるんだ?」
「だって君はなにを話しても解決してくれるから」
「そりゃまあなんとかするけど。
話をするだけでいいんならね」
「だからオレは決めたんだ。
もう一度、君とやり直そうって。
このどん底を君と共有しようって」
「冗談じゃねえ!」
どこの世界に貧乏神と苦労を共にしたい人間がいるのだ。
いや、絶対いない(反語)。
「おまえだって、一応、神様なんだろ。
もっとしゃっきりしろよ。他人をアテにすんな。
自分の足で歩けって、鋼●錬金●術師も言っていただろ」
「でももう限界なんだ。
自分の無力さに、オレは打ちのめされてる。
オレはなんて無力で無価値な存在なんだ……」
野口は椅子から滑り落ちてうずくまりました。
わたしは紅茶(お気に入りのアールグレイ)を一気飲みし、
覚悟を決めて、再度の人生相談に乗り出しました。

「今度は無力感に悩んでいるのか」
野口は顔を伏せたままうなずきます。
「……君に言われて、人生やり直そうとしたけど、
人間関係がうまくいかなくて……オレなんて、無力だし」
再就職先の人間関係で悩む貧乏神。
冷静に考えたら発狂しそうな状況ですが、
ここでグッとこらえるのがオトナというものです。
なにより、再就職がうまくいかないと、
こいつ(貧乏神)がわたしのところへ戻ってきます。
それは避けなくてはなりません。
「オレが思うに、君はまた勘違いをしているね」
わたしは撃破モードに入りつつ、断言しました。
「……勘違い?」
「そうだよ。前回は、この世には必ず成功する・
うまくいく法則があって、自分にはソレが見つからないって
嘆いていた。
でもオレは言ったよね。そんな法則ない、
自分で幸せを見つけるしかないって」
「うん……」
「同じような話になるけどね、君は今無力感に悩まされているらしいけど、
非力じゃない人間(神)なんていないんじゃないかな。
もっと突っ込んで言えば、
君は、無力と非力を勘違いしてるんじゃないかな」
「無力と非力?」
「そう、違いがわかるか?」
「あまりよくわからない。どちらも役に立たないとしか……」
「ちっ、がーうぅっツッツ!」
わたしは声を大にして言いました。

「いいかい、無力と言うのは『ゼロ』ということだ。
本当に何もない、世界に対して何の影響もないということだ。
そんな存在は存在しない。
存在していると言うだけで、世界には影響するんだよ。
だから君が悩んでいるのは、
無力じゃなくて、『非力』なんだ」
「非力ってのはどういうことなんだい?」
「非力はゼロじゃない。ただ与えられる影響が極小なんだ。
だから大きく見たら、ゼロに見えるかもしれない。
でもゼロじゃない。1か、0.5か0.05か、0.005か、
必ず、ちゃんと存在している。
一見、無力に見えるかもしれない。
けれどそれは力が足りないだけで、
ゼロじゃない。非力なだけなんだ」
「けど、非力でも、無力と同じで意味はないんじゃ」
「違うね」
わたしは再度断言しました。
「たとえば、君は貧乏神だから、1円の価値をよく知っているだろう?
1円なんて、普通 顧みられることもないし、
たいしたもんじゃないかもしれない。
けどレジで1円足りなかったとき、
なにかの災害で募金するとき、
1円はすごい力になる。集まれば誰かの人生を変えることもできる。
1円には可能性がある。
ゼロには可能性はない。
だから、非力な君にも、可能性と、そして自尊心だけはある。
君は何もなくしてないし、まったくゼロでもない。
ただ力が足りない、それだけだ」
「可能性がある……?」
「あるよ。君はまあ、貧乏神だから、
マイナス方向への可能性なのかもしれないけど、
可能性は持ってる。
もっと可能性をのばすべきだ。
もっと力をつけるべきだ。
そしたらいつか、なにかを見つけて得ることができるだろう」
わたしは紅茶を継ぎ足し、野口に差し出しました。
野口はそっとカップを受け取り、
「オレにも可能性がある……」とつぶやきました。

「もちろん、可能性は単なる可能性だから、
即効力はないよ。すぐになにかをできるわけじゃない。
でも、君は無力ではない。
以前、来たときにわたしは『ドブの中でも前のめり』、
『血反吐はいても笑え』って言ったよね。
それは自分の可能性を信じろってこと。
やみくもに盲信するんじゃないよ。
自分の内側を省みて、折れない芯を作れってこと。
譲れないものを持つんだ。
可能性があるんなら、それができる。
できる自分を信じろ」
「オレにも信じたり、できるんだろうか」
「できるさ」
わたしは野口の眉間のしわがちょっととれたことに
気づきました。
「まあ、君の再就職先がどんなところか知らないけど、
できるところまでチャレンジしてみればいい。
それでダメなら、またやり直すだけさ。
ドブの中でも前のめり、だよ」
「笑いながらかい?」
「もちろん。どんなに苦しくても、笑え。
それはわたしのポリシーだけど、
君には君のポリシーがあってもいいんじゃないか」
「……ありがとう」
野口はゆらりと立ち上がりました。

「なんだかやる気が出てきたよ。
オレにもまだ、できることがあるかもしれない」
「そう思えるなら、あるんじゃないか」
「もしもダメだったら、また来てもいいかい?」
わたしは笑顔でいいました。
「ダメ。二度と来るな」
「お茶だけ飲みに来たいんだ。
君と話してお茶を飲むと、なんだか元気が出るんだ」
「そういうことなら仕方ないね。
でも長居はしないでくれよ」
こっちのHPとMPが減るからな。

こうして、貧乏神・野口は我が家から出て行きました。
今回もどうにか丸め込んで
やる気を出させて追い出すことに成功しました。
まあ、その結果、どっかの誰かが貧乏神に
とりつかれてるんだろうけど、
その場合は、本人がどうにかすべきだよね。
少なくとも、わたしがどうこうできる問題じゃないわな。




以上、ホラ八割くらいで。
えっ、二割の真実はどこなのって、
それは秘密です。
ちょっとの秘密があったほうが人生楽しいよ。
人生が変わるほどの秘密はカンベンしてもらいたいけどね。
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優しくしてやってください。
彼、悪気はないし、いいやつだし、根は真面目なんで。
ああ、でも、うちには二度と来るなよ(笑顔)

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コメント

がんばれ、野口!
応援してるぞー(^0^)

面白いから、
また戻ってきてね。

jun様、こんにちは。
なんてことをおっしゃるんですか、
野口はもう戻ってこなくていいですよ!
めんどくさいし、
なによりヤツは貧乏神ですから。
でもまた来るんだろうなあ……。
わたしは貧乏だからなあ……。
もしまた来たらブログにアップ致します。
きっとまた悩み相談だと思いますが。
コメントありがとうございました!

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