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2013年1月27日 (日)

オレだよオレ、オレオレ!

本日のブログは、さきほどの電話での会話を再現いたします。
会話文のみとなりますが、ご了承ください。

リリリン。受話器をとるわたし。
「はい、黒羊男爵ですが」
「あ、男爵? オレだよ、オレ!」
「ん? あ、その声は、島田じゃん。久しぶりだね」
「そうオレ、島田。久しぶり、元気?」
「まったまたー。わたしが元気なわけないじゃん。もちろん病気!」
「えっ、病気?」
「うん、オレ、バリ病気!」
「大丈夫なの?」
「大丈夫なわけないだろー、はははは。そんなの今さらだよ、通常運転だよ」
「そ、そうだったね、いやごめん、久しぶりだったから」
「本当に久しぶりだよね。ほら、おととしの同窓会以来かな?」
「そうだねー、同窓会以来だね」
「島田はどうなの、元気なの?」
「いや、それがさ、ちょっと事故っちゃって」
「! 大変じゃないか、事故なんて。怪我は?」
「オレは怪我はなかったんだけど、相手がね……」
「相手? 対人事故だったのか」
「うん、ちょっとね。……でさ、話があるんだけど、いいかな」
「聞くけど、どうしたの」
「ちょっと弁護士さんに替わるね、待ってて」
「弁護士?」

「はい、お電話替わりました、弁護士の権藤(仮)です」
「あ、どうも、島田の友人の黒羊男爵です。
彼、事故ったそうですが、弁護士さんと関係するなんて、大丈夫なんですか」
「それがですね、相手の方が流産してしまいまして……」
「流産?! そりゃ大変じゃないですか!
相手は妊婦さんだったんですか」
「ええ、島田さんのバイクが妊婦さんの自転車をはねまして、
流産されたんです。
で、話がオオゴトになりましたので、
弁護士のわたしが間にはいっているわけです」
「島田は将来を嘱望されたおぼっちゃまじゃないですか。
まあ、ミュージシャン目指してバンド組んで親と喧嘩しましたけど。
でも、そんな事故があったら、彼の経歴に傷が」
「そうなのですよ、ミュージシャンとしても、
御曹司としても、彼はいま危機にたたされているわけです」
「大変なことになってますね」
「ですが、あなたなら、彼を救えるんです」
「え、わたしがですか。病人で非力なわたしがですか」
「はい、親友のあなたにしか頼れないと聞いています」
「けど、事故なんて、わたしにできることあるのかなあ」
「幸い、相手の方も話が大きくなるのは望んでいらっしゃらなくて
示談の方向で話が進んでいるんです。
うまく示談がまとまれば島田さんは何事もなく済みます」
「あ、そうなんですか」
「たださきほどあなたがおっしゃられたように、
島田さんはご両親と喧嘩されていて、
示談金を用意することができないんです。
たった百万円のために、彼の将来が棒にふられるところなんです」
「たった百万ですか! そりゃ、将来のほうが大事ですよ!」
「ええそうなんです。でもご両親は出してくださらない。
そこで、親友のあなたにぜひお願いしたいと、こういうわけで」

「お話はわかりました。そういうことなら仕方ないです。
もちろん、お力になります。
念のため、いくつかうかがってもいいですか」
「どうぞ」
「ええと、まず流産された妊婦さんは妊娠何ヶ月だったのですか。
わたしの記憶がたしかなら、
六ヶ月以上だと胎児に子どもとして人権が発生するので、
殺人となり、つまり刑事事件で、示談などできるわけがないのですが」
「不幸中の幸いと言ったらあれですが、
妊娠四ヶ月でした。ですので、示談の方向に」
「なるほど。いやまったく、お話はすべてごもっともです。
質問を続けてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「すみません、さきほどの言葉はわたしの記憶違いで、
妊娠三ヶ月から人権は発生します。
つまり刑事事件ですね、これは」
「え、いや、わたしも記憶違いしておりして、
本当は妊娠二ヶ月だったかな」
「あ、そうですか、それじゃあ示談できるのかな。
ただ、百万円という金額がひっかかりますね」
「なんででしょう」
「安すぎますよ。大切な生命の代償が百万って、
ちょっと愛情を疑っちゃいますね。
妊婦さんは望まれない未婚の母とかじゃないですよね」
「そ、それは、もちろん、新婚で、円満なご家庭の」
「変だなあ、それで百万はおかしいなあ」
「ちょっと待ってください。……ああ、すみません、
百万じゃありませんでした。三百万でした」
「あ、そうですか、それなら納得できますね。
質問を続けてもよろしいですか」
「どうぞ」
「三百万円で生命が買える、もとい、示談にできるってお話でしたが、
贈与税はどうなるんですか。当然、発生しますよね」
「ぞ、贈与税ですが」
「五十万以上の贈与には税金がかかります。
弁護士さんなら、もちろん、ご存知ですよね」
「ええ、贈与税もあります、もちろんです」
「三百万は贈与税込みですか、それとも別ですか」
「そこはちょっと……」
「あれでも変だなあ、そこがそもそもはっきりしてないと、
今度は脱税になって、やっぱり刑事事件になっちゃうんじゃないかなあ」
「ああいや、贈与税込みです、はい、贈与税込みで三百万です。
とにかく早く、今日中に三百万を」
「わかりました、最後の質問ですが、
わたしならすぐお金を用意できると島田が言ったんですか?」
「はい、あなたなら大丈夫だ、と」
「それは間違いないですか」
「間違いないです」
「残念ですね、もう三時回ってますから、
日本中の誰も、銀行の口座から大金を下ろすことができません。
ATMでは百万以上のお金を一日で下ろすことはできないんです。
弁護士さんはもちろんご存知でしたよね
島田にそこらへんのことを言ってあげないと。
彼、おぼっちゃまですから、常識ないですから」
「……ちょっと待ってください」
「はい、わかりました」

「もしもし、島田だけど」
「あ、島田? あれ、弁護士さんはどうしたの」
「いやなんか、弁護士さんが怒っちゃってる。
男爵、いったいなにを言ったんだよ。
とにかくお金を入金してくれないと、困るんだよ」
「それはおかしいねえ」
「なにが」
「いやまあ、全部っちゃ全部、おかしいんだけど。
まず君が交通事故を起こすのがおかしいんだよね」
「どうしてさ」
「だって君、免許持ってないし」
「そ、それは頑張って取ったんだよ」
「君、わたし以上に運動神経が切れてて、
自転車だって乗れないのに、バイクって。無理でしょ。
第一、ド近眼じゃん。免許なんて不可能だと思うけどなあ」
「いやなんとか取れたんだよ、バイク乗れるようになったんだよ」
「うーん、だとしたら、君、なんかしたんだね。
正規の方法で免許を取得したわけじゃないね」
「そ、そんなことないよ。とにかく三百万をすぐに」
「それもおかしいんだよなあ」
「なにが」
「さっきの弁護士さん。
原告である妊婦さんの妊娠月齢も把握してないし、
金額も三百万を百万だと間違えてるし、
ねえ、島田、もしかして君、弁護士さんに騙されてるんじゃないか」
「えっっっ」
「うん、そう思うな。君は世間知らずのおぼっちゃまだから、
変な弁護士さんにつかまっちゃったんだよ。
きっと妊婦さんは示談金がかかるなんて言ってないよ。
本当は流産なんかしてない。
君は騙されてるんだよ」
「そ、そんなことないよ、オレも聞いたから、
間違いなく示談金がいる、
流産をばらされたくなかったら払え、そう言っていたんだ」
「ああやっぱり君は騙されてるんだよ。
それは恐喝じゃないか。
きっと妊婦さんと弁護士さんがグルなんだ。
君からうまいこと三百万円を巻き上げようとしてるんだ。
これは立派な詐欺、もしくは恐喝事件だよ」
「だ、騙されてなんかいないよ、問題ないよ」
「まあ、大丈夫だよ、わたしがなんとかするから。
君も知っての通り、わたしも弁護士だからね」
「えっ、弁護士?!」
「あったりまえじゃないか。だって君とわたしは
法科大学院の同窓生なんだから。
君だって弁護士資格はとっただろ。
ミュージシャンになっちゃったけど」
「はあ?!」
「そこもおかしいんだよねー。
いやまあ、君にはでもお礼を言うべきかな?」
「な、なんなんだ」
「だってさ、免許を取れない君が
わざわざチャリの妊婦さんバイクではねて
示談金が必要で、弁護士さんが出てきてって、
おもしろすぎるでしょ。おかしすぎるでしょ。
ボロがでまくり。修行が足りない。
ははは、そもそも君、おぼっちゃまじゃないじゃん。
お父さんはミカン農家を経営してて、
お母さんは専業主婦。
それから君はミュージシャンじゃなくて引きこもりだし。
引きこもりがどうやってバイクで妊婦はねるんだっつの、
あははははははっ、はははっはは」
「くっそ、最初っから、なんでわかったんだよっ」
「最後にいいことを教えてあげよう。
君はおととしの夏に自殺したんだ。
同窓会には来なかった。
久しぶりに楽しいお電話をありがとう」

わたしはあの世からの電話をそっと切りました。
いやー、不思議なこともあるものですね。
まさか死んだやつからの電話がくるとはねえ。
それに、あの皮肉屋で愛想のない島田が、
いつの間にか茶目っ気たっぷりの電話をかけてくるようになってました。
弁護士役の男性まで雇って演出するようになってました。
ただ、騙そうというレベルがまだまだ、わたしには及ばないですね。
ウチはなんといっても、ホラ吹き男爵ですからね。
ホラを吹くのが家業ですから。
オレだよオレ! なんてつかみで電話をかけてるようじゃ、
まだまだですよ。


以上、ホラ八割五分程度で。
法律関係とかATMとかはデタラメです。
え、この電話は島田からの電話じゃないって?
はははははは、いいんですよ、島田からの電話ってことで。
そのほうが楽しいじゃないですか。
まあ、彼もちょっとは懲りたんじゃないですか。
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ああ最後にひとつ。
わたしには「島田」という友人はいません。はははははっ。

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