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2012年12月 2日 (日)

プロジェクト・プロポーズ。その5。投降兵

前回までのあらすじ:
 知り合いの知り合いという、つまり赤の他人、
 渡辺さん(仮)のプロポーズを
 プロデュースすることになったわたし。
 しかも渡辺さん(仮)はあらゆるセンスが壊滅状態の
 ファッション・テロリスト、
 かつ役立たず(プロポーズにおいて)だった……!
 この絶望的な状況をどうにかできるのか。
 独身主義の黒羊男爵の挑戦が始まる。

結論から入ると、難しいプロポーズは無理でした。
映画みたいな劇的で非日常的なプロポーズには
事前に詳細な情報が必要です。

しかし、聞き取りの結果、
渡辺さん(仮)は彼女さんに一目ぼれされ、
(このときは常に研究室で白衣姿だったので、
 彼の私服のセンスのヤバさを彼女さんは知らなかった)
(渡辺さん(仮)はセンスが残念ですが、真面目なイケメンです)
告白されて、生まれて初めて女性と付き合いました。
で、彼にとってはものすごく真剣なお付き合いなので、
結婚したいと思うようになったまではいいのですが、
渡辺さん(仮)は、彼女さんについて、
趣味や嗜好、欲しいものなど、ほとんど何も知りませんでした。

「いったいどういうことなんですか」
わたしは、プロジェクト・プロポーズのアジトと化した、
渋谷のマ●クのテーブルを拳骨で叩きます。
「彼女さんと毎日一緒にランチしてたら、
”あそこのレストランで食事したいな”とか、
”あのブランドが好きなんだ”とか、
会話の端で聞いてるもんじゃないですか」
「いえ、食堂とお弁当の話しか……」
「あなた、本当に結婚するつもりですか。
彼女についてほとんど何も知らないのに?」
「でも、大好きなんです! 彼女は優しくて、料理がうまくて」
「料理なんてもんはスキルですから、
やってれば誰だって、ある程度は上達します。
あと、料理は大人ならできて当然です。
食事を自分でどうにかするのは、生物として基本です。
どこの世界にシマウマを倒せないライオンがいますか」
「でも、かわいくて、よく笑ってくれて、彼女といると楽しくて」
「さっきの理由よりまともですね。
では質問を変えます。
彼女さんはどういうときに、どんな話題を振ると笑いますか」
「えっと」
渡辺さん(仮)はちょっと考えて、
彼女の笑いどころについて衝撃的な発言をしました。
わたしは思わず瞳孔が開いてしまいました。
「ソレ、いいですね!
なんで今まで言わなかったんですか?!
それで行きましょう!」
「え、でもぼくには、とてもできないかと」
「やるしかないんです。いいですか、
11月22日に彼女をデートに誘ってください」
「なんで11月22日なんですか」
「本当は誕生日とかクリスマスがいいんですが、
あなたはすぐにでもプロポーズしたいんですから、
少々こじつけですが、『いい夫婦の日』に決行しましょう」
「わかりました」
こうして、プロジェクト・プロポーズは本格開始しました。
わたしはその日のうちに池尻へ赴き、
最初の仕込みをしました。
その他 少々難しい仕込みもありましたが、
予算があったことと、ネットが役立って
どうにか11月22日に間に合うことができました。

11月22日。
渡辺さん(仮)と彼女さんのデートの日です。
本当はプロポーズの日ですが、
彼女さんは知らないので、普通のデートだと思ってました。
しかし。
「行き先は絶対に秘密にしてください」
「え、どうしてですか」
「サプライズです。
今回は三段のサプライズを考えてますが、
そのうちの一段目だからです」
「わかりました」
ということで、彼女は何も知らないまま、
池尻へやってきました。
わたしは物陰からふたりの様子を観察します。
へえ、けっこう美人だな。
わたしの指導の結果、渡辺さん(仮)の服装も
劇的に向上しているので、
お似合いの美男美女に見えます。
彼が先導して彼女の手を取って、池尻の町を歩きます。
目的地に到着して、彼女はちょっと驚いているようです。
よし、よし。

ふたりは池尻演●ホールへ入りました。
事前にお願いしておいた通り、
本日の演目は「金屏風の投降兵」となってます。
わたしも池尻●芸ホールへ入ります。
トイレ、といって渡辺さん(仮)が席を立ちます。
そうこうするうちに照明が落とされ、
舞台の高座にスポットライトが当てられました。
なかなか戻ってこない渡辺さん(仮)に、
彼女はちょっと不安げです。
きょろきょろとしてますが、そんな不安には関係なく、
一場の人々は大きな拍手とともに、
高座に着いた人物を迎えます。

それは、着物姿の渡辺さん(仮)でした。
そうです、彼女が笑うポイントは「落語」でした。
二段目のサプライズはココです。

渡辺さん(仮)は丁寧にお辞儀してから、
「ええ、世間にはファッション・テロリストってな
人たちがおりまして」と
話し始めました。
あるファッション・テロリストが全身カーキ色で
渋谷のエクセルシ●ールに現れたこと。
彼は重度のテロリストで、洋服はすべて
お母さんが選んだ洋品店センスだったこと。
下着はグンパン(グン●のブリーフ)だったこと。
つっこみの知人(つまりわたし)に罵倒されたこと。
身振りを入れて、熱心に語ります。
観客はみんな笑って笑いまくってます。
彼女さんも笑ってます。
たぶん、そのテロリストに心当たりがあるのでしょう。

「ところが、テロリストは真人間を目指すことにしたのです。
そうです、劇的な自分改造に着手しました。
それはなんでかってえと」
ここでスポットライトが彼女さんに当たりました。
「金屏風のお願いがあったからです」
渡辺さん(仮)は着物の袖から小さな箱を取り出します。
高座から飛び降りて
彼女にその箱を差し出しました。
「一生のお願いです。
テロリストは卒業します。武器はすべて捨てます。
君に完全投降します。
ぼくと、結婚してください」
ものすごい量の拍手と歓声がおきました。

一拍の間ののち、盛り上がった雰囲気に押されたように、
彼女さんは、小さくうなずきました。

うおおおっと、会場がどよめき、
万雷の拍手が沸き起こります。
三段目のサプライズ、成功です!
そうです、会場の人間は全員、サクラです。
彼らが渡辺さん(仮)の話に盛り上がり、
断れない雰囲気を作りました。

このあとのことは、もういいでしょう。

わたしはプロジェクトをやり遂げて、
池●演芸ホールを後にしました。
こうして、知人の画家から頼まれていた
渡辺さん(仮)のプロポーズは成功しました。
まあ、こんなこと、滅多にやらないけどな。

でも、彼が彼女の落語好きを知っていてよかった。
それだけでもよかった。
笑いどころと食べ物の好みが一緒だったら、
八十年くらいは一緒にいられるでしょう。
喧嘩もするだろうけど、
きっとこのプロポーズの話で
仲直りできるでしょう。

もっとも、わたしは相変わらず
独身主義者ですけどね。
まあ、キアヌ・リーブスか
アンジェリーナ・ジョリーが来たら
話は別ですけど。
あ、俺、キアヌとアンジェリーナの食べ物の好みも、
笑いどころも知らないわ。
こりゃ結婚できないわな、やっぱりね。
こうして、プロジェクト・プロポーズは完了しました。

長い話にお付き合いいただき、
ありがとうございました。
次回以降は、また通常運転のホラになると思います。
以上、ホラ七割程度で。




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