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2012年11月11日 (日)

プロジェクト・プロポーズ。その2。脱走兵

前回までのあらすじ。
 知り合いの知り合いのプロポーズを
 プロデュースすることになったわたし。
 だが、待ち合わせに現れた求婚者・渡辺さん(仮)は
 出現と同時に渋谷のエクセルシ●ールを
 恐怖と失笑の渦に叩き込んだ、
 恐るべきファッション・テロリストだった……!
 全身をカーキ色一色でトータルコーディート(?)した
 渡辺さん(仮)に、わたしがまずアドバイスしたことは。

「とりあえずですね、自覚を持ってください」
写メまで撮られてエクセルシオー●を逃げ出した
わたしは、渡辺さん(仮)と109に近いマ●クに入りました。
平日の地下一階だから、幸い、そんなに客は入っていませんでした。
「自覚ってなんですか」
渡辺さん(仮)は首を傾げます。
惜しい! 首から上は本当にハンサムなのに。
イケメンなのに。
首から下のカーキ色でもう台無しです。
「あなたはファッション・テロリスト、
常人のセンスを崩壊させる力を持った
精神的なテロリストです。
つまり、あなたのファッションセンスは、
一言で言えば、ヒドイです」
「えっ、そうなんですか。
たしかにおしゃれには疎いですけど、
ぼくは普通だと思ってました」
渡辺さん(仮)は愕然とします。
いいや、シャツもズボンも靴もバッグも
カーキ色一色で渋谷に現れるセンスはもう、
テロです。同席しているのが、本当につらい。

「普通じゃないんです。
疎いとかそういうレベルじゃないんです。
あなたはマリオ●ートで言えば、
完璧にコースアウトしているんです。
ボーリングで言えば、ガーターの帝王です。
あなたが着たいと思ったもの、
それは間違いです」
「……そうなんですか」
「そうなんです。
だから、恋人さんも機嫌が悪くなるんです。
一緒に外出してくれなくなったでしょ」
「はい。研究室では普通に話してくれますけど、
白衣を脱いだらもう、他人みたいな顔をします」
渡辺さん(仮)の目に涙が盛り上がりました。
「ぼく、もうどうしようもないんですか?
一生 このままで、彼女と結婚できないんですか?」
「だいじょうぶです」
わたしは力強く断言しました。
「ファッション・テロリストは治ります。
完治には時間がかかりますが、
とりあえず適当に普通レベルになるのは
簡単です」
「男爵さんみたいにおしゃれなひとには
簡単かもしれませんけど、
ぼくは本当におしゃれなんて考えたことが」
自嘲する青年に、わたしは切り札の爆弾発言を投げました。
「実はわたしも、ファッション・テロリストだったのです」

そうなのだ。
わたし自身がかつては重度のファッション・テロリストだった。
どのくらい深刻な病状だったかと言うと、
「当時のわたしには、服は
洗濯してあるものと、
してないものという区別しかありませんでした。
色あわせなんて考えたことないし、
TPOなんてまったく考慮してませんでした」
「信じられません。
だって男爵さんは画家さんに
あんなにセンスのいい衣装を作ってあげて」
「あなたに、わたしの大冒険の二位を話してあげます。
わたしは高校卒業後、紺色の学校ジャージ姿で
109の中をうろついたことがあります。
ちなみに靴は学校指定の革靴でした」
「えっ?! 109ってマルキューって言われてるところですか」
「そうです。若い女性のファッション発信地です」
わたしは重々しくうなずきました。
「おしゃれこそが正しい、おしゃれを追求する、
そんな女性たちが集うビルの中を、
わたしは「たまたま洗濯してあったから」という理由で
膝が破れたジャージ姿でエスカレーターに乗ったのです。
当時、109の中に大きな本屋があったので」
「周囲はどんな目で男爵さんを見たんですか」
「わかりません」
わたしは首を振りました。
「ファッション・テロリストの痛いところは、
自覚がないことです。
今から考えれば、きっと都市伝説になるくらいの衝撃が
109の中を走ったと思いますが、
当時はまったく気にしませんでした。
とにかく本を買わねばならなかったので」
「そんな過去があったんですか」
「そうです、全身カーキ色の今日のあなたが逃亡兵なら、
あのときのわたしは脱走兵とでも言いましょうか。
間違いなく、周囲にダメージを与えていました。
でも、治りました。ていうか、治しました」
「ど、どうやってですか。センスをどうやって磨いたんですか」
渡辺さん(仮)は身を乗り出します。 

「それは、センスを磨くことではありません」
わたしは断言しました。
「え」
渡辺さん(仮)は口をあけます。
わたしは説明しました。
「なぜなら、センスは
個人個人で定義が異なっているし、
説明も難しくて、一朝一夕で身につくものではありません。
あなたがある日ふりかえると、後ろについている。
それがセンスです。
重要なのは」
わたしは力強く、
「洋服の組み合わせに法則性を見出すことです」
と言い切りました。

「ほ、法則なんてあるんですか」
「あります。
この世にはセンスアップのための本がたくさんありますが、
そもそもファッション・テロリストは
そういう本に載ってるような服を持ってません。
だから最初は感性のセンスではなく、
頭で理論立てできる法則にしたがって服を選べばいいのです」
「どんな法則なんですか」
「それはですね……」
わたしは目を伏せてしばし考えました。
どれから伝えたら、一番わかりやすいかな?
まず、とりあえずアレか?

果たして、ファッション・テロリスト渡辺さん(仮)は
真人間になってプロポーズできるんでしょうか。
続く。




以上、ホラ七割くらいで。
109に学ジャーの幽霊が出るっていう
都市伝説があったら、
それはわたしです。
今回は身体張ってウケを取りに行ってます。
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