« 三つの約束の後日談。および新たなる冒険への旅立ち。 | トップページ | プロジェクト・プロポーズ。その2。脱走兵 »

2012年11月 3日 (土)

プロジェクト・プロポーズ。その1

こんばんは。
独身主義者なのに、他人のプロポーズを
プロデュースすることになった黒羊男爵です。
(なんでそんな羽目になったのかは、
下記をご参照ください。)
http://blacksheep.txt-nifty.com/blog/2012/10/post-5ebd.html

とりあえずですね、先週、
その「わたしのセンスが欲しい」と言う人と
待ち合わせをしました。
面識がないんですから、
いきなり自宅に招いたりしませんよ。
渋谷駅に近いエクセル●オールで
待ち合わせました。

そして。
「……まさか、ね」
カフェラテをすすりながら、わたしはつぶやきました。
いま入店してきた人物。
事前にメールしていたのですが、それにしたって、
「まさかね」
わたしはもう一度 自分に言い聞かせました。
このひとじゃないと思いたい。
じゃないと、これからの未来に絶望しそうです。
しかし、くだんの人物はズンズンわたしに近づいてきて、
「黒羊男爵さんですか?」
と訊いてきやがりました。
わたしは頭痛をこらえきれず、あきらかにしかめ面で
「あなたが渡辺さん(仮名)ですか」と確認しました。
渡辺さん(仮名)は元気よくうなずきました。
「はい、今日はどうぞよろしくお願いします!」
わたしは答えました。
「すみません、もう帰っていいですか?」

なぜ、初対面にもかかわらず、
わたしがこんなつっけんどんな対応をしたかと言いますと。
「……あなた、ファッション・テロリストですね」
そうです、入店してきてやってきた人物は
けっこう端正な顔立ちでハンサムで、高身長なんですが、
ですが。
カーキ色のチノパンにカーキ色のシャツを着て、
カーキ色の肩掛けバッグを斜めがけして、
カーキ色のバッシュをはいていました。
「ファッション・テロリストってなんですか」
エクセルシオー●で抹茶を頼んで、
渡辺さん(仮名)は首をかしげました。
わたしはこんなひとと同席する状況を呪いながら、逆に
「今日はなんで全身カーキ色なんですか?」
と尋ねました。
渡辺さん(仮名)は破顔して、
「もちろん、トータルコーディネートです。どうでしょうか」
と自信満々に言いました。
わたしは「落ち着け、落ち着け、こいつは天然物の
ファッション・テロリストなんだ、悪気はないんだ」と
自分に言い聞かせ、渡辺さん(仮名)を
「トータルコーディネートとは、
全身を一色に染めることではありません。
あなたはファッション・テロリスト、
ファッションを通じて、精神的なテロを行う痛いひとです」
と一刀両断しました。

渡辺さんは笑顔から一転して泣きそうな表情になりました。
「これ、ダメですか」
「ダメです」
「けっこう自信があったんですが。
今日は男爵さんに会うので、
いつも以上のぼくを見てもらおうと思って
頑張っておしゃれしたんですが」
「あなたが行っている行為はおしゃれではありません、
テロです。
その証拠に、わたしはさっきから周囲の視線が痛いです」
みんな、そんな目で俺を見るな。
ひそひそささやくな。
あと、こっそり指さすんじゃない。
「なにがダメなんですか。同じ色でバランスがいいと思うんですけど。
ぼくにはどこがいけないのか、ぜんぜんわからないんです」
渡辺さん(仮名)が言ったので、
わたしは説明しました。
「コーディネートというのは調和させるということです。
つまり複数の要素を、バランスよくとりいれるということです。
全身を一色で染めることではありません。
あなたにとって、おしゃれとはなんなんですか」
「わからないんです」
渡辺さん(仮名)は途方に暮れたようすで言いました。
「ぼくは大学で研究者をやってまして、
今までおしゃれとは縁のない生活をしてました。
白衣の下はチノパンとポロシャツだったのです。
この春に生まれてはじめて恋人ができて、
一緒に学校外を出歩くようになったんですが、
そしたら、恋人がぼくが一緒にいるのを嫌がるんです。
デートを断るようになりました。
プロポーズしたいと考えてるんですけど……
恋人はいつも機嫌が悪くてとても言い出せる雰囲気では」
「そりゃそうでしょうね」
わたしは深くうなずきました。
初対面のわたしですらこの場から逃げ出したいのに、
彼氏がいつもこうだったら、そりゃイヤだろ。

「そんなときに友達の結婚式があって、
男爵さんのご友人の画家さんに会ったんです。
同じテーブルの人たちがみんな
画家さんはさすがに色のセンスがいい、
きれいなドレスアップだ、って褒めてて
そうか、これがセンスっていうものなのかと思いました。
で、画家さんの衣装を作ったのは
男爵さんだと聞いて、
ぜひアドバイスをもらいたいなと思って」
「アドバイスをしてもいいですけど、
賭けてもいいですけど、
その日かぎりのセンスアップで終わりますよ。
仮にプロポーズの日だけうまくいっても、
次の日にいつもどおりのカーキ色のポロシャツチノパンだったら、
改めて断られると思いますね」
「カーキ色ってセンスが悪いんですか」
わたしはカフェラテを一気飲みしてから答えました。
「色の問題ではありません。
全身カーキ色だったら、普通、
どこの戦場から逃亡してきた兵士だ? と思いますよ」
「ぼくにはカーキ色は無理なんですか」
「いまは無理と言うより無謀です。
最初はまず」
わたしは言いかけて、席を立ちました。
ダメだ、もうこのエク●ルシオールにいられない。
写メ撮ってるひとまでいる。
頼むから、顔にはモザイクを入れておいてくれ。
「とりあえず移動しましょう」
店内中の視線を独占しながら、
わたしは渡辺さん(仮名)と店を出ました。
まだまだ、続きます。




以上、ホラ七割程度で。
センスって説明するのは難しいよね。
でもファッション・テロリストは実在します。
意外と自分自身がそうだったりするよ。
女子高生に写メ撮られていたら要注意です。
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

« 三つの約束の後日談。および新たなる冒険への旅立ち。 | トップページ | プロジェクト・プロポーズ。その2。脱走兵 »

貧乏・友の会」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/568051/56035016

この記事へのトラックバック一覧です: プロジェクト・プロポーズ。その1:

« 三つの約束の後日談。および新たなる冒険への旅立ち。 | トップページ | プロジェクト・プロポーズ。その2。脱走兵 »