« 2012年9月 | トップページ | 2012年11月 »

2012年10月

2012年10月28日 (日)

三つの約束の後日談。および新たなる冒険への旅立ち。

前回までのあらすじ:
 友人の画家が知人の結婚式に
 参列することになり、
 なぜか(「金がないから」「器用だから」)
 参列衣装を作る羽目になったわたし。
 徹夜だのなんやかんやありましたが、
 衣装は無事に(?)作成完了。
 画家は衣装を着て結婚式に行きました。

「で、今日はいったい何の用?」
わたしは電話口で冷え冷えとした口調で話します。
仕方ないだろ、こいつにはもう、ほんっと
迷惑かけられたんだから。
「ひどーい、今日はお礼の電話だったんだよ。
結婚式、ちゃんと行けたよ、ありがとう。
花嫁さんはとってもきれいだったよ」
画家は言いました。
「周囲から変な目で見られなかったか?
手作りってバレなかったか?」
わたしは危惧していたことを確認します。
なんつっても、ストールとバッグ、アクセサリーで
四千円台だったからな。
大丈夫だったかな。
「大丈夫だったよ、あ、そういえば」
「なに?」
わたしは嫌な予感を覚えて尋ねます。
画家は言いました。
「そのストール、新しく買ったんですか?
どこで買ったんですか? って聞かれた」
「……で、おまえはなんつったの?」
「東●本店のほうで買ったって答えた」
「え? えええぇえええっ?!」
おま、おまえ、●急本店様をなんと心得る。
天下の百貨店様だぞ?
渋谷の支配者だぞ?
それを
「なんてこと言うんだ、おまえは!」
「だって嘘じゃないよ。
男爵が材料の布地買った布地屋さんて
渋谷駅から見たら東急●店のほうでしょ」
「そりゃおおざっぱに言えば、
方角的にはそうだが」
「大丈夫、ダイジョーブ。
だって全部 嘘ってわけじゃないから」
「嘘じゃないけど、事実と違うだろーが」
「大丈夫だって。感心してたから」
「……ならいいけど」

画家の話は続きます。
「そんでね、その褒めてくれた人がね」
「うん?」
「きれいなストールとバッグですねって
言ってくれて、センスいいですねって言ってくれた」
「まあな、わたしが作ったものだからな。
センスがよくて当然だな」
わたしはあっさり東急本●の衝撃を流して
鼻を高くします。
その高くした鼻を、画家が
「で、今度、そのセンスのいいお店で
ぜひ買い物がしたいから紹介してって言われた」
ぼっきりと折りやがりました。

「はいいいぃいっ?! そんな店、この世にねえだろ!」
だってあれらは、わたしが布地から適当に作ったものなのです。
「でも、もう紹介するって言っちゃった」
「言っちゃった?! なんで、どうして言っちゃうんだよ」
「だって褒められて嬉しかったから」
「そうかもしれないけど、あとのことを考えろよ。
五秒先の未来を考えろよ。
店なんかないんだから、連れて行けるわけねーだろ」
「大丈夫、問題は店じゃなくて、センスだったから。
お店なくてもセンスがあればいいから」
「? どういうことだ?」
「あのね」

画家は言いました。
「その褒めてくれた人、恋人にプロポーズしたいんだって。
で、センスのいい服着て、
センスのいいプロポーズしたいんだって。
だから男爵、相談に乗ってあげてよ」

「なんで、どうして、そうなるの?!」
わたしは絶叫しました。画家は平然と答えます。
「いや、よくは知らないんだけどね、
そのひと、顔とスタイルはいいんだけど、
センスが悪いの。
で、そのままだったら、結婚しないって
恋人に言われたんだって。
わたしのストールとバッグ見て、
すっごい感心してこういうセンスのいいものを
着たらいいんじゃないかって思ったんだって。
だから男爵、相談に乗ってあげてよ」
「……ちょっとまって、そのひとはわたしの知り合いじゃないよね、
おまえの知り合いだよね」
「だから知り合いの知り合いだよ、他人じゃないよ」
「他人って言うんだよ、そういう関係を、世間では!
友達の友達がみな友達だったら、
世界はでっかいひとつの輪になって、
エヴァン●リオン的な人●補完計画の必要がなくなるわ!
委員会の人たちに泣いて謝れっ。
なんで独身主義のわたしが、会ったこともねえ
他人のプロポーズをプロデュースしなきゃなんねえんだよ」
「人助け、人助け」
「他人を助ける余裕があったら、自分を助けるわ!」
「情けはひとのためならずって言うよ。
男爵だって、いつか誰かに助けてもらうかもしれないんだよ」
「そ、そりゃそうかもしれないけど」
「いいじゃない、ちょっと会って、
服とかプロポーズの相談に乗ってあげるだけだよ。
別に結果まで責任持てって話じゃないから。
とにかくそのひと、どうしたらいいのかもうわかんなくて、
途方に暮れてたから、
本当は、誰かに話して頭の中を
整理したいだけなんじゃないかな。
話してあげてよ」

「はーーーー」
わたしは深く、深くため息をつきました。
忘れてました。
この貧乏仲間の画家は、トラブルメーカーでもあることを。
良かれと思ってしたことが、とてつもない厄介ごとを招く体質であることを。
路上で死んだ子犬をかわいそうだからと
アパートの庭に浅く埋めて(固い土を掘る力がなかった)、
庭の整備にやってきた植木屋さんたちに
絶叫をあげさせたこともありました。
手作りのお弁当の玉子焼きを
「おいしそうだね」と言って褒めてくれた人に全部あげて、
そのひとを食中毒にしたこともありました。
(全部あげたので、画家本人は食中毒にならなかった)
でも、仕方ないのです、
画家はいいやつなんです。
悪気はないんです。
友達であるわたしは、画家の長所も欠点もよく知ってました。
知った上で、長年 友達をやってます。
友達ってそういうもんじゃないの?

「――会ってやるよ」
わたしはもう投げやりに言いました。
まさかセンスがよいあまりに、
赤の他人のプロポーズにアドバイスすることになるとは
思わなかった。
「やったぁ、ありがとう!」
画家は元気よく礼を言いました。
「じゃ、明日そのひとから連絡が行くと思うから、
よろしくね」
「明日ァ?!」
「うん、きっと会ってくれると思ったから、
もうそのひとに男爵の連絡先も、
略歴も、
今回褒めてくれたものが実は
男爵の手作りだったことも話してあるから。
だからヨロシク」
「ヨロシクじゃねーよ!」
わたしは再度 絶叫しました。
「おまえはわたしをいったいなんだと」
「友達だよ♪ あ、電話代がかさむと家計に響くから、
この辺で切るね、
じゃあまた」
ブチン、ツーッツーッツー。
わたしはむなしく会話がきれた受話器を見つめました。




みんな、友達は、ちゃんと選んだほうがいいよ?



以上、ホラ七割程度で。
プロポーズって……。
なにをどうするの。
ていうか、どんなひとが来るのかな?
なにひとつ知らされていないんだけど。
こんなわけで、わたしはまた新たなる
ミッションに挑むわけです。
なんでどうしてこうなるの?
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

2012年10月21日 (日)

いいか、三つ約束がある。(下)

前回までのあらすじ:
 友人の画家が知人の結婚式に参列することに。
 なぜかなりゆきで(「器用だから」「金がないから」)
 画家の参列用衣装を作ることになったわたし。
 ま、衣装っていっても、ドレスはすでにあるけどね。
 うん、ドレスはあるよ。
 靴もアクセサリーもバッグもストールもないけどな!
 これらを全部俺が作るのか?!
 しかも作成期間が一週間ないってどういうことだ?!
 予算は四千円だと?! てめえ、資本主義なめてんじゃねえぞ!
 男爵の戦いっぷりをその目に焼きつけろ!

画家との交渉の結果、靴とアクセサリーは
わたしの守備範囲外になりましたが、
それにしたって、
「ドレスに合う・安っぽく見えない」
 ・ストール
 ・バッグ
を四千円台で作ってかなり厳しい。
それでも友情から作業を受けた男爵。
俺って本当にいいヤツだよな、
誰も言ってくれないから、
自分で言うけど!

とりあえず画家が着払いで送ってきたドレスを持って
布地屋へ行ったのが火曜日。
よりにもよってこんな色のドレスにしやがって。
(写真参照)
Dr

色あわせが難しいブルーグレーじゃねえか!
しかも刺繍入り。
どんな布なら不自然じゃないストールが
作れるのだろうか。
布地屋さんのおじさんと、ああでもない、
こうでもないと話すこと三十分。
「同系色の濃い色か薄い色で作ろう」と決まって、
布購入。
この時点でどんなストールにしたらよいのか、
ビジョンはあり、バッグの材料も買い、
その他、材料を一式揃えて帰宅。

ここからが地獄でした。
まず、わたしは物を作るときに
だいたいビジョンはあるので、
布をビジョンに合わせて裁断。
バッグから作り始めました。

しかしビジョンはあるが、型紙はない
(作る時間も余裕もない)ので、
フリーハンドでの裁断。
それからミシンで適当にまっすぐに縫う。
いやまっすぐが難しくて、
適当に斜めに縫う。
縫い上げた布を裏返して取っ手と合体。
それからまた適当にありあわせの布地で
裏地を作る。
型紙がないので、また適当に裁断。
適当に斜めに縫う。
裏地が縫いあがったら、バッグ本体と合体。
バッグ作るのがこの手順でよいのか知りませんが、
とりあえず、なんとかできた。
--って、簡単に書いてますが、
ここで水曜日は終了。午前三時でした。

明けて木曜日。ストール作成に着手しました。
またまたビジョンにあわせて適当に裁断。
縫う。ひたすら縫う。
女物のストールなんて作ったことないので、
「三メートルあれば足りるだろ」
「とりあえず身体に巻ければいいんだろ」という
アバウトな感覚で縫い上げます。
ここでわたしのビジョン+凝り性が発動。
さらに自分の首を絞めることに。
結局、徹夜で金曜日の朝を迎えました。

金曜日の夕方、画家がやってきました。
「どう、できた?」
「できたじゃねえよ、作ったよ」
わたしは目をしょぼしょぼさせながら
半分キレぎみで言いました。
画家は言います。
「きゃあ、おばあさんが怖い」
「怖いじゃねーよ、おまえのせいだよ。
おまえなあ、シンデレラの魔法使いの
おばあさんは何の苦労もなく、
シャランラ♪ ってしたと思ってるだろ?
違ぇよ、シンデレラが踊るために
おばあさんはとてつもねえ苦労をしたんだよ。
ガラスの靴作るために、まずガラス鉱石の採掘へ行ったの。
それから暑い作業場で一生懸命、ガラス吹いて靴作ったんだよ。
そっからドレスだの、馬車だの他のモノ作るのに瀕死になって、
だからタイムリミットがあったんだよ。
魔法ってのはそういうもんなの。
魔法使いのおばあさんでも、
ホラ吹きでも、
「魔法」にはものっすごい労力を使うもんなの。
わかった? わかったら、俺をあがめてひれふせ」
わたしは画家に作成物を指さして示しました。

下記がドレスとあわせた証拠写真です。
Com

まずストールとバッグはドレスと同系色の
淡い色の布地をチョイス。
それから黒い靴に合わせても不自然じゃないように、
ストールにもバッグにも黒布を入れて調整。
バッグと靴は合っているべきなので、
「靴に合うシューズバンドも用意しといた。
グレイと黒のやつな」
わたしは画家の用意した靴にバンドを合わせました。

「すっげええ、すっごい、
ストールにちゃんとヒダヒダがついてる!
バッグもおしゃれな感じ。
男爵、この布で作った薔薇はなんなの?」
画家が驚嘆します。
「これはストールクリップ。
長い布をただ巻いてるだけじゃ、ヒネリがねえだろ。
ストールと同系色の布探して
俺が巻きバラをつくって、クリップにくっつけた。
ストールを巻いていない、結婚式の時には
首元にとめるとアクセントになる」
わたしはあくびしながら答えました。
「バッグは本来、ドレスに合わせて
刺繍を入れようかと思ったが、
時間も精神的な余裕もないので、
刺繍の代わりにひだを寄せてゴージャス感を出した。
これなら多少形がいびつでも目立たないしな。
素人にはお勧めの形だ。
ま、全部装備すると、こんな感じだ」
Ime

それから、と言ってわたしは次のブツを出しました。
Ac

「おまえ、アクセサリーがねえとか言ってただろ。
一応、手持ちの黒でなんとかするって決めてたけど、
布地屋行ったら、素材売ってたから、
チョーカーとイヤリングとブレスレット作っといた。
こっちのほうがドレスに合うなら、これ使え」
「えええええっ! これも男爵が作ったの?」
「ああ。ハンズ行ったら三連チェーンを留める用の金具がなくて、
取り寄せになるって言われたから、
めんどくさいから、素材用の銀のワイヤーを
ペンチで曲げて俺が適当に作った。
使えるようなら使えば。
もうちょい予算があれば天然石使えてよかったんだが」
「すっごい、すごいよ、男爵!
うわああ、ここまですごいとは思わなかった」
「褒め称えろ、ひれ伏せ。俺をあがめろ。
だが、惚れるな。
おまえとは一生 友達だ」
「うん、大丈夫! 男爵のこと、すごいと思うけど、
ぜんっぜんタイプじゃないから!」
「……おまえ、本当に俺に感心してるの?」
「いやー、すごいよ。うん、すごいわ。
で」
画家は不意に目を光らせました。
「いったい、いくらかかったの?」

「値段? ああ、メモっといた」
わたしはメモを片手に報告します。

・バッグ、ストール
 布地・裏地・フリンジ・取っ手・底用の芯・糸 で
 合計¥2,516

・ストールクリップ
 百均で買った素材 で
 合計¥315

・シューズバンド
 同じく 百均で買った素材 で
 合計¥210

・アクセサリー
 素材、チェーン他 で
 合計¥1,398

「トータルで ¥4,439 だな。
あ、あとご祝儀用の袋とふくさも
百均で買っといた。
それいれても ¥4,649 だ。
即金で払え」
「ありがとう! じゃあこれで」
画家は小銭をじゃらじゃらよこしました。
「こういうこともあろうかと
小銭をコツコツ貯めておいたんだー。
よかったー、これで結婚式へ行ける」

わたしは最後に最終確認しました。
「おまえ、俺の作ったもんで結婚式行っちゃって大丈夫なの?
三つの約束はちゃんと守れよ」
三つの約束とは、受注時に魔法の代償として約束した
「(細かいことは)気にしない」「不平を言わない」「文句は言わない」です。
「いやだって、これ手作りだってわかんないよ」
画家はにこにこと答えました。わたしは言います。
「そうならいいけど」
「だいたい、つきつめればどんな商品も
手作りでしょ。作ってるのがプロかアマかの違いでさ。
男爵はさ、デザイナーとか服飾系はアマかもしれないけど、
やっぱ、ホラ吹くのはプロだね。
はったりがハンパないわー。器用だよね。
ありがとう、おばあさん。
シンデレラ、とっても嬉しいわ」
「だから、おばあさんじゃねえ!」
わたしは突っ込んで、
「いいか、もう魔法は当分の間、使わないから。
次に誰かが死んでも、ちゃんと自分でどうにか衣装を
工面して葬式行くんだぞ」
「わかった。じゃあまた相談するね! おばあさん!」
「相談するなって言ってるだろ!
あとだから、俺は魔法使いのおばあさんじゃないから。
ホラ吹きだから」
わたしは荷物を抱えた画家を屋敷から追い出して、
ハアと深いため息をつきました。
眠い。
寝よう。

こんな感じで、金曜日夜から土曜日一日、
疲れきって死んだように横になってました。
わたしは体力がないんだよね。
いかがでしょうか、シャランラ♪ の魔法には
とてつもなく労力が必要だとお分かりいただけましたでしょうか。
現実を変える魔法ってさ、実は地道で大変なもんなんだよ。
純粋なフィクションでできてるホラのほうがいいね。




以上、ホラ五割程度で。
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

2012年10月14日 (日)

いいか、三つ約束がある。(上)

十月です、結婚式の季節ですね。
え、前回もこんな感じの始まり方だったって?
気のせいですよ(真顔)。

とにかくですね、二週続いてですが、
結婚式の話です。
これは、わたしが招かれた話ではなく、
わたしの友人の(自称)画家(女性)が知人に招かれた話です。
そうなんですよ、
この世で結婚式へ行くのは
なにもわたしだけじゃありませんからね。
ところが、この画家の知人の結婚式に
なぜかわたしも関与することに。
なにがどうしてこうなった。
とにかく、三つの約束を守ってください。
いいか、話はそれからだ。

そもそもの大前提として、
画家はわたしの貧乏仲間です。
ええと、わたしには病人仲間や
中学からの親友や
妖怪など、けっこう友達がいますが
今回の話題の結婚式に招かれたのは、
わたしが極貧生活を送っていたころ
知り合った貧乏仲間です。
その貧乏仲間は画家志望で、家から勘当されて
貧乏しながら絵を描いていました。
ふたりで「金はなくとも楽しい生活」と銘打って、
七夕だの、手作りギョーザの会だのやっていました。

いまでも画家は絵を描いています。
相変わらず貧乏です。
そんな画家が結婚式に招かれることに。
当然、祝福したい気持ちはあり、
喜んで出席することになりました。が。

「男爵って、手先が器用だったよね」
今朝、画家から妙な切り出しの電話をもらいました。
「前にパン作ったり、棚作ったり、カーテン作ったりしてたよね」
「器用っていうか、まあ、なんでも作るけど」
わたしは答えました。
ホラ吹きというメンタリティ上、
生活能力ゼロに見えますが、
わたしは実はサバイバルには強いのです。
「頼みがあるんだけど」
画家は言いました。
「わたしに(可能な)頼みなら、聞くけど」
ちょっと嫌な予感を覚えつつ、わたしは言いました。
画家は「よかったー」と言って、それから、
「一週間以内に、ストールと靴とバッグを作って。
結婚式に着ていくから。
ご協力、本当にありがとう」
と、「やるよ」とも言っていないのに、
勝手に「ありがとう」まで言い切って
既成事実を作りやがりました。

わたしは思わず訊きかえしました。
「は? ストールってあのドレスとかにまとう長い布?」
「そう、それそれ。あと靴とバッグ」
「靴? 靴なんか作ったことないよ。
スリッパならあるけど。
ていうか、なんでわたしが作ることになるの?
持ってないの?」
「うん」
画家は肯定し、
「わたし貧乏でしょ。でもあんまり貧相な格好で
結婚式に行くのは失礼でしょ。
だから作って」
と意味不明なことを言いました。

「待て待て待て」
わたしはストップを入れました。
「脈絡が、脈絡がわからない。
貧乏だということは知っている、
結婚式に招かれたということも今 知った。
けど、そこでどうしてわたしが」
「だって男爵は器用だから。
安っぽくなくうまいこと作るじゃない」
「いや、褒めてもらって嬉しいけど、
でもなんで」
「友達でしょ」
「……そりゃそうだけど」
「困ってるんだよ、お金なくてさ。
ドレス自体はどうにか工面したんだけど、
ストールとか、バッグとか靴とかなくて。
あ、あとアクセサリーもない」
「ドレス以外なにもねえじゃねえか!」
「そうとも言う」
「それをどうにかしろって言うのか!
わたしはシンデレラの魔法使いのおばあさんか?!」
「頼むよ、おばあさん」
「いや違うから、魔法使いじゃないから。
おばあさんでもないから。
百歩 譲って君の依頼を受けたとして、
期限はいつだって?」
「来週の土曜日が結婚式」
「はい? 一週間ありませんけど?!」
「大丈夫、なんとかなるよ」
「おまえが言うな!
あーもうっ、どうしたらいいんだ!」
わたしは頭をかきむしりました。

画家が本当に貧乏で貧乏で苦労していることは
よく知っています。
だから、応援してやりたい。
しかし、
「ちなみに予算はいくらなの?」
「四千円くらいかな。五千円いったら厳しいなあ」
「四千円でストールとバッグと靴とアクセサリー?!
ムチャ振りにもほどがあるよ?!」
いくら自作するといっても、お金はかかります。
「だってお金ないし。ご祝儀だけでもう赤字だし」
「どーしよーかな」
わたしは悩んで、それから決断しました。
「わかった。じゃあ、ストールと靴とバッグは
俺がなんとかしてあげましょう。
アクセサリーは手持ちのものを組み合わせて
使いまわしなさい。
それでなんとかなる?」
「でもドレスはグレーでアクセサリーは黒オンリーなんだけど。
ちょっと合わないよ」
「なんとかします。ちなみに今もっている靴の色は?」
「黒しかない。黒ならパンプス持ってる」
「うん、じゃあ、靴はそれでいこう。
グレーのドレスに合うように、工夫します。
本当にもう、仕方ねえなあ」
「恩に着るよ!」
「恩なんかいいから、三つ約束しろ」
わたしは深く息を吸い込んでから、言い渡しました。

ひとつ、男爵は大雑把な性格なので、
 型紙はつくらない。
 作ったものの輪郭が直線ではない場合がある。
 気にしないこと。
ふたつ、もう時間も予算もないので、
 作ったものの始末(縫い代の折り返しやまつり縫いなど)はしない。
 不平は言わないこと。
みっつ、できあがったものがガッカリな品質でも
 文句は言わないこと。
 わたしはプロじゃないし、洋裁を学んだこともないんだから、
 クオリティは保証しない。

以上、三つの約束が守れるんなら、
「ホラ吹きが魔法で、シャランラ♪ ってしてやるよ」
わたしが言い渡すと、画家は
「やった! ありがとう、おばあさん! シンデレラ嬉しいわ」
と言ったので、わたしは、
「だからおばあさんじゃねえっ」と突っ込み、、
「なんでこんなことになっちまったんだ」
とため息をつきました。

てなわけで、わたしは今とても忙しいのです。
取り急ぎドレスを着払いで送ってもらい、
色味を確認して布地屋へ行かねばなりません。
ミシン出さないと。
ていうか、ストールなんて作ったことない。
どれくらいの長さが適正かも知らないけどな。
はてさて、こんな調子で無事に
画家はシャランラ♪ してもらい、
結婚式に行けるのでしょーか。
胃が痛いぜ。




以上、ホラ五割程度で。
器用って言っても限度があるよね。
マジで三つの約束を守ってくれないと困る。
四千円かー。予算厳しいなあ。
事の顛末はまた来週。
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

2012年10月 8日 (月)

結婚式って思いがけない人物に遭遇するよね。(下)

前回のあらすじ:
 結婚したいけどできない、
 肉食系地味女子佐藤さん(仮名)。
 友人の結婚式がトラウマになりつつある彼女に向かって、
 披露宴の場でなにげなくわたしが口にした、
 「もうちょっと目立てばいいんじゃないの」という一言が、
 彼女の逆鱗をささくれのように剥いてしまった。
 さあ、どうする、どうなる、黒羊男爵!

「だいたい男爵君はさあ」
佐藤さん(仮名)はワインをビール用のジョッキに
注ぎながら言いました。
「いっつも楽しそうでさあ、
苦労してなさそうでさあ、
そんなひとにあたしの辛さがわかるわけないよね。
簡単に目立てるんなら、とっくに目立ってるわ」
「いやでも、ホラ、わたしにはわたしなりの
苦労があってですね」
彼女の迫力に圧されて、なぜか敬語になるわたし。
「目立てばいいとか、アピールが足りないとか、
具体的にどうすればいいのかってところが、
すっぽ抜けてるじゃない。
どうしたら、あたしは結婚できるのよ?!」
「もっと異性の注意をひけばいいんじゃないですか」
「どうやって」
「たとえば、そうだな、うーん、えっと」
苦悩するわたし。だって男性へのアピールなんて
考えたことないし。
ジャ●プのマンガじゃどうなってたかな。
たとえばTo●ove●とか。

「あ、そうだ、ノーブラで歩いてみたら?
これは男性が二度見すると思う。
すごいアピールになると思うよ。
基本的に脱げば脱ぐほど、アピールは強いと思うけど」
「二度見するかもしれないけど、近寄ってこないでしょ!
ていうか、警察が来ちゃうでしょ」
「警官と知り合いになるのもいいんじゃないでしょうか。
警官て言えば、公務員だよ」
「どこの世界に逮捕する女と結婚する警官がいるのよ?!」
「いや、可能性はゼロではないよ。
それを言い出したら、すべての出会いに意味がなくなるよ。
なにがきっかけで結婚するかは人それぞれだし。
責任感からの結婚ってのもあるみたいだし」
「あたしは恋愛結婚したいのよっ」
「えっ」
わたしはぎょっとして佐藤さん(仮名)を見直しました。
「結婚できれば、なんでもいいんじゃないの」
「そんなわけないでしょ。
だって友達だって式には呼ぶのよ、
熱い恋愛結婚で、自慢できる相手で、
同性が嫉妬するような結婚じゃなきゃ意味がないでしょ」
「え、だって恋愛結婚で、
自慢できる相手と結婚って、相当、ハードルが高い……。
第一、自慢できる相手を結婚するためには、
そのひとに選んでもらえるように、
自分自身のスペックも相応に高くないと」
「あたしのどこが不満だってのよ?」
だん、とワイン入りビールジョッキがテーブルに
叩きつけられました。

「えっと」
わたしはつばを飲み込んでから、
喪服と見まごう地味な黒ワンピース姿で
化粧っ気の薄い
(いや、化粧してるのかもしれないけどあんまり感じない)
存在感のない彼女に言いました。
「”不満”ていうところはないと思うよ、
強いて言えば、全部、”失格”だと思うけど」
「失格ってどういうこと?!」
「だってさあ、
他人の幸福を素直に祝福できないほど、心狭くて、
相手にばっかり高いスペック求めるくせに
自分は努力しないで、
そんな自分だけに都合のいい恋愛なんて、
恋愛じゃないよ。結婚でもないよ。
ただ相手を一生、利用しようとしてるだけでしょ」
わたしは言いました。
ずばり言っちまいました。

佐藤さん(仮名)の顔色が
赤くなり、青くなり、また赤くなり、
白くなりました。
口を開いて何かを言いかけて、
それから、
バタン、と倒れてしまいました。

ヤベえ!
わたしの親友・兄貴の結婚式が台無しになる。
わたしはあわてて佐藤さん(仮名)を
肩に担ぎ、
「ちょっと気分が悪いみたいなんで、
休ませてきますね」と言って、
彼女を引きずって披露宴会場を後にしました。
ホテルの人が駆け寄ってきたので、
「すみません、救急車呼んでもらえますか。
あと拘束衣も用意したほうがいいかも。
いまはアルコールが効いて寝てますが、
大変危険な状態です。
目覚めると暴れると思います」
と説明しました。
ホテルの人は驚いたようすで
「わかりました、救急車を呼びましょう。
念のため、お客様のお名前とご連絡先を
うかがってもよろしいですか」
と言ったので、わたしは
「すみません、たまたまテーブルが近かっただけの
赤の他人なんです。
この女性の名前も知りません。
後はよろしくお願いします」
と言って、佐藤さん(仮名)をホテルマンに押しつけると、
その足で披露宴会場のあるホテルから出ました。
ごめんね、兄貴、最後まで披露宴に
列席できなくて、本当にごめんね。
でも、バナナワニ級の超危険人物を披露宴から
排除したから、それで許して。

てなわけで、わたしは足早に帰宅し、
ブログに一部始終をUPしてるというわけです。
あれから佐藤さん(仮名)がどうなったかは
わかりません。
ですが、もうわたしは同窓会には行きません。
万一出会ってしまったら、
血の雨が降ると思うからです。主にわたしの。




以上、ホラ八割程度で。
「結婚したい」って願望が先立ってあせるのは
仕方ないと思う。それはわかる。
けど、相手にばっかり高スペック求めたり、
熱い恋愛結婚じゃなきゃ自慢できないと思ったりするのって、
なんか違くない?
わたしだったら、そういう女性には惹かれないですね。
なんて言うのかな、わたしのたわごとに笑ってくれるような、
笑顔がかわいい女性のほうがいいです。
もしくは、女性じゃなくてもいいです。
気があって一生一緒に居て楽しければ、
同性でも異性でも、いいんじゃないかな。
最低限の経済力は必要だけど、
派手な結婚式なんかいらないよ。
……って思ったんだけど、みんなはどうかな?
わたしは少数派なのかなあ。
でもまあ、独身主義なんで、少数派でもかまいませんけどね。
ブログランキング参加中にて、
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

2012年10月 6日 (土)

結婚式って思いがけない人物に遭遇するよね。(上)

最近、PCの不調ぶりに拍車がかかり、
使用者、PCともに病気がちな黒羊男爵です、
どうも。

秋ッスね。
十月と言えばハロウィンも楽しみだけど、
結婚式のシーズンでもあるよね。
てなわけで、また結婚式に呼ばれて
参加してきました。
久しぶりに会った同級生なんかもいたりして、
意外な発見、心外な台詞、許容外のオチになりました。

そもそもわたしは帰国子女でして、
今回、わたしを結婚式に呼んでくれたのは
高校の同級生(女)です。
世間的には女性が男性を呼ぶのは珍しいらしいけど、
でもいいよね、仲がよかったからね。

いや、兄貴(新婦のあだ名)は本当に漢らしい女性で、
竹を鉈(ナタ)で真っ二つに割ったような性格で
そこらの男性よりも、きっぱりはっきりくっきりしてます。
そんな彼女も恋をして無事にゴールイン、
わたしはこの目で新郎が男であることを
確認して安心しました。
よかった、相手が女性じゃなくて。
いや、女性同士でも祝福したけど、
兄貴は将来 子どもが欲しいって言ってたから。
いや、養子でもいいんだけど、
出産てのも、えがたい経験らしいからね。
うん、まあ、とにかくめでたい。
わたしは上機嫌でテーブルに
列席したメンバー(かつての同級生)を
見渡しました。

すると。
「誰だっけ?」と疑念を抱く、
ものっすごく地味な、冴えない、
「その黒のワンピースは喪服か?」という女性がひとり。
おかしいな、このテーブルの人間は
全員、高校の同級生のはずなんだが、
高校時代の面影がない。
「ごめん、下の名前なんだっけ?
きれいになっちゃって見違えちゃってさ、アハハ」
場の雰囲気で盛り上がっていたこともあり、
わたしは直球で女性に問いかけました。
女性は伏目がちに答えました。
「佐藤良子(仮名)だよ」
「あ、佐藤さん(仮名)? 懐かしいなあ、
いやー、ホントにキレイなったねえ」
「高校時代のあたしってそんなに不細工だったの?」
しまった、フォローしたつもりが地雷だった。
「そんなわけないじゃん。
いまの美貌だって土台があってのことでしょ。
単純にわたしが見違えただけだよ。
ホラ、卒業以来じゃん、会ったの」
「同窓会で何度か会ってるけど」
しまった、地雷じゃなかった、地雷原だった。
「あ、ああ、そうだったね。
会うたびにキレイになってるから、
わからなかったんだよ。
女性は変わるからね」
「あたし、高校のころとぜんぜん変わってないけど」
しまった、地雷原じゃなかった、
地雷原プラス手榴弾の雨だった。
防空壕はどこだ。

佐藤さん(仮名)はぼそぼそと続けます。
「いいよね、男爵君はいっつも楽しそうで」
「え、別にそんなことないよ。
今日は結婚式でしょ、
おめでたい席なんだから、自分からテンションあげていかないと」
「あたし、あげられるテンションなんかないもん。
女友達はみんな結婚しちゃうし。
兄貴が最後の独身女性仲間だったのに、
あたしを残して結婚しちゃって。
今日のブーケトスでもブーケもらったけど、
もうブーケは七つ目だよ。ブーケなんかいらないよ
あたしが欲しいのは新郎だよ」
なんだこれ、ヤバイ、地雷なんかじゃない、
正真正銘、暗黒(ダークネス)だ。
なんかよくわかんないけど、
フロド(ホビットの)が戦ったやつと
同じ匂いがする暗黒だ。
邪悪でないだけマシだけど、
引きずりこまれる。

「あたしも、結婚したいな」
佐藤さん(仮名)は
ぼそっと回避不能な本音を投げてきました。
「ええと、したかったら、したらいいんじゃないの?
ツ●ァイとか、そういう、
結婚したいひとがいる場所へ行けばいいんじゃないかな。
わたしは独身貴族だから、永遠に結婚はしないけどね、
アハハ」
わたしの背中に冷や汗が流れます。
暗黒は続けます。
「もうとっくに相談所には登録してるわ。五箇所。
でも、誰もあたしに声をかけない。
カウンセラーにも忘れられるし」
忘れられるってのはどういうことだ。
でもたしかに佐藤さん(仮名)は
ものっすごく影が薄いから、
放置してしまうかもしれない。
「もうちょっと目立てばいいんじゃないの。
そしたら、佐藤さん(仮名)のいいところが
異性にアピールできるんじゃないかな」

不用意なこの発言から、
「(清らな身を貫き)将来の夢は妖精」であるわたしと
結婚したいけどできない・肉食系地味女子佐藤さん(仮名)の
戦いの幕が切って落とされました。
(下)へ続く。




以上、ホラ八割程度で。
口は災いの元って言うけど、あれはホントだよ★
みんな、気をつけてね。
そういうわたしは墓前にはクチナシの花を供えます、と
執事にすでに言われているよ・テヘペロ☆
お気に召したら、下記をクリック。

にほんブログ村 その他日記ブログ たわごとへ
にほんブログ村

« 2012年9月 | トップページ | 2012年11月 »