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2012年2月 6日 (月)

レベル3のフード・アサシン、隠し味を学ぶ。

前回までのあらすじ:
今年のバレンタインには手作りチョコを贈りたいA子ちゃん。
しかし、A子ちゃんは作る食品が兵器になるという
レベル3のフード・アサシンだった……!
(レベル9で上級職のフード・ジェノサイダーになれます。豆知識)
A子ちゃんは母親や友人にさじを投げられて、
父親の友人であるわたしのところで毎週末、製菓を学ぶことに。
A子ちゃんのチョコを、実際に試食してみたわたしは悶絶。
チョコなのに、チョコなのに、歯が折れんばかりに硬い。
そしてカラい!
なぜこんなことになるのか。
彼女とわたしの戦いが始まった。

「とりあえず、先週までのことをまとめておこうか」
わたしはメモを取るA子ちゃんに伝えます。
「1:お菓子を作るときは(てゆーか可食物を作るときは)
 必ずレシピを見て計量しよう。男爵とのお約束だよ!」
「はい」
「2:チョコレートは直火で煮てはいけません。
 湯煎か、温めた生クリームで溶かします。
 直火で煮たら、えらいことになるよ!
 贈り物で他人を不幸にするのはやめようね」
「はい」
「それでは、今週の課題だけど……」
わたしはガナッシュの状態まで作りこんだチョコを
彼女に見せます。
「ええと、自分なりの今までの作り方で、
ここまでできていたの?」
「はい、できてました」
「いや、できてないし! たぶんおそらく確実に間違ってるし!」
わたしの渾身のツッコミに彼女は涙ぐみます。
そうです、彼女はまだ十三歳なんです。
「あ、ごめん、いまのはわたしが悪かった。
わたしの言い方が悪かった。
ごめんね」
オトナげなかったか。

「うん、先週までみたいにまずA子ちゃんのやり方を
訊こうか。この状態からどう成型してトリュフにしたの?」
「これを型に流し込んで、それで」
「おかしいな、流れは間違ってないな。じゃあ、やってみようか」
「はい」
A子ちゃんはガナッシュが入ったお鍋を左手に
キョロッと視線を動かし、
「いきます」
キッチンのコーナーラックからタバスコを取り出して
右手で振りかぶりました。
「ストーップ!!
やめてええええェエ、それ逝っちゃうから、
味覚が死んじゃうからッ。
なんでこのシーンでタバスコが必要なの?!」
「隠し味です。ほら、スイカに塩をかけると甘いみたいな」
「比較にならない! 比較級にならないよ!
英語で習ったでしょ、この世には比較できないものもあるの」
「でも、こうしたらきっとおいしく」
「ならない! 絶対にならない。
なんで君のチョコがカラかったのか、判明した!
隠れてないから。
それ隠し味じゃないから!」
「え、そうですか」
「わかった、俺、わかったよ、A子ちゃん!」
わたしはバンバンと作業台を叩きました。
「君、味見を一切していないね?!」

A子ちゃんはびっくりして、わたしを見つめ返しました。
「味見、ですか」
「そうだよ、他人に食べさせる前にまず自分で食べてみようよ。
食べたことあるの?」
「……いいえ。友達とか、お母さんには食べてもらいましたけど」
「あのねえ、常にしろとは言わないけど、
初めてなにかを調理するときは、
まずはレシピ、それから計量、最後に味見が必要なんです。
君のチョコは滅茶苦茶硬くて、辛かった。
あれは、正直、チョコと聞いていなければ、チョコだと思わない。
君、食べてないでしょ」
「だって、チョコはあげるものだから」
「うん」
一生懸命に言うA子ちゃんの言葉に、
わたしは耳を傾けます。
ここで「アホか、味見しろ!」と言うのは簡単ですが、
彼女に事態を理解してもらうほうが先です。
「わたしが食べるんじゃなくて、友達に。
その分、食べて欲しくて」
「あーあーあ、なるほどね」
わたしは深くうなずきます。

そうなんです、A子ちゃんは、
料理の腕は問題がありますが、
基本的な性格はとても素直で、
かわいい女の子なんです。
ホントに、料理の腕だけが問題なんで。
「でもね、まずは最初は自分でおいしいって思えるものを、
プレゼントであげなきゃダメなんだよ。
君はまだ小さくて、作れる料理も限られている。
その中で、本当に喜んでもらいたかったら、
確実においしいものを作らないといけないんだよ。
だから、隠し味は、君自身が味見して納得したら、
入れなさい。
いまはまだダメです。なぜなら、君が味見をしていないから。
そして、味見したわたしがダメって言うから。
わかったかな」
「はい、わかりました」
「よし」
わたしはA子ちゃんの頭をぽんぽんと叩きました。
「じゃあ、その物騒なタバスコはしまって。
ガナッシュになる前から、一緒にやってみよう」

まだまだハッピーエンドまで先は長そうですけど、
彼女はとても素直なので、きっとうまくなると思います。
たぶんね。
だって、料理の一番の秘訣は、隠し味は、
「おいしいって思ってもらいたい」っていう気持ちだからね。
思いやりというか、気配りというか、真心だからね。
だから、A子ちゃんはきっとフード・アサシンを卒業する、
ハズです。
「ストーップ!!
ちょっ、待って、なんでこのタイミングで練乳を投入なの?!」
「隠し味です。きっとおいしく」
「ならないよ!」
ハズです……。



以上、ホラ八割くらいで。
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コメント

フードアサシンへの道。
続いてますねえ~。
隠れてない隠し味。
爆笑です。

あ!ちなみに私も
味見は一切しません☆

junさん、こんばんは!
もうバレンタインが日付的に迫ってきていて、
わたしは内心、焦っています
A子ちゃんは無事にアサシンを卒業できるだろーか…。
彼女の恋の成就が
わたしの指導の良し悪しにかかってます。
責任重大です(汗)
ぜひまた、結末を見に来てください。
コメントありがとうございました

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