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2011年2月21日 (月)

この本がおもしろい。わたしが勝手に思うに。――優駿

以下、ネタバレを含むので、いやんなひとはバックプリーズ。

今回は = 優駿 で。


宮本輝様の名作、だと思ってる。
読後、しみじみとした余韻の強さがハンパなかった作品。
個人的には多田にシンパシーがあるかな。
宮本輝様は 星々の悲しみ とか 錦秋 とか
川シリーズとか、ほかにも好きな作品はたくさん。
でもやっぱりどれかひとつといわれたら、 優駿 かな。

追憶によるあいまいなストーリー紹介。
北海道の牧場である日、子馬が生まれた。
オラシオン(祈り)と名づけられた子馬は
ジョッキーや馬の所有者や所有者の腹心など
さまざまな人々に波紋を広げながら成長していく。
最後には競馬の最高峰・日本ダービーに出馬し、
そして――って話。

各キャラが一章ずつメインになるような構成です。
だが、その結果、浮き出てくるのは、
中央の、空洞となっているオラシオンの姿。
各キャラが思うオラシオン像が浮き出てくる。
オラシオンは馬だから、特にコメントはありません。
でもそれぞれの人たちの思い入れによって、
オラシオンの姿が鮮明に浮き出てくる。
オラシオンも主人公の一人、
いや、オラシオンこそが主人公=優駿なのです。
それが強くわかる物語。
無言の主人公という斬新な構成が
抜群のストーリーテリングによって描き出される
本当に名作。

特に、最後の部分がもう、秀逸。
ダービーでオラシオンの出走結果に
問題が出るが、判定で一着となる。
そのとき、キャラクターのひとり 多田は
本当はみんな負けたと思う。
オラシオン本人すら、負けたと思う。
清らかな志を曲げず、勝ったのはただひとり、
オラシオンの生産者の青年だけ。
多田はそう思い、もう一度その青年の顔を見たくて、
競馬場内へ戻ろうとするが、
人波で戻ることはできなかった――。

うおおおおおおっ、今そこだけ読んでも血がたぎる。
じーん、とします。
なんというか、宮本輝様は
「戻ろうとしたけど、戻れない」物語を書かせたら、
超ド級のストーリーテラー様です。
時間経過、人間関係の変化によって、
なにかを得て、そしてなにかを失ってしまう。
失ってしまったものは、取り戻せない。
そういう物語を書かれる作家様だと思います。
すごいよ、本当によくこんな作品を書かれたと思う。
いつ読んでも、いま読んでも、十年後に読んでも、
やっぱり 優駿 の最後には感動すると思う。
心が震えると思う。

優駿 には本当にさまざまなキャラクターが出てきます。
馬の生産者から、ジョッキーから、馬の所有者から、
馬の所有者の腹心、馬の所有者の娘、などなど。
それぞれのキャラクターを結ぶ糸があって、
ある糸は強く結ばれて切れることはないんだけど、
別な糸はぷっつり作中の展開で切れてしまう。
切れてしまうほうがわたしは気になりますね。
具体的には、馬の所有者と、馬の所有者の腹心の関係。
この二人は本当に互いを信頼しあっていたはずが、
ほんのちょっとしたことから、腹心は所有者を裏切ってしまう。
この腹心が「多田」という人物なんですが、
こいつがオラシオンの名付け親。
そう思うと感慨深い。
人を裏切ってしまうような男が「祈り」という名前を
子馬につけたのです。
彼はなにを祈りたかったのでしょう。
子馬になにを重ねたのでしょう。
このあたりはもう、原作を確認しろ! って感じ。
このブログ読んでいるとわかると思いますが、
わたしはこういう、眼鏡が似合いそうな、
怜悧なタイプが大好きなので、
死神・多田がお気に入りですね。

ちなみに、死神というのは、競馬関連では
絶対に当たらない予想をする人のことです。
わたしの友人にもひとりいました。
一着・三着とかを当てるんですよ。よく。
で、ワイド馬券が出てきたときからは、
一着・五着とかを当てるようになる。
とにかく、博才がない。ギャンブルにむいてないタイプ。
これが死神です。死神と同じ予想になったら、
そのレースは買わないほうがいい。
それくらい、死神のパワーってすごいよ。
わたし自身は博才あるので、数年やりましたが、
競馬はとんとん・ちょっと黒字で終わりましたね。
赤字にはならなかった。
あまり負けません。ちなみに分析とかはあまりしない。
名前が気になったからとか、
馬が好きだからとか、そういう理由で馬券を買って勝つ。
でもいまはもう、ギャンブルは一切やりません。
どういうものだかわかったので、もういい。
もっと違うことがやりたいので、そっちをやってます。
たとえば、ブログとか、読書とか。
こっちのほうがスリリングで、おもしろい。
あ、でも、 優駿 は競馬をやったことがなくても、
じゅうぶん楽しめると思います。
ノー問題です。とてもおもしろい物語だから、大丈夫。

正直、わたしは「文学」ってのはさっぱりわかりません。
お勧め文学って言われて読んで、
「よくわからん??」となること多し。
でも、おもしろい「物語」ならわかります。
優駿 は抜群におもしろい。
とびきりの物語です。
やはり宮本様は素晴らしいストーリーテラー。
祭壇を築いて拝む必要がある。
祀る必要がある。
祀ります。いつものように黒呪文唱えながら祀ります。
宮本様がいついつまでもお元気で、
たくさんの物語を書いてくださいますように。
それ以外の祈りはないです。
このあたり、わたしは多田よりだいぶシンプルだな。
ファンなんてものは、単純ですね。

では、今日もこんな感じで、
ダレっとした感じで、終わり。
今日はホラ二割くらいで。
かなり語りましたが、ホラは少ないな。

死神はねー、本当にいるよ。
なぜに、と思うほど、予想が当たらない人っているんです。
もし「あれ、それってオレのこと?」と思ったら、
ギャンブルは即やめなさい。破滅します。
あと基本、「絶対取り返す!」と熱くなってしまう人は
ギャンブルむいてません。なぜなら取り返せないからです。
ギャンブルは胴元が儲かるようにできている。
ごくたまにものすごく勝てても、
最終的には胴元が勝つようにできている。当たり前。
だから、ギャンブルは、楽しみ程度で抑えたほうがいい。
ムキになってはいけません。
男爵とのお約束だよ!

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コメント

いい紹介文ですね。

10年ほど前に読んだ優駿のストーリーを思い出したくて、
Googleで調べてたどり着いたんですが、
いやぁ、感動。
そうか、ラストはそんなんだった。そんなんだった。
多田は戻れなかった。

ちょっと、もう一回、小説を読みなおそうと思いました。
ありがとうございました。

通りすがりさん、こんばんは!
そうなんすよ、優駿はラストがもう、感動モノです。
多田は戻れない。戻れないんですよ……。
でもそれが、正しいのかもしれないと思います。
人は自分で生の選択をする生き物だから、
選択の結果、失いがたいなにかを失うこともある。
けどそれは、本人の選択なのです。
いやもう、わたしは優駿の話になると、
多田を「本当に生きてる人」みたいに語りますが、
ちょっと活字中毒が過ぎますね。ちょっと気持ち悪い。
でも読んでぇえ! 絶対もう一回読んでぇええ! この感動を共にぃぃぃ!
コメント、ありがとうございました。

大変失礼いたしました、
貴重なコメントをくださったのは、
「通りすがり様」ではなく、「通りがかり様」でした。
謝罪いたします。気づくのが遅くて、申し訳ありません。
これもこっそり修正すればよいのかもしれませんが、
そういうのはわたしのスタンスではないので、
謝罪コメントを記載させていただきます。
以後 注意いたしますので、ご容赦いただければ幸いです。

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