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2011年1月12日 (水)

この本がおもしろい。わたしが勝手に思うに。――ウォッチャーズ

以下、ネタバレを含むので、いやんなひとはバックプリーズ。

今回は = ウォッチャーズ で。


え、知らない? ホントに知らないの?
このミステリーがすごい! 4位、週刊文春6位 よ?
――1993年の、だけどね。
知ってるほうがコアだよな。
普通は知らないか、忘れてる。

以下、役に立たないストーリー紹介。
「このミステリー」に入ってるけど、
内容はどっちかって言うと、
ミステリーよりサスペンス。
で、少し切ない。
いや、ハッピーエンドなんだが、
悪役に回された存在が、痛ましくてね。

この物語、主人公は犬。
違った、犬を拾った男。でもたぶん犬も主人公。
この犬・アインシュタインは特別な犬で、
アメリカの国家機密的な実験の成果で、
人間並みの知能を持ってる。
で、自分を創った組織から逃げ出してきて、
男にめぐり合い、ふたりは生きていく。
ただ、問題があった。
組織が創った生き物は、犬だけじゃなかった。
名前すら与えられなかった、もうひとつの非験体、
<アウトサイダー>も、組織を逃げ出し、
犬を追っていた。
人間たちに愛される犬とは対照的に、
<アウトサイダー>は異形の怪物で、
組織内でも大切にされなかった。
だから、<アウトサイダー>は犬を憎み、
犬を殺そうとする。
犬は<アウトサイダー>の気配がわかるので、
その日が近づいてくることを察知する。
男は犬を守るため、立ち上がり、そして――って話。

判官びいきの日本人だから思うのかもしれないが、
<アウトサイダー>が痛ましい。
犬が家の居間で愛される存在なら、
<アウトサイダー>は地下室で殴られる存在。
この世に一匹しかいない変異種で、
憎み、憎まれ、憎悪と破壊衝動しか知らない。
でも、<アウトサイダー>自身は、
そうなりたくてなったわけじゃない。
<アウトサイダー>の最後の台詞が本当にもう、
痛ましい。
ネタバレすると、<アウトサイダー>は言うのです。
「殺してくれ」(文春文庫・「ウォッチャーズ」より)。
誰にも言葉を教えてもらえなかった、
誰にも言葉をかけてもらえなかった存在が、
独力で話せるように努力し、思考し、
最後にたどりついた言葉が、「殺してくれ」。
こんな痛ましい結果があるのか。
物語はハッピーエンドだと思うが、
<アウトサイダー>の救われなさっぷりが痛ましい。

いや、それでも、これでいいのかもしれない。
<アウトサイダー>は生きていることが
苦痛だったのだから。
好きで生まれたわけでもなく、
好きで活かされたわけでもなく、
不条理に世界の残酷さばかりを見せつけられ、
将来に何の望みもないのなら、
生きていることに、意味を見出せないかもしれない。
でも、さびしいですよ。
<アウトサイダー>の孤独が、
ひどくさびしく、つらいです。
なぜなら、<アウトサイダー>の孤独は、
人類の孤独でもあるからです。
<アウトサイダー>を創った人類が背負っている、
暗黒面がさびしく、切ないです。
この世には、きっと<アウトサイダー>のような思いを
している人がいる。
わたし自身が常にマイノリティであり、
多数派だったことがない。
だから、<アウトサイダー>の孤独の欠片が
胸にしみるのです。
きっと、<アウトサイダー>は、今もいる。
そんな気がするのだ。

タイトルの「ウォッチャーズ」は
「見張るものたち、見守るものたち」という意味だそうだ。
(前出・訳者あとがきより)
誰が誰を見張り、誰が誰を見守るのか、
実際に、この本で確かめられるといいだろう。
犬←→<アウトサイダー>以外にも、
意外な殺人者や追跡者も絡んでくるので、
ページから目を離せない展開になる。
値段の分だけ、価値はあると思うよ!
オチも気がきいていると思います。

じゃあ、本日はこれにて。
ホラは四割ってとこ。
いや、わたしはそんなにイイヒトじゃないんでね。
だいぶ脚色が入ってますわ。
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